国内

小林よしのり氏 SEALDsは不安の根源を全部戦争に象徴させた

 国会前で安保法制に反対の声をあげる学生を中心とした団体「SEALDs(シールズ)」のデモ。果たして彼らの行動は本当に政治を変えられるのか。同じく安保法案反対の立場ながら、彼らの活動に懐疑的な小林よしのり氏と、彼らの呼びかけでデモに参加した茂木健一郎氏が初対談。SEALDs現象の意義について話し合った。

小林:わしは安保法案賛成派の武藤(貴也・衆院議員)とかいうヤツがデモを「戦争に行きたくないのは自分中心で極端に利己的だ」とか批判するのはホントにむかつくんだけど、ただデモの演説って結局、「戦争反対」だとか「九条護持」だとか全部一緒の紋切り型になるでしょう。そうして集団性に埋没して若者たちの個が失われてしまうのが、一番つまらない。

茂木:僕も、代表者が音頭取ってみんなが同じことをいう日本的スタイルにはやっぱり違和感がある。とにかく表現こそがすべてだと思っているので、歌を歌ったんです。忌野清志郎(ザ・タイマーズ)の「FM東京」という歌をもじって、「安保法案、腐った法律 安保法案、ダメな法案 何でもかんでも強行採決さー」と。

小林:あれはよかったね、無茶苦茶で(笑い)。むかしは「朝生」に出るような知識人でも、大島渚とか野坂昭如みたいに、パーティーでマイク使ってぶん殴り合うような無茶苦茶な奴らばっかりだったじゃない。いまはみんなおとなしく、こぢんまりまとまった人間ばかりで、活力がないよね。

茂木:それはSEALDsの限界でもあって、良きにつけ悪しきにつけ、今のごく普通の学生たちだから。

小林:SEALDsの女の子が、「家に帰ったら、お母さんがご飯をつくって待っててくれる、それが平和だから、その平和を壊すのは嫌だ」とか演説して話題になった。

 けど、それなら安保法案の問題よりも、むしろ格差社会とか、派遣法の改正とか、そっちに抗議したほうがいいんじゃないのって思う。要するに、彼らの訴えには、生活や将来に対する不安感が後ろにありすぎるわけ。その自分たちの不安の根源は何なのか、それを解消するにはどのような政策を取ればいいのかということを個々に考えるべきなのに、それを全部「戦争」に象徴させてしまっているわけよ。

茂木:あるいは、安倍さんにね。安倍さん一人の話じゃないんですよね。安保法案にしても、ホントの“ラスボス”は安倍さんじゃなくてアメリカじゃないですか。結局、九条は日米安保とセットで、実は日本における護憲派のリベラルは日米同盟の補完装置でしかなかったわけですよね。

小林:そう、九条護持といった瞬間、日米安全保障条約賛成といったのと一緒になってしまうから、どうしても矛盾が生じてしまう。SEALDsの子たちには、そういうことをもっと勉強してほしいんだよ。

※週刊ポスト2015年9月25日・10月2日号

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