試練を越えるごとにいい変化が

 ここまで不幸に見舞われても、「なぜ、自分ばかりがこんな目に」と悲嘆にくれたことはないと、仁支川はきっぱり。

「台風で家が流されたことだって自然災害なのだから、誰がいつ遭遇してもおかしくないこと。事故も病気も修行の1つだと思えばいいんです。人間“オギャー”と生まれてから死ぬまでが修行。命が助かったんだからいいんです。この先も何が起こるかわからないから、怖がりすぎても無意味な時間を過ごすだけです。

 それに悪いことばかりじゃないんですよ。19才のときに出なくなった声も、台風で家を流された後には不思議と出るようになりました。しかも1オクターブしか出なかった音域が、2オクターブまで出て、それまで歌うことができなかった美空ひばりさんの曲まですんなりと歌えるようになったんです。なぜそうなったかわかりませんが、修行を経た功徳でしょうか(笑い)」

 いまはマンションでひとり暮らしを謳歌している。

「いつまで生きるかはわかりませんが、生きている限りは元気でいたいじゃないですか。足腰を悪くして、入院しながら生きるのは嫌ですからね。目標は草笛光子さん。草笛さんみたいにシャキッと生きたいんです。だからこそ、食生活にも気を配ります、と言っても野菜を多めの食事を食べ、なるべく歩くぐらいですけどね。1日最低でも5000歩、多いときには1万3000歩は歩くようにしています」

 そして、あくまで無理はしないと決めている。

「がまんや無理をすると体にひずみがきますから。私はいま、バラエティー番組でも好き放題言わせてもらっていますが、嫌われまいと言いたいことを言わないのはよくないと思っています。万人なんかに好かれなくていいんです。100人いたら2〜3人、自分のことを好きでいてくれる人がいたらいい。それにどんなことがあっても、またいいことが必ずあると信じています」

 どんなことがあっても不平不満を言わずに前を向く。その姿勢こそが生きるために必要なことかもしれない。

※女性セブン2022年2月3日号

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