地震発生後、市街地に押し寄せる津波=1日午後4時44分、珠洲市上戸町北方

  ●津波に「早く逃げろ」 珠洲漁船転覆、車流され

 「なんだあれっ」。1日の夕方、突き上げる揺れに襲われ、珠洲市役所に向かうと、防波堤を乗り越えた黒い濁流が見る見るうちに目の前に迫ってきた。2日、津波が飲み込んだ現場に恐る恐る足を運ぶと転覆した漁船が浮かび、波に流された車がショッピングセンターに突っ込んでいた。あちらこちらに泥にまみれた家屋が見られ、自然の猛威に息をのんだ。(珠洲支局・谷屋洸陽)

 1日、揺れが少し収まってきたころ、市役所の前で「急げっ、早く逃げろ」と男性の叫び声が聞こえた。海の方向を見ると、あっという間に波が近づいてくる。市職員に「早く早く」と促され、誘導されるまま庁舎に駆け込んだ。波は海岸から100㍍ほど押し寄せた。

 大津波警報が発令され、市役所には避難した市民がたくさんいた。3階の危機管理室では被害状況を把握しようと、泉谷満寿裕市長が陣頭指揮を執っていた。家屋の下敷きになった市民の救助や、避難所の開設、道路の隆起による通行止めなど、新たな情報が入るや職員に指示を飛ばす。

 金沢市に住み、実家の飯田町に帰省していた会社員の小田久志さん(58)は市役所に逃げ込み「避難する途中で津波が見えた。正月休みに実家でゆっくりしていたのにこんなことになるなんて」と肩を落とした。

 2日、津波注意報が解除され、警戒しながら街中を進むと、港近くの家屋が泥水に浸かっていた。

 大間玲子さん(65)=同市飯田町=は恐怖と寒さでなかなか寝付けなったといい、「家の様子を確認したら、泥だらけで車も流された。先のことは考えられない」とため息をついた。

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