【余市】お笑い芸人だった男性が、生まれ故郷の余市町に戻り、イチゴ栽培に励んでいる。元「おにぎり」の片桐健雄さん(45)。1年間の農業研修を経て、3~4月に種や苗を植えたイチゴは青々とした葉を実らせ、秋の収穫を待ち望んでいる。「今が一番充実している」と農作業に精を出している。
小樽工業高(現小樽未来創造高)卒業後、バレーボールVリーグの新日鉄ブレイザーズ(現堺ブレイザーズ)で4年間、選手として活躍した。その後、芸能界デビュー。2006年にお笑いコンビ「ニューロマンス」を結成し、テレビのお笑い番組などに出演し、人気を得た。
17年に出演したテレビ番組で、1カ月の無人島生活を体験。自然を相手に生きる農業に何となく興味を持った。お笑いタレントとしての将来に不安もあり、2年後に妻優美子さん(38)が「北海道で農業をするのもいいね」とつぶやいたのを機に余市へ戻ることを決意した。
町内のイチゴ農家で21年3月から研修。これまで経験したことのないイチゴ栽培を一から学んだ。その間、町内で適当な農地がないか東奔西走した。何とか手に入れた農地は木や石が多く、1年をかけて整地し、今春に種をまくまでにこぎ着けた。今は約3アールの露地に秋に収穫できる四季なりのとちおとめ、よつぼし、ワイルドストロベリーの3種類を育てている。ハウスも自力で建てた。
一時、110キロを超えた体重は87キロに減った。「今は心身ともに健やかで、農作業を楽しんでいる」と日焼けした顔をほころばす片桐さん。コストを抑えるため、できるだけ種から育て、苗を増やしていくやり方で来年以降の作付けに備える。今秋、収穫するイチゴはオンラインで販売するほか、東京でお世話になった人に配ったり、売り込んだりするつもりだ。
「故郷に戻ってきて多くの人に励まされ、人の温かさに触れた。将来はジャムやリキュールなどの加工品もつくり、お世話になった余市の地域振興につなげたい」と目を輝かせた。(伊藤圭三)
関連タグでまとめて読む
関連記事
トップニュース
北大低温科学研究所の木村勇気教授(物理学)らの研究グループは29日、探査機「はやぶさ2」が小惑星りゅう...