ファミ通.comがアニメ業界の気になる人たちへインタビューする連載“アニメの話を聞きに行こう!”。

 連載第3回で取り上げるのは、アニメが大好評のうちに完結を迎え、ゲームも開発中、全3巻の原作小説も好評発売中の、KONAMIによるメディアミックスアイドルプロジェクト『シャインポスト』です。

『シャインポスト』インタビュー。超絶クオリティーのライブシーンや、主人公らしからぬ葛藤が話題を呼んだアニメ版の裏話に迫る【アニメの話を聞きに行こう!】

 インタビュー後編となる今回は、アニメ本編について掘り下げます! たくさんのアイドルが登場するメディアミックス作品のアニメは、なるべく多くのキャラクターを魅力的に活躍させようとするもの。本作のように5人のアイドルだけに焦点を絞るというのは、じつはかなり異例。

 こういった作風になった理由や、視聴者に感動を届けたあのシーン、このシーンの秘密まで、アニメに夢中になった人なら必読の内容になっています。アニメのストーリーのネタバレもありますが、ネタバレにあまり抵抗がなければ、アニメ未視聴の人にもぜひ読んでいただきたいです。

※『シャインポスト』インタビュー前編はこちら。

石原明広 氏(いしはら あきひろ)

コナミデジタルエンタテインメント所属のゲームプロデューサー。『Elebits』、『ラブプラス』『ラブプラス+』などのタイトルのディレクターを担当。(文中は石原)

増尾将史 氏(ますお まさし)

アニメーション制作会社・スタジオKAI所属のアニメーションプロデューサー。担当作は『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』、『風都探偵』、『シャインポスト』など。(文中は増尾)

『ラブプラス』アニメ化打診の裏話

――ここからはとくにアニメの内容についてお伺いします。ところでプロデューサーの石原さんはアニメのお仕事は本作が初めてということですが、経歴を考えると意外な気もします。たとえば『ラブプラス』ではアニメの話などもあったのでは?

石原かつて『ラブプラス』ではアニメ化の打診もいくつかいただいたんですけど。

――おお。

石原昔話のかぐや姫が求婚を断るために、求婚者にいろいろ高難度な注文をつけるみたいな感じで、アニメ化の条件として無理難題を出し続けていたらすべてナシになりました。

――(笑)。無理難題というのは?

石原やっぱりあの作品は、プレイヤー以外の“カレシ”の存在は出したくないのですね。だから「あくまでカレシはプレイヤーの皆さんです。客体的なカレシが画面に映るのはNG。そうならないよう全部主観視点の作品にしてください」と言ったんです。それはやっぱり難しかったみたいで(笑)。

――FPS視点の恋愛アニメ!

石原カノジョとの思い出はプレイヤーの皆さんの数だけありますから、それを壊すものにするわけにはいかないなと思っていました。

――へええ……貴重な秘話をありがとうございます。さて今日の本題に参りましょう。

“アイドルの嘘”というタブーを描く上で徹底したこと

――アニメの第1話ではマネージャーの“嘘を付いた人が輝いて見える”という特殊能力に驚きました。あの設定はなぜ生まれたのでしょう?

増尾あれは原作小説からあるアイデアで、ゲームにも取り入れているんですよね?

石原そうですね。駱駝さんは“嘘”というテーマにこだわっていて、要するにタブーを入れ込むことで、ただの王道モノじゃない物語を作りたいということだと思うんですよね。

 でも小説だと「これが嘘ですよ」という気持ちを二重山括弧《》で表現したりできるんです。

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――実際の表現では……

「なによ、辛気臭い顔ね! 大丈夫よ! 《私がいれば、何も問題はないわ!》

出典:※電撃文庫『シャインポスト ねえ知ってた? 私を絶対アイドルにするための、ごく普通で当たり前な、とびっきりの魔法』(著者:駱駝/イラスト:ブリキ)1巻16ページ

――というように、カッコでくくってある部分が嘘だと読者にはわかる。

小説『シャインポスト』Kindle版(Amazon.co.jp)

石原「これってアニメーションでどう表現するんだろう?」と、おもしろい感じになっちゃうんじゃないかと心配していたんですが、第1話の演出で「あぁ、なるほど」と。

――いち視聴者としては、「何かこれまでのアイドルアニメとはひと味違うものが始まるのかな?」と、ストーリーへの関心が高まったように思います。

増尾天真爛漫に見えるアイドルたちの言っていることがじつは本心じゃない、ということがわかると、「この子にも何かあるんだな」と構えて観ることができますよね。

石原ストーリー上の謎解きがちょっとわかりやすくなるっていう意味でもちょうどいいバランスになったかなと思いますね。個人的にあの設定自体は、そういうきっかけのためのものであって、『シャインポスト』の根っこの部分ではないと思っています。

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――あの描写をアニメで行う上で気を付けたことはありますか?

増尾“嘘”って基本的にはネガティブなイメージなので、ステージの上のアイドルの姿をそのまま受け止めたいファンにとって、考えたくないものだと思います。アプローチにはかなり気を使いました。

 たとえば嘘を付いたときに見える色などは、もっとおどろおどろしい感じにすることもあり得たんです。でもアイドルの真剣さや切実な想いが伝わるものにしたかったので、ヒマワリとか、温かいものを連想させる色を使いました。真っすぐな気持ちがあるから付いた嘘というのがネガティブなものとして見えるのは嫌だったので。

石原その方針のおかげで、「この子、嘘付いてる!」っていうのが笑えるシーンになったりね。理王が「ぜんぜん平気よ!(ピカーッ!)」みたいな。

増尾あとは、自分以外の人に対して悪いことにつながる嘘は絶対付かないように徹底していましたね。

石原原作のころから人を騙したり、利己的に利用したり、貶めたりといったことはタブーにしていました。そこを増尾さんたちアニメスタッフにもバッチリ汲み取っていただいた形ですね。

“一度も本気を出してなかった主人公”にどうすれば感情移入してもらえるんだろう?

――アニメではTINGSの5人の成長に重きが置かれていて、『シャインポスト』のアイドルたちの中には、ほとんど活躍しなかったキャラクターも多かったように思います。メディアミックスのアニメとしては珍しい構成ですよね?

石原アニメ化が進行していったとき、キャラクターによってはまだ固まった設定が共有できる状態になかったのと、ほかにも諸事情があったんです。そもそも全員の物語を丁寧に描こうとしたら、とても1クールのアニメでは足りないこともあり、「アニメで描くのはここまで」と区切らざるをえませんでした。

 でも、結果的にそれでよかったのかなといまでは思います。もともと小説3巻分のプロットのうち、「アニメでどこまでやる?」という話になったとき、及川監督も増尾プロデューサーも、濃密な人間ドラマを描くならキャラクターの数は絞りたいという意見でした。

 とはいえ私としては、ゲームのことも考えて多くのアイドルたちを登場させたかったので、そこのバランスについてはたくさん話し合いました。けれど最終的には、視聴者がみんなのことを好きになってくれる前に話が終わっちゃっては駄目だろうと。

 もともとあった要素はなるべく残しつつ、よりTINGSの活躍に絞った原作改変をしていくことになっていったんです。

増尾「TINGSのメンバーは全員活躍してほしいよね」という方向性で定まったのですが、雪音と紅葉のTINGSへの加入時期を小説とアニメで変える必要があったこともあって、ふたりについてはとくにアニメオリジナルの要素が増えていきました。

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祇園寺雪音
伊藤紅葉

石原小説版は小説版で物語として完成されているんです。

 ただ、アニメの場合はそこに絵や音楽、キャラクターの声が入る。そして小説と大きく異なるのが、24分という時間の中で、本当に興味を持って観てくれる人もいれば、そうじゃない人もいる。短い時間の中でストーリーを理解してもらって、「この子いいな」「この子かわいいな」と思ってもらわなきゃいけないというのを増尾さんたちはめちゃめちゃ大事に考えてくれて。

――テレビアニメならではの表現や時間制限の中で最高の物語にするには、いろいろな部分を変える必要が出てきたと。

石原我々が「原作としてはここが重要なんです」と言うと、増尾さんたちに「でもアニメでは構成的に理解されづらいです」と返されたり。「このままではこの子を好きになってもらえるまで時間が掛かりすぎます」とか、もうたいへんだったんですよ(笑)。喧々諤々とした議論をけっこうな期間続けていたように思います。

増尾いやぁ、本当に話が進まなかったですねぇ(苦笑)。

――(笑)。

石原1年くらいずっと話し合ってましたよね。第1話~第4話くらいまでまとまって、そこからがたいへんで……。

増尾第7話だけで3~4ヵ月掛かりましたよね。

――いちばん難産だったのはその第7話ですか? TINGSのセンター、青天国春が本気でパフォーマンスしていなかったことが明かされる、ターニングポイントの回ですよね。

増尾第7話~第9話が春の成長を描くための一連のエピソードなのですが、この流れが決まるまでがたいへんでした。これを経てTINGSが5人でひとつになることは決まっていたのですが、「そこにたどり着くためにどうすればいいんだろう?」というのは、7話の時点からすごく難しかったんです。

 「春がずっとパフォーマンスで本気を出していなかった」という話を納得できるものにするにはどうすればいいか? アイドルってみんな全力でパフォーマンスするもので、そういう姿がファンの心をつかむものなので、どうすれば感情移入してもらえるんだろう、みたいな。

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青天国春

石原第1話では嘘を付いていなかった春が、後半で初めて嘘を付くあたりなどは、“嘘を付いた人がわかる”設定の真骨頂ですよね。 春役の鈴代(紗弓)さんの演技がまたよくてね……。

増尾「あぁ、本当はそんなこと思ってないんだな」みたいな。

――あそこはいいシーンですね。

増尾あのあたりの話は本当に気を使いました。

石原「これだ!」と思えるものにたどり着くまで遠かったですよね。気を付けないと、前半で春という女の子を太陽のように元気に明るく描いてきたのに、一発で嫌われちゃう可能性がありましたから。

――傲慢な子に見えかねないですものね。

石原そうならないように及川監督や増尾さんたちがとにかく考え抜いてくれました。

増尾第8話~第9話は「視聴者が春を受け止めてくれますように」と祈りを込めていましたね。

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「アニメで作れるライブシーンは◯回まで」→ どんどん増えちゃった!

石原増尾さんたちはアニメをよいものにしようと集中してくださっていたのですが、メディアミックス全体で考えると、増尾さんたちの想いとは相反する計画なども出てくるんです。

 たとえばアニメの第6話で理王が歌った『Yellow Rose』という曲はアニメ放送の1年以上前から完成していて、2021年のライブイベントで使いたいという話がありました。でもアニメ制作側としては「この曲はアニメで披露してこその感動があるから、絶対にアニメで初出しにしたい」ということで、「じゃあこの曲は使えない、この曲なら使える」と考えていったら、ライブで披露できる曲は3曲しか残らなかったり。

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聖舞理王

増尾『Yellow Rose』はアニメのために作っていただいた曲だったので、そこは譲れませんでした。曲調も歌詞の内容も、思いきりアニメのストーリーに寄せていて、アニメで初めて聴いてこそ感動してもらえる曲だと思ったので。

――『Yellow Rose』のシーンはものすごく引き込まれました! 確かに、もしほかの場所ですでにあの曲を聴いていたら、感動と驚きは多少なりとも減っていたかもしれません。

増尾ありがとうございます。

――ちなみに、第1話アバンのライブシーンで流れた『Sweet Surrender』をめぐって、増尾さんと音楽プロデューサーの木皿(陽平)さんがバチバチだったという話(インタビュー前編を参照)がありましたが、『Yellow Rose』ではどうだったのでしょう?

増尾『Yellow Rose』は歌詞は調整したのですが基本上がってきてすぐOKになった楽曲でした。バラードでお願いしていまして、理王が歌っている姿を想像したとき、これは絶対に映えるなと思えましたから。

TVアニメ『シャインポスト』#6ED / TiNgS「Yellow Rose」

石原『Yellow Rose』なんかは完全にほかのアイドルものに対する逆張りなんですよ。

――逆張りと言いますと。

石原6分もあるスローバラードの曲はいまの時代にそうそうありませんから(笑)。増尾さんと木皿さんのせめぎ合いによって、結果的にどの楽曲もほかのアイドルものとは差別化できたと思います。

――第1話に『Sweet Surrender』があって、第4話には『一歩前ノセカイ』があって、第6話には『Yellow Rose』。その後もストーリーを盛り上げるライブシーンがたびたび登場しました。

増尾我ながらたくさん作りましたね。

――どれも作画に気合いの入ったライブシーンで、それが何度も登場するのは「贅沢だな」とも思いながら観ていましたが、作っている側はたいへんではなかったのでしょうか?

増尾ものすごくたいへんでした(即答)。

――がはは。

増尾アニメにライブシーンをひとつ入れるのって、ミュージックビデオをひとつ作るのと同じようなものなので、お金も体力もすごく掛かるんです。本当はこんなにライブシーンを入れるつもりはなかったんです(苦笑)。

 制作開始当初、「アニメでのライブシーンは全体でこの数までしか作れません」と申告していたライブの回数は、もっと少ないものだったんです。

――そうだったんですか!?

石原言ってた言ってた(笑)。

増尾いざ作っていったら、いろいろ事情が変わりまして。

 「4話はここまで積み上げてきた杏夏の気持ちを考えたら、センターでちゃんと歌って踊る姿を見せないと駄目だ。じゃあライブやろう!」、「6話は、理王の変化を歌で表現すれば絶対に感動してもらえる。それじゃあライブやるか!」とか、及川監督とも相談しているうちに、どんどんライブの回数が増えちゃって。

――増えちゃって、じゃないですよ!(笑)

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増尾特殊エンディングにつなげることで丸々ライブシーンにするほどの労力は掛からないようにするとか、演出でやりくりもしているんですけどね。

石原初期の脚本会議で「ここのライブはダイジェストっぽく、ちょっとだけ」みたいな話をしていたのに、絵コンテが上がってきたら「あれ? これどう観てもがっつりライブだよな」とちょっと困惑して。「でも、でき上がりはそんなに動かない感じになるってことなのかな」と思ったら……。

――思ったら?

石原動く動く!

――(笑)。

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石原僕らは脚本会議が終わった後は、増尾さんたちとコミュニケーションを取る機会はそれほどなくなるんです。

 それ以降の絵コンテ作業や作画は彼らの戦場ですからおまかせしていたのですが「スタジオKAIはいまこんな状況らしいぞ」とか「南さん(※)ヤバいらしいぞ」とか、状況が漏れ聞こえてくるんですよ!

 「スタジオKAIはどう考えてもたいへんなことをやっているよなぁ」というのはうかがい知れていたので、そこだけでも語れることはきっと山のようにあると思いますよ。同時期に『風都探偵』も担当していましたしね。

※南さん……スタジオKAIで設定制作を担当している南幸大氏。このインタビューにも同席。

――同じクールにスタジオKAIで制作されていた『風都探偵』ですね。増尾さんは『シャインポスト』と『風都探偵』、同クールに放送されていた2作品でプロデューサーを兼任していたわけですが。

増尾僕としても初めての経験でした。どちらもクオリティを落とすわけには行かないので、2年くらいずっと「やばいやばい!」と言いながら作り続けていました(苦笑)。

 どちらかが先に制作を終えられたら、終わった作品のメンバーがもう一方のチームに合流してもらうとか、うまく回せるやりかたもあったとおもうのですけど、気が付くと同じタイミングで放送を迎えてしまい……。

石原私たちもびっくりしましたよね。「同じクールの放送になっちゃってるじゃないですか!」って(笑)。

――『シャインポスト』のライブシーンは描くのがたいへんという話でしたけど、『風都探偵』でもすごいライブシーンがあったような……?(※)

※……アニメ『風都探偵』第4話で、とあるキャラクターが歌ったり踊ったりするライブシーンがある。

増尾そうなんですよ……(苦悶の表情で)。

石原「そのライブもこっちにちょうだいよ!」と思いながら私も観ていました。

アニメ『シャインポスト』のライブシーンは“引くほどに”凄い!

増尾ライブシーンのノウハウはスタジオKAI全体でいろいろと蓄積があるので、ほかの制作会社さんよりは効率的に組み立てられるんだとは思います。ここまでなんとかかんとかやってきました。

 加えて、今回はゲーム用のモーションキャプチャーのデータをKONAMIさんからもらって、それをもとに作画していくスタイルでやっているので、そういった協力もすごくありがたかったです。ほかにも手伝ってもらった部分がありますし。スカートの件とか。

――スカート。

石原実際にダンスをするときにその衣装のスカートがどんなふうに動くのか知りたいという相談を受けたことがあったんです。

 それで、ゲームでのライブ用にモーションキャプチャーを行うとき、振付師の方にスカートを履いてもらって、“スカートが舞う様子”をビデオに撮ってKAIさんにお送りしたりしましたね。

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TINGSのステージ衣装。確かにダンス中のスカートの動きを資料なしで描くのはたいへんそう。

――アニメとゲームの制作が平行して行われる本作だからこその連携ですね。

石原僕らはアニメ制作にはあまり貢献できないんですけど、サポートできることはできる限りやらせてもらっていました。ものすごく繊細な作画を全部手描きでやっていますからね。スカートが翻るときのリアルな挙動とか、参考にできるものは何でも活用したいだろうと。

――毎回、手描きならではの躍動感を活かしたライブシーンになっていて惹き付けられますよね。手足のしなやかな動きや、表情の変化など、CGで描かれていたらどうしても硬さを感じる部分だったように思います。

石原『シャインポスト』の作画は、すごすぎて私もちょっと「うわっ!」って引くことが何度もありました。

 とくに印象的だったものを挙げると、杏夏が歌詞を飛ばしてしまい、頭が真っ白になったところを春がフォローするというシーンがあるのですが、ここの動きがものすごく細かいんです。

 イントロが始まってすぐに杏夏の頭が真っ白になったことがわかる描写があるのですが、理王はダンスが苦手なのでまったく杏夏のほうを見る余裕がありません。ところが春は杏夏の様子がおかしいことにちらっと見るだけで気付いて、つぎのカットでスッとフォローに入るんですよ。0.5秒ないくらい、ほんの数フレームで視線の演技がちゃんと入っているんです。

――4話の『一歩前ノセカイ』を歌うシーンですよね。あそこはひとりひとりの動きのバラバラ感から3人の人間性、能力差が見て取れるのがすごかったです。

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石原スタジオKAIさんのアニメは全部絵だけでも成り立つように省略せずに描いてくれているんですよね。とにかくこだわりがエグい。ちょこちょこと細かいことをやっているので、2周目はぜひ一時停止したり、コマ送りで観てほしいですね! 

増尾お話の本筋は映像だけでも理解できるように作るようにしています。おっしゃる通り、「視聴者さんは気付いてくれるかな?」と思いつつ、ちょっとした瞬間もしっかり描くようにしています。

石原最初に『Be Your Light!!』のアニメPVを観たときも驚きました。でもそのときは「PVだから力を入れてるのかな?」と思ったんですけど、テレビアニメでも1話からゴリゴリに気合いの入ったライブだったから「これはヤバいでしょ」って。

 今夜放送の第10話(インタビューを行ったのは第10話放送当日の2022年10月4日)は私もまだ観られていないんですけど、またすごいライブが観られるとか。

増尾HY:RAINのライブ、めっちゃ、いいですよ……! 超強いっすよね、アイツら。あれはもう、TINGSは勝てないですね。

――ハードルを上げますね(笑)。

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HY:RAIN

石原でもその話もずっとしてましたよね。HY:RAINみたいな立場は噛ませ犬になっちゃいがちだから、強力なライバルとして、ライブシーンで如何に説得力を持たせるかというのは。

増尾TINGSにとって強大な壁であることをちゃんと描きたいなと思ったので。10話のライブはうちのアクション系の作画が得意な主力スタッフの総力を結集して作っています。かわいいタイプのライブシーンもたくさん作っていますけど、本来はかっこいいライブを得意としているスタッフが多いんですよね。なので、HY:RAINはその本領が発揮されていると思います。

――インタビューが公開される頃には放送は終わっているので、視聴者の反応が楽しみですね。

TVアニメ『シャインポスト』GYB!! / HY:RAIN #10ライブシーン

TINGSと絶対アイドル・螢の“プロ意識”の違いは“目線”にある

――アニメの作りかたについてもう少しおうかがいしたいのですが、いま石原さんが述べられたライブシーンでの0.5秒くらいだけ垣間見える仕草みたいな細かな演技については、絵コンテの段階から仕込んでいるものなんでしょうか?

増尾先ほど話した春が杏夏の異変に気付いたときの細かな仕草は、絵コンテに描いてあった動きではないんですよ。ほかにもオープニングで春がカメラに目を向けるところとか、ああいったものはアドリブですね。

――実際に絵を描くアニメーターさん、原画や動画制作段階でのアドリブ(※)ということですか?

※……ここでは絵コンテなどに指示がない動きを、アニメーターの自己判断で加えることを指している。

増尾そうです。第6話の『Yellow Rose』もバラードなのでそこまで大きな動きを描く必要はないんですけど、理王が身振り手振りを交えて深く情感を込めて歌うようになったのは、アニメーターのアドリブの力が大きいです。そういう、伝えた以上のものになっていることがよくあるんですよ。

――仕上げに近いほうの作業で、各自の判断でアドリブを加えるというのは、すべてのスタッフが『シャインポスト』を深く理解していないと「理王はそういうことしないよ!」みたいなミスも生じてしまいそうな気がします。

増尾僕や及川監督が直接“作打ち”(作画に関する打ち合わせ)に参加して、「この子はこういう子なんだよ」みたいなシナリオ打ち(シナリオに関する打ち合わせ)で出てきた情報を演出家さん、アニメーターまでしっかり伝えて、アイドルひとりひとりの個性をスタッフみんなに理解してもらうようにしています。

 あと社員のクリエイターが多いので日ごろからコミュニケーションをとっているのも大きいと思います。

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――具体的なキャラクターごとの個性の描き分けとしては、どんなものがあるのでしょう?

増尾こちらでアニメーターに意識してもらうように伝えていたのは、“キャラクターの目線”です。いまのライブって会場のファンと同時に、配信で観てくれている人がいるじゃないですか。それを考えると、みんなに楽しんでもらうっていうのをしっかり意識してくれているアイドルなら、会場のファンだけじゃなくカメラにも目線を向けるよねと。

 それで螢みたいなトップアイドルはパッとカメラ目線になったりするんです。それはこちらからの指示でやってもらっているところですね。TINGSのみんなはまだそこまでできていません。

――プロとして意識が行き届いているからこその仕草というわけですね。

増尾トップアイドルって、こういうことまでできているからたくさんの人の心をつかむのかなと思っていて、視聴者にそれとなく伝わるように表現したつもりです。

――そういった連携がうまく取れるのは、社内での制作率の高さなども関係しているのでしょうか?

増尾それはあると思います。うちは早い段階から社員化を進めてきました。スタジオKAIに在籍している人たちって、業界でも有名なきびしい作品に関わってきた、猛者っぽい方が多いんです。

――アニメ業界の猛者が(笑)。

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増尾そういった人たちによりスケジュールに余裕を持ってもらって、作品づくりに集中してもらえる環境の整備を続けているんです。

 みんなずっといっしょにやっているので仲がよくて、意見交換もしやすい環境ができているんだと思います。

――勝手知ったるスタッフどうしで、近い距離で連携を取り合っているのが高いクオリティーを生み出せる理由になっていると。

増尾あとはライブで披露する楽曲によって「こういうコンセプトの曲なら照明やステージ演出にはこの色とこの色が使われる」といった画面設計におけるノウハウの蓄積があるのも大きいです。色彩設計の中野(尚美)さんという方も、別の作品からずっといっしょにやってきている方なので、連携がすごくしやすいんですよね。

こんな泣けるアニメにするはずじゃなかった

――そうしていろいろな困難を乗り越えて放送が始まったアニメ『シャインポスト』は、2022年の夏アニメでも評判の一作になったかと思います。アニメへの反応を見てきて、どのように感じましたか?

石原ありがたかったのが、『シャインポスト』をけっこうな視聴者の方が、何度も見返してくれているんですよね。春の幼なじみが誉(ほまれ)という名前なのですが、春が抱える秘密が明かされてから改めて序盤の話数を観てくれた方が、「全部わかってから見返すと誉の言葉が染みる」と言ってくれていたんです。

 振り返ってまでそういった関係性を考えてくれるというのはうれしいですよね。そういう振り返ってみたら泣けるようなシーンが『シャインポスト』には多いんですけど、なんでこんな泣けるアニメになったんですかね? こんなはずじゃなかったのに(苦笑)。

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虎渡誉

増尾原作の設定の時点で、感動的なお話のもとになる設定はいろいろと散りばめられていたんです。それを石原さんも含めてがんばってつなぎ合わせていった結果として泣けるストーリーになったのかなと思います。

石原第4話の杏夏の件もそうですけど、スタジオKAIさんのアニメーションが深く考察したくなるくらい細かく描いてくれていて。それが物語の伏線にもなっていたりするので、気付かなくてもおもしろいんですけど、気付いた方は絶対もっと楽しい。見返したときに「うわっ! ここで伏線張ってるよ」っていう。

 メインビジュアルなんかもそうですよね。HY:RAINが上に映っていて、TINGSのみんながビラ配りしてますっていう構図で、みんな配ろうとしている相手がちゃんといるんだけど、理王だけ配るべき相手が見当たらなかったり。

――いま思えばアニメで描かれる葛藤を暗示しているようですね。

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アニメ『シャインポスト』キービジュアル。いま見るといろいろな意図が垣間見える。

増尾キービジュアルは僕のほうでコンセプトを作って描いてもらったんですけど、カメラの焦点は上のほうにいるHY:RAINを向いていて、それは世の中の注目を表しています。スマホで写真を撮っている人なんかもいて。“立っている場所がHY:RAINとTINGSでは違うよ”というのも表現しているんです。

 でも下のほうに目を向ければこれからがんばっていく子たちもいるから、応援してほしいな、みたいな。いまはTINGSのほうを向いている人はトッカさんくらいしかいないんですけど、“これからこの子たちはどこまで行けるか見てほしい”という気持ちが入っていますね。

石原いま言ったようなことをちゃんと見付けてくれている視聴者の方もいて、よく見てますねぇといつも感心させてもらっています。

ステージの上で泣きたいアイドルなんて誰もいない

――増尾さんに、アニメーションプロデューサーとしてメディアミックス作品である『シャインポスト』に関わったことで、いちばん教訓になったことみたいなものがあればお聞きしてみたいのですが。

増尾そうですね……“対立意見の中間を取らない”、“折衷案を選ばない”というのを大事にしていたかもしれません。

 石原さんみたいな立場の人ともLINEで「ああでもない、こうでもない」みたいなやりとりをしましたし、木皿さんからも電話がバンバン飛んでくるみたいな状況だったんですけど、上の人だからといって壁を作っちゃうよりも、一度「納得できるのはどっちだろう」というのは話し合うようにしていました。

 多くの人からいろいろな意見が出ているからといって、折衷案を取ってしまうと中途半端になってしまいます。折衷案でいいものもありますけど、よく考えた結果としてそう判断したのでなければ、「こっちの意見で行きます」というのはハッキリさせたほうがいいんだと思います。

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――意見の食い違いがあると「じゃああいだを取って……」みたいに言いたくなっちゃいますけど、それではよいものはできないと。

石原けっきょく「誰が何をやりたかったの?」っていうのがあるじゃないですか。そこに誰かの熱量だったり、魅力を感じる対象があって進んできたプロジェクトのはずなので、間を取っていっちゃうとそれが削がれちゃうんだと思うんですよね。ゲーム開発も関わる人間が多いので、同じようなことはしょっちゅう起きます。

 建設的に出た意見を取り入れていくこと自体は折衷案とはまた違うと思うんですけど、ただただみんなが丸く収まりそうな方向にばっかり進んでいくと、何がしたかったのかわからなくなっちゃいますよ。「俺が責任を取る」みたいな、そう言わないと着地点ができないシーンは必ず出てきますよね。

――増尾さんの場合、「アニメ制作側としてはここは譲れないんです」みたいな瞬間が。

石原増尾さん「俺を信じてくれ」って何回か言ってますもんね。

増尾でも「アイドルとは?」みたいなことに関しては、誰も石原さんには言い返していないと思います。

石原イチ言われると100くらい返すので、みんなだんだん「面倒くせぇ」ってなっていったんだと思います。

増尾いやいや、なってないです(笑)、なってないですよ!

石原いまゲームでも同じことをやっているんですよ。

 ゲームのシナリオを全部読んで、「こことここが変です」と赤字を入れていく。アニメでもやっていたんですけど、ゲームでは25人ぶんやっています。

――どんなふうにチェックをしていくのです?

石原「ここの主人公のアドバイスは変です。こんなアドバイスをしている奴はマネージャー辞めたほうがいいです」みたいな感じに。

『シャインポスト』インタビュー。超絶クオリティーのライブシーンや、主人公らしからぬ葛藤が話題を呼んだアニメ版の裏話に迫る【アニメの話を聞きに行こう!】

――辛辣!(笑) さて、そろそろまとめに入りたいと思います。改めて、増尾さんはアニメ『シャインポスト』ってどんな作品だと思いますか?

増尾アニメのストーリーとしては、ひとりひとりが悩みを抱えていて、それを克服した彼女たちの成長がライブシーンで表現される。それがひと区切りになっていて、そこで感動できるようにストーリーをしっかり組み立てていきましょうと。それはほかの作品も同じかもしれないんですけど、ちゃんと夢に近づいていく女の子たちを愚直に描きましょうというのは大事にしました。愚直に描きすぎて、なかなか話が進まないところはあるんですけど(苦笑)。

――(笑)。

増尾活躍するアイドルの人数が多い作品だと、誰かの悩みに対して、仲間たちが何を感じて、どんなふうに助けたり、寄り添ったりするのか、丁寧に描き切ることは難しかったと思うんです。アニメだけでもTINGSというアイドルがどういう子たちなのかがわかって、観てくれた方に好きになってもらえる。そういう物語にした結果として、この点でもほかの作品とは差別化されているかなと思うんですよね。

 メディアミックスのアイドルもので、ここまでアイドルの人数を絞ってやっているアニメってそんなに多くないと思います。普通だったら「5人しか活躍させないなんて、お前ら売る気ないのか?」みたいに指摘されてもおかしくないですよね。

――そういったデメリットを引き受けてでも、アイドルたちの青春を丁寧に描きたいという想いに、石原さんをはじめKONAMIの人たちも応えてくれたと。“嘘”というテーマから始まった本作が蓋を開けてみれば真っ直ぐで愚直な成長物語だったことに、今回のインタビューを通して納得できました。

石原描きたいのはあくまでも“キラキラしたもの”なんですよね。実際のアイドルさんたちも、たとえばステージの上で泣いちゃったりするとフォーカスされますけど、泣きたい子なんて誰もいないはずです。人前で泣かないように気を張っているはずだし、そういうふうに強くあろうとすることのほうに青春感があると思うんですよ。それはアニメ同様、原作でも、いま作っているゲームでも変わりません。

『シャインポスト』インタビュー。超絶クオリティーのライブシーンや、主人公らしからぬ葛藤が話題を呼んだアニメ版の裏話に迫る【アニメの話を聞きに行こう!】

“自分だけの最強のアイドルユニット”も作れる、アニメを観た人はプレイ必至のゲーム版『シャインポスト』

――小説・アニメ・ゲームと、『シャインポスト』が展開しているメディアはそれぞれ表現方法が異なりますが、もともとあった原案を別のメディアに変換する上で気を付けたことはありましたか?

石原先ほどの“嘘を付いた人を見つける能力”の話にも共通しますが、小説の中では成立していた物語がアニメにすると理解してもらうのが難しかったり、視聴者の感情が追い付かないみたいなところは、スタジオKAIさんがアニメの文法としてもう一度再構築したり、絵にするということをしてくださっていました。

 ゲームはゲームで、そこに入力というものが入ってくるじゃないですか。「ここはゲームの中でレベルアップすることで体感させたい」とか、「これはパラメータが上がることで体験させたい」とか。自分の思考でひとつひとつの選択をしていく、それによってやっぱり見せかたも変わってきますよね。

『シャインポスト』インタビュー。超絶クオリティーのライブシーンや、主人公らしからぬ葛藤が話題を呼んだアニメ版の裏話に迫る【アニメの話を聞きに行こう!】
※ゲーム画面は開発中のものです。

――ゲームならではの魅力という点は、石原さん始め、KONAMIの皆さんの腕の見せどころですね!

石原開発チーム一同がんばっています(笑)。それから、ゲームではアニメで光が当たらなかった子や先日発表した新グループの“ひまわりシンフォニー”も含めて、25人のアイドルがいるんですよ。ひとりひとり、全員がヒロインという形で、マネージャーである主人公と1対1で向き合いながら成長していってもらうようなゲームになります。

 アニメは杏夏や理王にスポットが当たる物語がそれぞれ2話くらいあって……という感じでしたが、25人全員分のストーリーがアイドルとしてのスタート地点から武道館に行くところまで存在するんです。

『シャインポスト』インタビュー。超絶クオリティーのライブシーンや、主人公らしからぬ葛藤が話題を呼んだアニメ版の裏話に迫る【アニメの話を聞きに行こう!】
『シャインポスト』インタビュー。超絶クオリティーのライブシーンや、主人公らしからぬ葛藤が話題を呼んだアニメ版の裏話に迫る【アニメの話を聞きに行こう!】

――ひとりのストーリーを最後まで見届けたら、次のアイドルのストーリーを読む、みたいな形式ですか?

石原そういう感じですね。その中で自分だけの最強のTINGSを作ってもらうこともできますし、「この子とこの子でオリジナルのユニットを組ませたいな」ということもできるように、自由度の高いゲームを目指しています。

――アニメではあまりやりとりのなかったキャラクターどうしの関係も深掘りされたり……?

石原もちろんです。ひとつ挙げると、TINGSの紅葉に関してはアニメでほとんど描写されなかった大きなつながりを持った子たちがいて……。第1話のアバンにちょっとだけヒントがあるんですけど、紅葉と、HY:RAINの青葉と絃葉にはじつは大きな関係性があります。ゲームでは3人それぞれが主人公の物語をすべてプレイすることで、真の物語が明らかになるみたいな構成になっています。ここも注目してほしいところですね。

『シャインポスト』インタビュー。超絶クオリティーのライブシーンや、主人公らしからぬ葛藤が話題を呼んだアニメ版の裏話に迫る【アニメの話を聞きに行こう!】

――アニメを観たらゲームや小説に触れる、そうやって作品世界を掘り下げられるのも複数のメディアで展開することの強みですよね。すべてに触れることで味わえるおいしさが待っていると言いますか。

石原そうやってゲームのほうも楽しんでいただけるとうれしいです。

『シャインポスト』のプロデューサーふたりに話を聞きに行って

 多くの人の心に残る物語となったアニメ『シャインポスト』。そうした作品になったのは、関わった人たちそれぞれの、熱い想いがあったからなのだと今回のインタビューを通して知ることができました。

ゲームメーカー、アニメ制作会社、音楽プロデューサーや原作小説に関わった人など、立場が違えば大事にしていることも異なり、意見はぶつかるというもの。しかしそこで折衷案などの穏当な道を選ぶのではなく、とことん意見を伝え合って、誰もが最高と思えるものを作ろうともがくこと。

少し非効率的であっても、多くの人が関わるメディアミックスプロジェクトでそれを妥協なくくり返した結果が、いま我々が目にしている『シャインポスト』を形作っていたのです。

 アニメ版を楽しんだ人は、ゲーム『シャインポスト Be Your アイドル!』でより深く作品世界を知ることができるはず。そしてゲームを楽しんでから改めてアニメを見返してみれば、さらに多くの発見があるかもしれません。リリースを、楽しみに待ちたいと思います。

作品情報

  • アニメ『シャインポスト』

メインスタッフ

  • 原作:KONAMI / ストレートエッジ
  • 世界観設定/小説執筆:駱駝
  • 監督:及川啓
  • シリーズ構成:SPP
  • 脚本:駱駝/樋口達人
  • キャラクターデザイン原案:ブリキ
  • キャラクターデザイン/ 総作画監督:長田好弘
  • サブキャラクターデザイン / 総作画監督:宗圓祐輔
  • 総作画監督:坂本俊太、清水慶太
  • 美術監督:松本浩樹
  • 色彩設計:中野尚美
  • 撮影監督:松井伸哉
  • CGディレクター :吉良柾成
  • 編集:髙橋歩
  • 音響監督:森下広人
  • 音響制作:ビットグルーヴプロモーション
  • 音楽:西木康智、伊藤翼
  • 音楽プロデューサー:木皿陽平(Stray Cats)
  • アニメーション制作:スタジオKAI

メインキャスト

  • 青天国春:鈴代紗弓
  • 玉城杏夏:蟹沢萌子
  • 聖舞理王:夏吉ゆうこ
  • 祇園寺雪音:長谷川里桃
  • 伊藤紅葉:中川梨花
  • 螢:大橋彩香
  • 黒金蓮:芹澤優
  • 唐林青葉:高瀬くるみ
  • 唐林絃葉:久保田未夢
  • 氷海菜花:高柳知葉
  • 苗川柔:香里有佐
  • 兎塚七海:野口衣織
  • 陽本日夏:木野日菜
  • 梨子木麗美:ファイルーズあい
  • ナターリャ:古賀葵
  • 広瀬実唯菜:齋藤樹愛羅
  • 日生優希:小松未可子
  • 虎渡誉:富田美憂
  • 菊池英子:種崎敦美 ※

※崎はたつさき

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