大統領罷免に向けた国民審査を実施、投票率は18%弱にとどまる

(メキシコ)

メキシコ発

2022年04月12日

メキシコで、大統領罷免のための国民審査が4月10日に全国で行われた。国家選挙庁(INE)の開票データ(開票率100%)によると、国民審査で投票したのは1,650万2,636人で投票率は17.78%にとどまり、結果に法的拘束力をもたせるための40%に遠く及ばなかった。大統領罷免のための国民審査は、アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領の就任時の100の公約の1つとして2019年12月に憲法改正が実現し、2021年に関連法案を国会に提出、9月7日に上下両院を通過、同年9月14日に連邦罷免法として公布された。罷免審査を行うためには、全国民の3%以上の有権者(同有権者は全国32州のうち17州以上で州の有権者の3%を占めている必要がある)の署名が必要となり、INEは2022年1月半ばにこれを確認し、実施を決定している。投票率が40%を超え、かつ罷免を望む投票が過半数に達した場合のみ、大統領の罷免が実現する。

4月10日に投票した有権者の91.86%がAMLO大統領の2024年9月末までの任期満了を支持し、6.44%が任期途中での罷免、1.70%が無効票だった。投票率が低いこともあり、大統領の任期満了を望んだ有権者の数は1,515万9,323人となり、2018年の選挙でAMLO氏に投票した3,011万3,483人の50.3%に過ぎなかった。大統領は投票率の低さについて、十分な投票所を設置しなかったINEの妨害行為によるもの、とINEを批判したが(大統領府4月11日付早朝記者会見録外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますおよび現地主要各紙)、INEのロレンソ・コルドバ議長は、罷免審査にかかる予算を当初から15億ペソ(約94億5,000万円、1ペソ=約6.3円)以上も削減するかたちで下院が承認した2022年度歳出予算が原因、と反論した(4月11日付主要各紙)。

大統領は歴史的一歩と評価、野党は歳出予算の無駄遣いと酷評

AMLO大統領は4月11日の早朝記者会見において、罷免審査が成功だったと強調した。「長い間、何世紀にもわたり、政治は政治家の問題で、そこに民衆は存在しなかった。今、われわれは代表制民主主義に加え、参加型民主主義という新たな段階に入った」とし、4月10日はその一歩を印した歴史的一日だったと評価した。

他方、野党は、罷免審査が明らかな「失敗」だったとしている。野党第1党の国民行動党(PAN)のマルコ・コルテス党首は4月10日、17億ペソを投じて実施したものの、法的拘束力を持たせる40%の投票率を獲得できなかったことを挙げ、「お金をドブに捨てた」という酷評をSNSで流している。野党第2党の制度的革命党(PRI)のアレハンドロ・モレノ党首もSNSを通じ、「国民の誰もが罷免投票を望んでいない状況で大統領自身のエゴを満たすため、与党主導で不要な経費を支出した」というメッセージを流している。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

ビジネス短信 14133de30dab0efc