今回の震災では、これまでになく IT が役に立ったと言われる。だが、文字や写真が中心の情報だけではなかなか実感が人に伝わらない面もある。
東日本を突如襲った長く大きな揺れの後、多くの人々は不安に陥り、揺れがどこから伝わってきたもので、どの程度の被害があったかを知りたがったはずだ。
そんな時、震災がどれほど深刻なものだったかを、もっとも如実かつリアルに伝えていたのはやはりテレビ放送だった。
電気の通じている家々では大勢がテレビの前にかじりついていた。
屋外でも人々はテレビの前に殺到した。3 月 11 日、JR 渋谷駅に設置されたサイネージなどは一斉にテレビのニュースを流していた。飲食店に置かれたテレビの前に人だかりができている様子も散見できた。
一方、テレビが置かれていないオフィスや停電に陥った被災地では、携帯電話に搭載されたワンセグ受信機能が役に立ったという声をよく聞く。
今回の震災では、我々が今日慣れ親しんでいるテレビ放送に加え、おそらく日本の歴史においても初めてである、新しい形でのテレビ番組の配信が行われた。
YouTubeやニコニコ動画、Ustream といったインターネットサービスによるテレビ番組の配信だ。
当初、これらの配信は、ワンセグ機能が搭載されていないスマートフォンなどでの視聴を目的として草の根的に始められたが、海外を訪問中、あるいは在住の日本人にとっても重要な情報源になった。国内の日本人が不安な日々を過ごしながらテレビにかじりついていた数日間、海外に住む日本人たちも、ネットのサービスを通じて流れてくる日本のニュース番組にかじりついていた。
このような方法によるテレビ番組のネット配信は、ほとんどの人がテレビを見られるようになった 3 月 25 日前後には終了したが、テレビ局にとっても、各インターネットサービス事業者にとっても貴重な体験になったはずだ。