M-1グランプリ2021の敗者復活戦がまもなくスタート! 注目の6組をチェック!【カベポスター・金属バット・男性ブランコ・ヘンダーソン・マユリカ・ヨネダ2000】

M-1準決勝を会場で見届けた編集者・ライターの斎藤岬が、2021年度の敗者復活組から、独自の視点でピックアップした6組をわかりやすく解説する。
M1グランプリ2021の敗者復活戦がまもなくスタート! 注目の6組をチェック!【カベポスター・金属バット・男性ブランコ・ヘンダーソン・マユリカ・ヨネダ2000】

知ってても知らなくても、面白ければそれでいい!

この5年、「M-1グランプリ」決勝戦直前に六本木ヒルズ野外ステージで敗者復活戦を行うのが恒例となっている。その様子は昼過ぎからすべて地上波で放送され、視聴者によるWEB投票で決勝に進出する1組が決定。第一期の頃とは異なり、敗者復活戦も含めての「M-1グランプリ」といった様相を呈している。

今年はファイナリスト5組が初顔となり、決勝常連組や知名度の高いコンビが敗退。結果として、ハライチ、アルコ&ピース、ニューヨーク、見取り図といった面々を含む16組が敗者復活戦を戦うことになった(ただし、ほかの仕事とのスケジュールの兼ね合いで不参加を選ぶコンビも過去には存在している)。

この大混戦を制するのはどのコンビなのか。本稿では初めて敗者復活戦に挑む3組に加え、さらなる全国的なブレイクに期待のかかる決勝未経験の大阪吉本所属芸人3組を紹介する。

カベポスター

永見大吾/浜田順平
所属:吉本興業(大阪)

昨年から波に乗り始め、各種賞レースの準決勝・決勝常連となりつつある。今年は「ABCお笑いグランプリ」で準優勝、M-1敗者復活戦は昨年に続く2度目となった。

完全にしゃべくりが主体で、永見の大きな武器である大喜利力を活かしたボケワードの強さに加え、ツッコミの浜田の困惑の演技力もめきめきと上がってきている。そろそろ決勝進出への期待も高まってきているところだ。

なお、11月に先輩芸人の代打として出演したラジオ番組で大喧嘩が勃発。日頃穏やかな雰囲気の2人だけに、互いへの不満をぶつけ合う様子はラジオリスナーの間で少々話題になった。その後コンビで話し合って仲直りし、以前よりも関係は良好になっているそう。雨降って地固まった結果をここでぶつけてほしい。

金属バット

小林圭輔/友保隼平
所属:吉本興業(大阪)

寒空の下、かかとを踏んだスニーカー姿で「よいしょ、うぃー」と締める漫才を披露し、視聴者の度肝を抜いたのは2018年のこと。以来、一躍人気も知名度も上昇、拠点とする大阪のみならず全国各地のライブに呼ばれるようになっている。

この3年は敗者復活戦常連となっており、ネタはもちろん番組途中に挟まれる中継コメントでも爪痕を残してきたが、それだけではもちろん物足りないだろう。結成は2007年で、現在の出場規定に照らせば来年がラストイヤーになる。コンビ揃ってネタもネタ以外でも常に飄々とすっとぼけた空気を出し続けているが、今年は準決勝敗退後に友保が「皆様応援よろで頼ま」とツイートするなど、本気がうかがえる。ツーマンライブをたびたび開催するなど交流の深いランジャタイは決勝に進んだ。盟友とスタジオセットで相まみえることができるかどうか、手に汗握って見届けたい。

男性ブランコ

浦井のりひろ/平井まさあき
所属:吉本興業(東京)

「キングオブコント」で同率2位という結果を残した勢いのままに、漫才でもここまで勝ち残った。基本的に活動はコント中心だが、実は第1期最終年の2010年から継続的にM-1には参加している(2020年は不参加)。

コントインするスタイルが中心で、コント同様にどこか柔らかい雰囲気を放ちながらキレのあるフレーズが光る。「なるべくコントではできない、漫才でしかできないコント漫才にしたいなと思います」(2021年12月「OWARAI Bros.」より)という言葉の通り、設定が少しばかり現実離れしていたり展開のテンポが早かったりと、観る者の想像の余地が大きい漫才だからこその魅力を生み出している。「キングオブコント」に続いて「漫才もいける」と印象付ける場になりそうだ。

ヘンダーソン

子安裕樹/中村フー
所属:吉本興業(大阪)

見取り図、金属バットらと同期で、敗者復活戦は初出場。2015年末の『オールザッツ漫才』(MBS)にて披露したコント「石焼き芋」が注目を集めた。石焼き芋販売車のあのメロディに乗せてラブソングやラップを奏でる歌ネタで、覚えている人もいることだろう。2016年はそのネタでプチブレイクするも、大爆発には至らなかった。

その後、M-1でもキングオブコントでもなかなか結果が出せずに苦しみながら、劇場でコツコツとネタを積み上げてきた。今年は本気でM-1を目指すべく、スタイルを一新。それぞれのキャラクターの立ち方もさることながら、歌ネタで売れかけた経験の持ち主ゆえか耳心地の良い構成の漫才ができあがる。予選から快調にウケ、自身の最高成績を更新した。

マユリカ

阪本/中谷
所属:吉本興業(大阪)

ハイトーンでよく動くツッコミの中谷と、ボソボソと暗めにボケる阪本のコンビ。登場時には中谷が先に舞台に現れ、やや遅れてやたらな素早さでボケの阪本が走って出てくるが、そういうスタイルなのであって出トチっているわけではない。

所属する大阪・よしもと漫才劇場の先輩であるニッポンの社長・辻が「才能だけのコンビ(中略)大阪では、こいつらが努力したらきっと天下取っちゃうだろとみんな震えて」いると評する(「週刊SPA!」2021年8月31日号より)など、周囲の芸人から愛されるコンビである。

2018年以来3年ぶりの敗者復活戦出場となる。実は18年のM-1直後、中谷のたび重なる遅刻が原因で謹慎処分を受けるという出来事があった。さらに2020年は関西の賞レース「ytv漫才新人賞」決勝で、新型コロナウイルス感染者濃厚接触疑いにより当日棄権になってしまう。そして今年は阪本がM-1準々決勝通過後の11月にコロナに感染し、準決勝に間に合うか危ぶまれた。例年、M-1の目標を聞かれると「『準決勝です』と即答する」(同)とのことだが、ピンチを乗り越えた無欲の勝利となるか。

ヨネダ2000

清水亜真音/愛
所属:吉本興業(東京)

今年、最も「ダークホース」の呼び名がふさわしいのはこのコンビだろう。YouTubeで公開された予選動画が「面白い」とお笑いファンの間で注目を集め、そのまま勝ち進んできた。メディアでも「結成2年目のコンビが準決勝進出」と話題になっている。ただし正確には、もともとこの2人で芸歴1年目の2018年にコンビを結成、その後ひとり加わってトリオになり、メンバー脱退によってコンビに戻り現在の名前になった。

12月13日に開催された女性芸人の賞レース『THE W』では決勝に出場し、トップバッターを務める。初戦で紅しょうがに敗れるも、「『ボケ』と『お手伝い』でネタしてます」(2021年12月13日「週刊プレイボーイ」)というツッコミ不在のシステム漫才でインパクトを残した。