政治資金パーティー収入の不記載を告発した上脇博之教授=13日午前、神戸市内

 自民党の派閥による政治資金パーティーを通じた裏金づくり疑惑。現行の政治資金規正法ではチェックできない穴が浮き彫りになりつつある。疑惑の発端となったパーティー収入の不記載を刑事告発した神戸学院大法学部の上脇(かみわき)博之教授(65)は「告発できたのは氷山の一角」と強調。「表に出したくない金の使い方ができてしまう」と制度の根本的な見直しを訴える。

 自民派閥による疑惑を知ったきっかけは、昨秋に「しんぶん赤旗」が報じた不記載だった。規正法は1回につき20万円超のパーティー券を購入した個人、団体を政治資金収支報告書に記載するよう義務付ける。だが、コメントを求められた際、資料を見て「明らかに法律違反だ」と確信したという。

 例えば、清和政策研究会(安倍派)が2018~20年に都内ホテルで開いたパーティー。「○○政治連盟」など各界の政治団体の収支報告書には、それぞれ数十万円の会費を支出した記載があった。ところが、受け取った派閥の報告書には、3年間で計千数百万円の収入記載が見当たらない。

 「これだけ高額の収入を見落とすはずがない。意図的にやっているのではないか」。昨年11月、東京地検に1回目の告発を行い、その後も、21、22年分も含めて収支報告書を照らし合わせる地道な調査を続けた。

 今月中旬までに見つけた不記載は、5派閥で計5880万円分にまで積み上がった。「気が遠くなるというか、心が折れそうになる作業だった」と振り返る。

 同時に規正法の穴が浮かんできた。「全ての政治団体の報告書と照合するのは不可能に近い。そもそも企業や個人は購入を報告する義務がない。告発できたのは氷山の一角だ」という。

 安倍派では所属議員が割り当てられたノルマより多く券を販売した場合、超過分をキックバックしていた疑いが浮上。不記載などの時効がかからない18~22年の5年間の還流分は総額5億円に上る可能性がある。

 上脇教授は「収入の総額自体をごまかせる今の仕組みだと簡単に裏金が生み出せる。20万円以下のパーティー券収入も全て公表を義務付けて透明化を図るか、パーティー自体を禁止にすべきだ」と指摘する。

 不記載を巡っては「派閥の指示だった」との証言も出ており、「事務処理のミスではなく、派閥と所属議員の協力関係があった。還流の仕組みや責任の所在まで切り込んで立件してほしい」と捜査の行方を見守る。(井沢泰斗、篠原拓真)