調査シリーズNo.230
家事使用人の実態把握のためのアンケート調査

2023年9月14日

概要

研究の目的

家事使用人の労働条件等について実態を把握し、必要な取組について検討するため、家政婦取扱事業所(以下、「家政婦(夫)紹介所」という)を通じて、家事使用人に対するアンケート調査を実施した。

本調査は、厚生労働省労働基準局の要請に基づく要請研究である。

研究の方法

家事使用人に対する個人アンケート調査。調査方法は、全国の家政婦(夫)紹介所を経由して、調査対象である家事使用人(家政婦(夫))に調査票を配付し、回収は直接返送としている。厚生労働省「令和2年度職業紹介事業報告」で報告されている全国の家政婦(夫)紹介所の全数にあたる541か所を選定。調査対象は、家政婦(夫)職業紹介所(541か所)に登録し、個人家庭と契約し、個人家庭で家事業務を行ったことがある家事使用人(家政婦(夫))9,220人。調査期間は、2023年1月31日~3月15日。有効回収数:1,997人(有効回収率:21.7%)

主な事実発見

  • 家政婦(夫)の属性として、性別は、女性が98.8%、男性が0.6%となっている。年齢は、「70代」が50.1%と最も高く半数を占め、「60代」が27.4%、「50代」が9.6%、「80代以上」が7.3%、「40代」が3.4%、「30代以下」が1.0%となっている(平均68.9歳)。
  • 現在、登録している職業紹介所の数は、「1か所」が87.6%と9割弱を占め、最も割合が高く、「2か所」が9.3%、「3か所以上」が2.3%となっている。一方、家政婦(夫)として働いている就労先数は、「1件」が47.5%と半数弱を占め最も割合が高く、「2件」が26.7%、「3件以上」が22.0%となっている。
  • 「通勤・泊まり込みの状況」では、「通勤」が83.8%と大半を占め、一方で「泊まり込み」が8.9%となっている。また、「両方(通勤・泊まり込みが同程度の頻度)」も6.0%となっている。「泊まり込み+両方・計」(「泊まり込み」と「両方(通勤・泊まり込みが同程度の頻度)」の合計)の割合は、14.9%となっている。
  • 家政婦(夫)の職業を選んだ理由(複数回答)は、「年齢問わず働けるから」(51.9%)、「収入を得るため」(50.1%)が5割程度と高く、「自分の都合に合わせて好きな時間に働けるから」が39.0%、「人の役に立てるから」が37.8%、「主婦(夫)をしていたなど自分の経験を活かせるから」が36.5%などとなっている。
  • 訪問介護サービス事業者や家事代行サービス業者等に雇用される働き方ではなく、個人家庭と契約する家政婦(夫)として働いている理由(複数回答)は、「勤務時間の長さなどの制限がないから」が33.6%と最も高く、次いで、「知人から紹介されたから」が22.2%、「賃金が高いから」が20.2%などとなっており、「特に理由はない」も18.9%ある(図表1)。

図表1 訪問介護サービス事業者や家事代行サービス業者等に雇用される働き方ではなく、個人家庭と契約する家政婦(夫)として働いている理由(MA、単位=%)

図表1:訪問介護サービス事業者や家事代行サービス業者等に雇用される働き方ではなく、個人家庭と契約する家政婦(夫)として働いている理由(複数回答)は、「勤務時間の長さなどの制限がないから」が33.6%と最も高く、次いで、「知人から紹介されたから」が22.2%、「賃金が高いから」が20.2%、「昔からそうしているから」が12.5%、「その他」が10.2%となっている。また、「特に理由はない」は18.9%、「無回答」は6.4%となっている。

  • 普段行っている業務(複数回答)としては、「掃除関係の業務」が84.6%と最も高く、「食品・料理関係の業務」が66.9%、「衣類・洗濯関係の業務」が65.2%、「高齢者介護・認知症介護」が46.4%、「住生活関係の業務」が41.1%などとなっている。最も従事する時間が長い業務としては、「掃除関係の業務」(38.1%)、「高齢者介護・認知症介護」(24.0%)、「食品・料理関係の業務」(22.1%)が上位となっている。
  • 決められている契約内容(複数回答)としては、「勤務時間」(86.4%)、「業務内容」(81.4%)、「就労場所」(74.3%)が8割前後で上位となっており、次いで、「賃金額等の賃金に関する内容」(68.2%)、「労働契約期間」(56.8%)が6割前後、「求人者の家庭に損害を与えた場合等の補償内容」(29.2%)、「休憩時間」(26.6%)、「休日・休暇」(25.2%)が2割程度などとなっている。
  • 1日当たりの平均勤務時間は、「2時間以上5時間未満」が43.0%と最も割合が高く、「5時間以上10時間未満」が23.0%、「2時間未満」が14.4%となっている。「5時間未満・計」(「2時間未満」「2時間以上5時間未満」の合計)は57.4%であり、6割弱を占めている。比較的長時間にあたる「10時間以上・計」(「10時間以上15時間未満」「15時間以上20時間未満」「20時間以上」の合計)の割合は13.3%である。
  • 1週間の平均勤務時間は、「10時間未満」が35.5%と最も割合が高く、次いで、「10時間以上20時間未満」が26.7%、「20時間以上30時間未満」が12.8%と、比較的短い勤務時間の層が多い。一方で、「40時間以上60時間未満」が6.4%、「60時間以上」が2.9%となっており、長い勤務時間の層もいる。
  • 1か月の平均就労日数は、「10日以上15日未満」が24.8%と最も割合が高く、次いで、「5日未満」(22.4%)、「5日以上10日未満」(21.5%)、「15日以上20日未満」(15.4%)が続く。家政婦(夫)としての1か月当たりの報酬は、「5万円未満」が34.4%と最も割合が高く、次いで、「5万円以上10万円未満」が32.2%、「10万円以上15万円未満」が15.6%、「15万円以上20万円未満」が8.4%、「20万円以上」が6.2%となっている。
  • 業務中に病気やけがなどをした経験がある割合は15.2%となっている。病気やけがなどの内容(複数回答)については、「骨折・ヒビ」(27.1%)、「切傷」(26.4%)、「腰痛」(26.4%)、「打撲」(24.4%)が2割台で上位となっている。
  • 労災保険の特別加入の状況は、「はい(加入している)」が34.3%、「いいえ(加入していない)」が43.1%、「分からない」が13.2%となっている。「いいえ(加入していない)」と回答した者の労災保険に特別加入していない理由(複数回答)は「民間保険に入っているから」が57.0%と最も高く、「制度を知らなかったから」が19.3%、「保険料が高いから」が8.0%などとなっている。
  • 民間保険の加入状況(複数回答)は、「業務中の家庭への対人・対物損害補償(ケア・ワーカー損害責任補償)」が60.1%と最も高く、「業務中の自身のけが等の手術・入院費等の補償(傷害補償制度)」が30.8%、「自身のけが等の医療費の補償(共済(医療費)助成制度)」が25.6%などとなっている一方で、「(選択肢にある5つ全ての)保険に加入していない」は11.7%となっている。
  • 過去5年間で、求人者の家庭に雇われて家政婦(夫)として働く中で生じたトラブルや困ったことについては、「特にない」が66.4%となっている。「何らかのトラブル等があったとする割合」は、20.3%だった。具体的なトラブル等としては、「契約の範囲外の業務を命じられた」(5.8%)、「パワハラを受けた」(5.5%)、「業務で求められる水準が高すぎる」(4.9%)、「家庭からいきなり契約を切られた」(4.5%)、「セクハラを受けた」(3.0%)、「労働環境が悪い(トイレの利用を制限される、夜勤で寝る場所がない等)」(2.7%)などが続く。
  • 個人家庭に雇用される働き方の満足度は、「満足している」が49.2%、「やや満足している」が36.2%、「やや不満」が6.5%、「不満」が2.0%となっている。「満足・計」(「満足している」「やや満足している」の合計)は、85.4%である(図表2)。

図表2 家政婦(夫)に関する職業紹介所の紹介等により個人家庭に雇用される働き方の満足度(SA、単位=%)

図表2:個人家庭に雇用される働き方の満足度は、「満足している」が49.2%、「やや満足している」が36.2%、「やや不満」が6.5%、「不満」が2.0%、「無回答」が6.1%となっている。

政策への貢献

家事使用人の労働条件等について実態を把握し、厚生労働省に基礎的データを提供した。労働条件分科会で活用。

本文

研究の区分

緊急調査

研究期間

令和4~5年度

執筆担当者

奥田 栄二
労働政策研究・研修機構 調査部次長

お問合せ先

内容について
研究調整部 研究調整課 お問合せフォーム新しいウィンドウ

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