「時間関係なく長蛇の車列ができて、長いときは15分ほど待たされる。道も細く、自転車や歩行者も多く本当に危険」…京都府内にある『踏切』ついて、MBSに視聴者からこのようなメールが寄せられました。毎日悩まされているというこの“開かずの踏切”の実態を調べるため、取材班は現場に向かいました。

「開かずの踏切」と口をそろえる近隣住民ら

 駅近くの踏切のそばで、大好きな列車を見に来た子どもたち。さまざまな種類の列車が走っていて、鉄道好きの子どもたちにとっては夢のような場所です。

 (電車を見に来た子ども)「(Qあれ何の電車かな?)近鉄8000系」
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 ここは、京都府京田辺市にある近鉄京都線の新田辺駅。近くには同志社大学があり、1日に約2万人が利用する主要な駅の1つです。しかし、この踏切に不満を持つ人が続出しています。

 「開かずの踏切やね」
 「開かずの踏切です」
 「開かずの踏切、なかなか開かないです」

 近くの住民らはみな、“開かずの踏切”だと口をそろろえます。

遮断機が上がっても…すぐに鳴る警報機!危険な場面も

 では実際どうなのか、取材班が調査を開始。ラッシュ時には、踏切が開いてわずか3秒後、すぐに警報機が鳴りました。その後も警報音が鳴り続け、踏切が閉まった時間が続きます。
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 遮断機が上がり、記者が渡ってみると、やはりすぐに警報機が鳴り始めました。

 (記者)「ほんの数秒で5本の線路を越えないといけないので、かなり急いで踏切を渡らないといけないです」
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 警報機がすぐに鳴るため、走らないと踏切を渡り切れません。また、別の時間帯には、遮断機が上がりきる前に警報機が鳴り始めました。
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 (記者)「遮断機が一度開いたのに、また警報機が鳴りました。車が我慢しきれずに踏切の中に侵入し、通過していきました」
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 すぐに警報機が鳴るため、歩行者らが危険な場面も。

 (記者)「踏切が閉まってしまいます、危ないです!危ないです!」
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 ここは小学校の通学路にもなっていて、何とか踏切を渡り切る子どもたちも少なくありません。
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 杖を突いた女性に話を聞くと、ひやりとしたことがあったといいます。

 (女性)「(Q閉じ込められたことは?)ありますね。踏切を渡った時に閉じ込められるから。(遮断機が閉まって)手を地面について渡る時あります。急げないからね、足が不自由だからね」

近鉄の調査では…踏切が閉まっている時間は『1時間に最長で計38分』

 歩行者と自転車、合わせて1日に3600人ほどが利用するというこの踏切。一方で列車の交通量は上下合わせて1日558本あり、2019年度の近鉄の調査によりますと、1時間のうち踏切が閉まっていた時間は、なんと最長で計38分もありました。

 (通行人)「列車5本くらい(通過する間)閉まったままで、急いでいる時には『こんなつもりではなかったのに』と」
 (通行人)「踏切を渡った先が職場なんですけど、まもなく職場に着くのに『踏切が開かないので遅れる』という電話を入れたことは過去にあります」
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 困っているのは歩行者だけではありません。ひとたび踏切が閉まると、踏切を待つ車であたりは大渋滞となるのです。この状況にタクシードライバーたちは…

 「(Qかなり渋滞を感じる?)感じる。朝なんて特に。踏切でメーター上がってしまう。走らんうちに上がってしまう」
 「かわいそうやもんね。お客さんに申し訳ない」

 ただ、これだけ踏切が開かないのには、この場所ならではの特殊な事情がありました。

 多くの列車の終着駅となっている新田辺駅。京都方面から到着した列車はホームで乗客を降ろした後、踏切を通って回送列車用の線路へ。そして京都行きなどに方向転換をして、再び踏切を通る運用になっているのです。こうした折り返し列車は1日に73本もあるため、踏切が閉まる時間が増える原因となっていました。

う回路で反対側に行く方法は?『車』『徒歩』それぞれの場合

 では、この踏切を通らずに反対側に行く場合はどうなのか。踏切の南側700mほど先にある国道307号。ここを利用すれば線路を越えることができますが、信号もあり、ぐるりと大回りすることとなり、踏切を渡った先に行くのに車で6分以上かかりました。
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 では、歩いて踏切をう回するときはどれくらいの時間がかかるのか、記者が試してみました。
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 まずは駅舎に向かいます。

 (記者)「新田辺駅の前に来ました。高架の駅舎を超えて向こう側に行きたいと思います」
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 駅舎を通って反対側にたどり着きます。そして、踏切の前に到着しました。その結果は…
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 (記者)「踏切をう回するのに4分32秒かかりました」

 う回路はどれも時間がかかってしまうため、踏切を利用する人が多いようです。

市に聞くと「法律の基準では“開かずの踏切”の認定要件を満たしていない」

 多くの人が“開かずの踏切”と話すこの場所について、京田辺市はどう考えているのでしょうか。

 (京田辺市 小西健文交通対策係長)「法律の基準で、遮断時間が1時間のうち40分以上となると、“開かずの踏切”という認定がされますが、38分という遮断時間ですので要件を満たしていないのが現状でございます」

 国は1時間あたり「40分以上」遮断する踏切を“開かずの踏切”としていて、ここは「38分」のため“開かずの踏切”に該当しないと話しました。

 (京田辺市 小西健文交通対策係長)「(Q“開かずの踏切”に近いというのは変わりないのでは?)長いのは長いですが、一定の基準がある以上は…。ただ5年に一度の計測が来年度にありますので、それを見て対策は鉄道事業者と一緒に考えていきたいと思っております」
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 また市は、う回路を案内する看板を設置するなど、今できる対策はしていると話しました。
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 鉄道の専門家は、実質“開かずの踏切”の状態にあり、解消にするためには次のような対策があると提案します。

 (関西大学 安部誠治名誉教授)「最善の手法というのは、踏切をなくす。つまり高架化、あるいは道路の地下化が一番いいやり方なんですけど、なかなかいろんな事情がありすぐにはできない。列車の運行本数を削減すれば、遮断棒がおりている時間は短くなりますので、混雑の解消につながるということですね」

近鉄がダイヤ改正を発表 “ほぼ開かずの踏切”は改善なるか?

 こうした中、近鉄は3月から新たな一手を打ち出すと発表。

 (近鉄)「3月16日に予定しているダイヤ改正で、通過する入換列車の本数について、平日で約4割、土日祝日で約3割削減する計画としており、今後も踏切の状態を注視してまいります」

 近鉄が乗り出すダイヤ改正。この取り組みによって、“ほぼ開かずの踏切”を卒業する日が来るのでしょうか。