最新記事

インド

インド経済成長率7%は「水増し」との衝撃暴露

2019年7月26日(金)19時15分
K.S.ベンカタチャラム

モディ政権は年率7%の高度成長を誇示しているが、実態は不透明だ DANISH SIDDIQUIーREUTERS

<政府の元経済顧問が独自の調査報告書を発表──現実のインド経済はどん底の状態にある>

14年には米誌フォーブスが、そして15年にはIMFが、経済成長率でインドは中国を上回るとの予測を出した。当時、インドのGDPの伸びは年率7%を超えていたからだ。

しかし16年の高額紙幣廃止と翌年の拙速な物品・サービス税(GST)導入がインド経済にブレーキをかけた。国内の中小企業は今も、このダブルパンチの後遺症に苦しんでいる。

今のインド経済は苦しい。失業率は過去40年で最悪の6.1%に達し、農業部門も危機的な状況にある。それでも政府は今も年率7%の成長を維持していると主張する。だが、これには大きな疑問符が付く。

かつてインド政府の首席経済顧問を務めた米ハーバード大学のアルビンド・スブラマニアン客員講師の報告によれば、11年度から16年度までのGDP成長率(政府発表の推定値)は2.5ポイントほど「水増し」されていた疑いがある。

「インドGDPの誤推定/その可能性、規模、仕組みと影響」と題する報告書は、政府のGDP算出法に問題があるとし、11~16年度の実際のGDP成長率は4.5%程度で、7%には遠く及ばないと論じている。

インド中央統計局の発表する公式統計をめぐっては、既に各方面から疑問視する声が上がっていた。歴代の政権が自分に有利なように数字を操作した疑いがあるからだ。そしてついに、かつて政府の要職にあった人物がCSOの独立性に疑問を投げ掛けたわけだ。

もちろん、政府は直ちに反論した。モディ首相直属の経済諮問委員会は6月19日に、11年度以降のGDP成長率が誇張されていたというスブラマニアンの主張を否定し、彼の分析は都合のいいデータだけを取り上げていると批判した。

同委員会の反論書によれば、スブラマニアンは独自のGDP算出に当たり、農業部門の成長率を考慮していないし、インド経済の45~50%を占める非公式部門(課税を免れている闇経済)も計算に入れていない。こうした不明朗な部分まで推計に含めなければインド経済の実態は把握できないと、同委員会は主張している。

GDP5兆ドルの目標は

反論書はさらに、スブラマニアンが公的機関ではなく民間団体(インド経済モニタリングセンター)のデータに依存していると批判。インド政府のGDP算出法が完璧でないことは認めつつも、スブラマニアンの「単純な計量経済学」に依拠した推定は不適切だと反論した。

同委員会は、スブラマニアンの出した結論は「投資家に否定的なメッセージを送る」ものだとも警告した。ただしスブラマニアン自身は報告書に、今回の数値は「最終的な結論」ではないと明記している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

パリのソルボンヌ大学でガザ抗議活動、警察が排除 キ

ビジネス

日銀が利上げなら「かなり深刻」な景気後退=元IMF

ビジネス

独CPI、4月は2.4%上昇に加速 コア・サービス

ワールド

米英外相、ハマスにガザ停戦案合意呼びかけ 「正しい
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    ナワリヌイ暗殺は「プーチンの命令ではなかった」米…

  • 10

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    「誰かが嘘をついている」――米メディアは大谷翔平の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中