巨人が、サヨナラ勝ちで再び単独3位に浮上した。またも長野久義外野手(33)が決めた。土壇場の9回、1点を追いつき、なお1死満塁。フルカウントから広島の守護神中崎の外角スライダーを捉えた。「併殺は最悪。犠飛でもいいと、食らいついていった」。低く鋭い打球で中前へ。本拠地最終戦のフィナーレを飾った。

オフの自主トレは単身で「地球でやりますよ」と、雲隠れした。周囲の関係者の話を総合すると、米西海岸近郊を拠点にトレーニングを積んだ。ホットヨガで柔軟性を高め、プロ入り後初めて本格的なウエートトレーニングも導入した。

現地で強烈なオーラを感じた。視線の先には米人気歌手ライオネル・リッチーがいた。「僕の存在なんか小さなもの。世界にも日本にももっとすごい人たちがたくさんいる」。スーパースターへの憧れを持ち続ける少年の心が優しく強い人格を形成している。マイケル・ジャクソンと共作で作曲した「ウィ・アー・ザ・ワールド」の歌い出しを務めた名歌手との遭遇は必然だったかもしれない。9月28日DeNA戦のサヨナラ弾から中1日で“大トリ”を張った。

引き分け以下で2位の可能性が消滅し、CS争いも苦境に立たされる一戦。サヨナラ打を見届けた高橋監督も「みんなが何とかつないで、最後は長野がきっちり決めてくれたね」とベンチでこん身のガッツポーズをつくった。小さなストライドで一塁へと駆けだした長野が、最後の最後まで、諦めないんだと身をもって示した。【為田聡史】

▼長野が9月28日DeNA戦の本塁打に次いで今季2本目、通算6本目のサヨナラ打。巨人選手が節(火曜~月曜)の間に2本のサヨナラ打は、09年8月4、8日にサヨナラ本塁打を2本放った亀井以来。巨人がシーズン本拠地最終戦でサヨナラ勝ちしたのは、11年長野(横浜戦で代打満塁逆転サヨナラ本塁打)12年矢野(DeNA戦で代打サヨナラ本塁打)13年村田(ヤクルト戦で逆転サヨナラ安打)に次ぎ、最近10年で4度目(長野は2度目)。