日刊スポーツの名物編集委員、寺尾博和が幅広く語るコラム「寺尾で候」を随時お届けします。

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今年の野球界は「独立リーグ」がスポットを浴びる。「ハヤテ223(ふじさん」「オイシックス新潟アルビレックスBC」がNPBの2軍公式戦に新規参入。これが他チームを刺激しているようだ。

東大阪市を本拠にする「大阪ゼロロクブルズ」もその1つ。GMは巨人ドラフト1位・谷口功一、監督はヤクルト最多勝男・藤井秀悟、ヘッドコーチに阪神捕手だった浅井良、バッテリーコーチは元楽天・小山桂司の豪華版だ。

ブルズは初の試みとして計30選手のうち、7人をロッテの石垣島キャンプに「アルバイト」として派遣した。主力選手が打撃マシンのボール入れ、打撃捕手、球拾いなど“裏方”として出稼ぎに出た。ロッテの練習後には室内練習場を借りて練習をした。

ご飯付きで、アルバイト代をもらい、間近でNPBの技術を参考にしながら、自分たちのレベルアップにもつなげている。ただでさえ独立リーグの球団経営は苦しい。NPBと交流しながら「実力」「収入」の一挙両得を狙った戦略だった。

社会人教育でも厳しいことで知られるブルズは「さわかみ関西独立リーグ」に加盟している。今年から元オリックス投手の海田智行が監督に就いた「姫路イーグレッダーズ」が加わった6球団で、各球団50試合を戦うことになっている。

現在は日本独立リーグ野球機構(IPBL=四国アイランドリーグplus、ルートインBCリーグ、九州アジアリーグ、北海道フロンティアリーグ、日本海リーグ)には所属していない。しかし、今後は「さわかみ関西独立リーグ」もIPBL入りする可能性を模索している。

ブルズ球団代表の孫入優希は「今までは利益率などで厳しい球団もありましたが、各球団の努力によって経営も安定してきています。IPBLに入って、独立リーグが一体化することは意味があると思っています」と将来像を描いた。

GMの谷口も「野球界はピラミッド型になって運営すべきです。例えば九州の独立リーグに所属する選手はソフトバンク、関西独立リーグの選手は阪神、オリックスの育成選手で上がれるようなシステムを構築するのが望ましい」と提唱した。

各カテゴリーで日本代表チームを編成するなど“型”のようなものはできつつあるが、プロ・アマが“ピラミッド”になるのは至難といえる。なかなか改革を断行するリーダーも見当たらない。

独立リーグの立ち位置とあるべき姿は今後の課題だが、球界の裾野が広がっての均衡拡大は望むところだ。その存在意義を問いながら、これからの展開に注目したい。(敬称略)