国内現役最年長記録を更新する44歳、WBOアジアパシフィック・ミドル級王者野中悠樹(渥美)の3度目防衛戦が、24日に大阪・堺市産業振興センターで行われる。相手は18歳下の26歳、日本ウエルター級7位の能嶋宏弥(薬師寺)。ベルトを失えば現役も失う野中は「相手は死に物狂いでくると思うが、自分も同じ」。その思いに迫った。

19年2月、国内最年長記録の41歳で東洋太平洋、WBOアジアパシフィック王座を獲得した野中悠樹
19年2月、国内最年長記録の41歳で東洋太平洋、WBOアジアパシフィック王座を獲得した野中悠樹

試合2週間前にジムを訪れると、野中は大学生3人を相手に10ラウンドのスパーリングをこなしていた。汗だくになり、息も切れる。「さすがに体力的には厳しくなりましたよね。疲れもとれにくくなった」。それでも現役にこだわる理由を「とにかく世界に挑戦だけはしたい。トップレベルの世界を肌で感じたいんです」と熱をこめた。

かつてはサッカー少年だった。兵庫・尼崎市の小田南中で、2学年上に38歳で亡くなった元日本代表MF奥大介さんがいた。一応、FWでプレーしたが、有望だった兄には及ばず、サッカーは断念。手に職をつけようと浪速工高(現・星翔高)に進学、ギターを手にする高校生活だった。

転機は19歳。バイク事故を起こした。「別にやんちゃとかないですよ」と言うが、時速160キロで吹っ飛び、左鎖骨を骨折した。幸い命に別条はなかったが約2週間、自宅で安静療養となった。その間に考えた。「健康のありがたみを痛感した。ダラダラ過ごしていてはダメだと」。健康のためにたどり着いたのがボクシング。「一からやってみよう」と地元の尼崎ジムに入門。プロデビューは21歳と遅咲きだった。

ここまで4ジムを渡り歩き、その間にピンチは何度もあった。14年には左アキレス腱(けん)断裂に、左拳を骨折。それでも気持ちは折れなかった。「やめなあかんでやめたくない。世界戦をしたいという思いだけでした」と振り返る。

ただ、世界のミドル級の壁は分厚い。巨額なファイトマネーも動く。現在、WBO世界同級15位。ランキングを上げるため、今回の試合後は海外の強豪ランカーとの試合を模索する。そのための資金をクラウドファンディングで目標額300万円で募った。

ただ、負ければすべてのプランが崩れ落ちる。「もう少しで世界に手が届く。燃え尽きるまでやりたい」という生きざまを24日の一戦にぶつける。【実藤健一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

日本スーパーウエルター級タイトルマッチ10回戦 判定勝利した野中悠樹(2016年7月20日)
日本スーパーウエルター級タイトルマッチ10回戦 判定勝利した野中悠樹(2016年7月20日)