ソフトバンク工藤公康監督(52)がついに首位に立った。昨季日本一チームを引き継いだ就任1年目。前回対戦で無得点に抑えられた西武の右腕郭俊麟(23)に対しスタメン起用した右打者川島慶三(31)が移籍後初の1号決勝ソロを放ち白星を挙げた。39試合目で今季最多の貯金6とし、ゲーム差なしながら西武、日本ハムを上回った。

 工藤ホークス初の首位は伏兵の1発がもたらした。両軍無得点の5回裏1死。8番川島が西武郭俊麟のチェンジアップに食らいついた。ふわりと上がった打球は、左翼のテラス席に落ちた。ヤクルト時代の13年以来となる先制弾。「外野の間に、強い当たりを打とうと。本塁打は出来すぎです」。重苦しい雰囲気が一変し、首位の道が開けた。

 昨年の日本一チームが39試合目に「定位置」についた。新人監督とは思えない操縦法が光る。工藤監督は「横一線の競争」という言葉を簡単には使わない。プロの世界の現実を痛いほど知っているからだ。「昔の西武は投手に11人枠があった。でもキャンプではっきりと言われる。“空いているのは2枠しかないぞ”って」。実績や経験がモノを言い、育成の理念だけで若手を使うほど甘くはない。開幕ローテーションでも、順当に調整していれば松坂や新戦力のバンデンハークを組み込む考えだった。

 しかし故障で離脱。そうなれば話は変わり、そこから先は競争だ。指揮官は他の選手を臆することなく抜てきする。

 レギュラー本多の負傷で発生した二塁サバイバル。この日は右打者に弱い郭俊麟に対し、川島をスタメンで起用。この指名に、競争心をたぎらせていた。「チャンスはピンチ。いつファームに行けと言われるか、分からない。必死にやっている」。試合前には誕生日の松田に「マッチ、今日はお前がヒーローじゃない。おれだ」と言った。この日は母多恵子さんの60歳の誕生日でもあった。

 西武3連戦はリリーフ陣の力投→柳田6打点→伏兵の1発。ベンチの力を結集し、2勝1分けで勝ち越した。川島の活躍に「大当たり~」とおどけた指揮官だが、順位の話題には「一番上にいる実感はない。周りに喜んでもらうのはありがたいが、やる方は1つ1つの積み重ねだ」と素っ気ない。優勝請負人と呼ばれ、ペナントレースの厳しさを熟知しているからこその言葉だった。【田口真一郎】

 ▼昨年日本一のソフトバンクが今季初めて首位に立ち、パ・リーグは上位3球団がゲーム差なし。5月以降に上位3球団がゲーム差0は、10年8月26日のパ・リーグ以来、5年ぶりだ。2リーグ制後、前年優勝球団の監督に就任したのは工藤監督で11人目だが、続けて優勝は86年森監督(西武)だけ。95年東尾監督は52試合目、04年岡田監督(阪神)は43試合目、12年高木監督(中日)は69試合目まで首位に立っていたものの、最終的にはV逸。工藤監督は「連覇」できるか。