脳出血の意外なリスク(抗血栓薬・アミロイド)や治療

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脳出血脳卒中吐き気言葉が出ない頭が痛い脳・神経

脳出血は過去の病気ではない

脳の細い血管が突然破れる脳出血

脳の細い血管が突然破れる脳出血。体の麻痺(まひ)や言葉の障害を引き起こすほか、命を失うこともある病気です。

脳梗塞と脳出血死亡者数の数

脳出血による死亡者は、かつて非常に多かったものの近年大きく減ってきました(人口動態調査による)。脳出血の最大の原因とされる高血圧の治療が進んできた成果だと考えられます。

しかし、脳出血は過去の病気とは言えません。高血圧以外に、これまであまり知られていなかった脳出血のリスク2つが、最近わかってきました。特に70〜80代以上の高齢者は注意が必要です。

脳出血の意外なリスク① 抗血栓薬

脳出血の意外なリスク、抗血栓薬

脳出血の意外なリスク。1つは抗血栓薬、いわゆる「血液をサラサラにする薬」です。

血栓とは血管の中で血液が固まってできるものです。血栓が脳の血管を塞いでしまうと脳梗塞、心臓の血管を塞いでしまうと心筋梗塞が起こります。こうした病気を防ぐため、血液を固まりにくくするのが抗血栓薬です。動脈硬化や不整脈の予防や治療のために多くの高齢者が服用しています。

なぜ抗血栓薬が脳出血のリスクになるのでしょうか。血液がサラサラになって固まりにくいということは、血管が破れたときに出血が止まりにくいということでもあります。この薬をのんでいる人の多くは高齢者で、動脈硬化が進み、血管が破れやすくなっています。抗血栓薬をのんでいる人の脳の血管が少しでも破れれば、大きな出血につながってしまうのです。

では、抗血栓薬を服用している人はどうしたらいいのでしょう。まず自分がのんでいる薬に脳出血のリスクがあることを知っておいてください。そして脳出血を防ぐためには薬をどうしたらいいのか、医師に相談してください。具体的には、その薬が本当に必要か・それだけの量が必要かを検討する、脳出血のリスクがより少ない薬に変えるなどの対応が考えられます。

脳出血の意外なリスク② 脳血管のアミロイド

脳出血の意外なリスク、脳血管のアミロイド

脳出血の意外なリスク。もう1つは、高齢になると脳の血管の壁にアミロイドというたんぱく質がたまりやすくなることです。

アミロイドは認知症の1つアルツハイマー病の原因とも言われますが、それだけでなく、脳の血管ももろくしてしまいます。そのために脳出血が繰り返し起こることがあるのです。しかもこの脳出血は高血圧がなくても起こります。

アミロイドがたまる原因ははっきりせず、防ぐ方法もまだわかっていません。したがって、高齢の方は高血圧の対策を心がけるとともに、アミロイドによる脳出血がありえることも知っておいてください。

脳出血の治療

新薬の開発

脳出血が起こると、血圧が非常に高くなり、いったん出血が止まっても再出血して重篤な状態になるおそれがあります。そのため、脳出血の治療では血圧をしっかり下げて再出血を防ぐことが必要です。血圧を下げるためには、さまざまな薬が使われますが、現在、全く新しい薬の開発も進んでいます。血液の凝固反応を司る物質の働きで、出血そのものを止める薬です。臨床試験がすでにスタートしています。

血腫を取り除く

脳出血のCT画像

脳出血では、出血した血液が血腫と呼ばれるかたまりを作ります。血腫は自然に吸収されて消えることが多いのですが、血腫が大きいと命にかかわることがあるため、除去する治療が必要になります。

血腫を除去する方法

血腫を除去する方法の1つは「開頭手術」です。頭蓋骨の一部を取り外し、血腫を直接取り除きます。ただし脳には重要な神経がいくつも通っているため、脳出血の部位によっては手術が難しいこともあります。

定位的血腫除去術

開頭手術をせず、体への負担がより軽い方法で血腫を取り除く方法もあります。その1つが「定位的血腫除去術」です。頭部を器具で固定し、頭蓋骨に小さな穴をあけ、血腫を吸引します。

神経内視鏡手術

同じく血腫を吸引する方法に「神経内視鏡手術」があります。この場合、小さな穴から吸引管とともに内視鏡を挿入し、患部を直接観察しながら血腫を吸引します。開頭手術を行わずに血腫を除去する場合には、現在この方法が主流になっています。

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2022年8月 号に掲載されています。

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  • きょうの健康 放送
    脳血管からの出血を防げ!「高齢者にリスク 脳出血」