いよいよ2019年8月2日(金)に全国東宝系にて公開される、『ドラゴンクエスト』シリーズ初のフル3DCGアニメーション映画、『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』。
国民的RPGの金字塔であり、1986年から続く長い歴史を誇る『ドラゴンクエスト』(以下、『DQ』)シリーズでも初の試みとなる、フル3DCGアニメーションの映画化作品となった『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』は、ファンにあいだでもとくに人気の高い『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』を原案にした物語が展開する。
本記事では、そんな注目すべき作品の指揮を執ったふたりの監督に、制作時のエピソードをたっぷりと語っていただいた。
八木竜一(やぎ・りゅういち)
写真左:『鬼武者3』のオープニングムービーを筆頭に、数々の作品でCGディレクションに携わり、アニメ『もやしもん』のCG監督などを担当。『friends もののけ島のナキ』で監督デビュー後は活躍の場を映画に移し、映画『STAND BY ME ドラえもん』で本作の総監督を務める山崎貴氏と共同監督を担当した。
花房真(はなふさ・まこと)
写真右:『鬼武者』シリーズや『バイオハザード』シリーズを中心に、ムービーシーンのアートやCGディレクターなどを歴任。ほかにもゲーム関連のCG映像を数多くディレクションする。映画『STAND BY ME ドラえもん』ではアートディレクションや美術全般の各種デザインを務めた。本作が初の監督作品となる。
壮大な物語だからこそ、エピソードの取捨選択がとにかく難しかった!
――今回は『DQV』というゲームタイトルを、フル3DCGのアニメーション映画にするという試みに挑戦されましたが、そもそもゲームというものにどのような印象をお持ちですか?
花房私はけっこうゲームが好きで、いろいろと遊んでいました。ただ、アクションやレースゲームをプレイすることが多く、RPGはそこまで深く知ってはいません。とは言え、『I』や『II』など、『DQ』シリーズ初期の作品は遊んでいましたね。
八木私は花房ほどのゲーマーではありませんが、『DQ』は『I』、『II』、『III』を遊んでいました。
――では、『DQ』の映画化というお話もすんなり受けられた?
八木いや、最初に映画化のお話をいただいたときは、「主人公がしゃべらないゲームを映画にするなんて難しいと思う」と固辞したんですよ(笑)。ゲームの場合、主人公に自分の名前を付けて、自身をキャラクターに投影できるのが魅力ですが、映画で同じことをやるのは難しい。
花房自分がプレイした足跡がストーリーになっていくのがゲームですからね。それを勝手に決められたら……ねえ?(笑)。あとは、ベースが『DQ』だからというところもあるのでしょうけれど、主人公は寡黙な人というイメージも皆さんにもあると思うんです。
――確かにそうですね。
花房そういう主人公が、いきなり映画でしゃべることに、違和感を持たれるのではないだろうか? なんて思ったりもしました。
八木そんな不安もあって、当初は難しいとお答えしたのですが、その後、何度もお願いされまして。その熱意に押されて、我々も「期待に沿えるかどうかはわからないけれど、とりあえず主人公を作ってみましょうか」という話になりました。
――いわゆるパイロット版的なものを作り始めたのですか?
花房いや、もっと手前の段階ですね。ひとまず主人公とスライムのキャラクターを作り、その雰囲気を見てCG映画に向いているかどうかを判断しましょう、と。
八木スライムのデザインは変えられないので、スライムと主人公が同居して違和感のない画になるかどうか、確認をしたんです。
花房原案になった『DQV』は、元がドット絵ですから、皆さんのイメージとはやっぱり違うわけです。だから、キャラクターがCGになったときにどのような印象になるか、そして3DCGアニメーションとして成立するかという問題がありますから。
八木それと同じくらいのタイミングで、山崎総監督も「自分がシナリオを書いてみましょう」となって。山崎も『DQV』のどんなエピソードを映画に入れたいと思うか、スタッフに何度もヒアリングを重ねていましたね。
――ちなみに、おふたりが推したのはどのようなシーンだったのでしょう?
八木個人的に印象が強かったのは、子ども時代のリュカと大人になったリュカが出会って、オーブを見せてもらうシーンですね。
――あー! 確かに名場面ですね。
花房ほかにもゲーム中にはおもしろいエピソードがたくさんあるけれど、映画に入れられる数にはどうしても限りがあるので、取捨選択をすることになりました。
八木尺を考えると、映画に入れられるエピソードって、だいたい10個くらいなんですよ。さらに、どのエピソードを物語の骨にするのか、そこも議論を重ねました。
――『DQV』には、10個では済まないほどのエピソードが詰まっていますからね……。
八木そうですよね。よく話題に挙がる“選択”のエピソードは、絶対に外せないですし。あと、ブオーンも出したいという話もあって。
花房私も、ブオーン戦は絶対に映画でやりたいと言った記憶があります。やっぱりゲームを遊んだときのインパクトは大きかったので。ヘンリーと主人公のあいだでくり広げられるドラマも、アツいし泣けるしで、映画からは外せないと思いました。
――ちなみに、現段階で言える範囲で、映画に入れられなかったエピソード、あるいは映画オリジナルのシーンとして構想はしていたけれどカットした要素などはありますか?
八木サンタローズの村が焼けてしまうエピソードは入れられなかったですね。本当は、そこでヘンリーと主人公のドラマが展開するのですが。
花房そもそも、パパスの小屋も『DQV』ではサンタローズの村にありますが、映画ではあえて少し離れたところで暮らしているというアレンジを加えています。
八木ゲマと敵対することになるパパスとリュカなので、村にいるよりも隠れ住んでいるほうがいいだろう、ということで。
花房映画に出てくるパパスの小屋も、じつは細部まですごく作り込んでいます。屋根にある見張り台でサンチョが敵の一群を発見するというシーンを考えていたのですが……なくても成立するので、なくなりました(苦笑)。
八木制作期間も限られていますから。バトルシーンでも、構想段階ではもう少し長かった部分をシェイプしたものもあります。大筋のストーリーに影響がない部分は、どうしても優先度を下げざるを得なかった。
――なるほど。でも、映画化に伴ってカットしなければならないエピソードが出てくるということは、『DQV』とストーリーの整合性を取るのも難しそうですね。
八木物語の大筋を変えず、映画の限られた時間内で納まるようにするために、いろいろと整えました。
花房単純にカットするだけでは、どうしても意図が伝わらない部分が出てきてしまう。『DQV』を遊んだ方ならわかるけれど、本作はゲームを遊んだことのない方にも伝えなければならないので、そこは調整させていただきました。
――完成披露記者会見でも、堀井雄二さん(『DQ』生みの親であるゲームデザイナー。本作では監修を務める)が「『DQV』を遊んだことのない方でも楽しめる映画にしてほしいとお願いした」とおっしゃっていました。
八木そうなんです。厳密に言うと、原作とは違う部分があったとしても、『DQ』の精神みたいなところだけは絶対に外さないようにしてほしいと。
花房原作で描こうとしていた部分をなるべくわかりやすくするために、いろいろと変わっている部分はありますね。
――コアなファンにしてみれば、原案である『DQV』との違いを発見するという見かたができて楽しいと思います!
いまだから話せる!? こんなシーンも考えていました!
――『DQV』という原案ありきの映画ということで、堀井さんやスクウェア・エニックスさんが監修されていますが、記憶に残る指摘などはありましたか?
八木ブオーンとのバトルシーンは、コンテの段階で大きく修正しましたね。
――具体的には?
八木当初、「ブオーンは“はげしいほのお”を吐くから、ビアンカが“こおりのたて”を装備して戦う。でも、その盾がどんどん溶けていく……という演出はおもしろいんじゃないか?」と思ったので、そんなシーンを提案させていただいたところ、「『DQV』には“こおりのたて”が出てこいないので、ビアンカは装備できません」とのご指摘が。
――ああ、それはもっともですね。
花房「主人公たちの装備や使える呪文に関しては、原案にできるだけ忠実にする」ということを、そこでしっかり共有しました。
八木MPが減っていく様子を視覚化したいなと思って、呪文を使うとき、手の周辺に魔法陣のようなリングが現れて、その光の大きさや輝きかたでMPの減り具合がわかるという要素をコンテに起こしたこともありましたね。
――ほうほう。
八木ただ、そういう設定はゲームにはないということで、それも変更して。
花房MPの視覚化はおもしろいと思ったんですけれどね。
八木途中で「HPとMPの数字を直接、描くのはどうか?」という案が出たこともありましたが、「それはお客さんも求めていないだろう」ということで、さすがに止めました。
――なるほど。
花房やっぱり激しいバトルシーンでは観ているお客さんも本気になってほしいので、ギャグっぽく見えるような要素は入れないほうがいいと判断しました。
八木ただ、先に述べたような基本的なルールさえ守れば、比較的自由に演出させていただきました。たとえば、劇中でリュカがメタルスライムと戦うシーンがあるのですが、「なぜメタルスライムにダメージを与えられないのか」という演出を、私の思うようにやらせていただけました。
――注目ポイントのひとつですね! 本作にはバトルシーンが豊富に用意されていますが、1カットしか出てこないモンスターもたくさん登場していますよね。
花房そうなんです! なるべくたくさんのモンスターを出したいということで、ファンの方も楽しんでいただけるよう、がんばりました。おばけきのこなんて、本当に一瞬しか出てこなかったりします。
――でも、その1カットのためだけにモンスターのモデルを作るわけですよね……。
花房たいへんでしたが、やってよかった。ぜひ見逃さないでいただきたいです(笑)。
――逆に、これはやれなかった、あるいはやらなかったという要素はありますか?
花房民家にあるタンスの引き出しを開けてアイテムを取るのは『DQ』シリーズの定番ですけれど、それはうまく入れ込めなかったですね。なるべく尺を削らなければならなかったので。
――ひと笑いのためにどれだけ尺を使えるかのバランスですよね。
八木そうなんです。リュカがチカラ尽きて、ゲレゲレが棺おけを引きずって教会に行くというシーンも考えていたのですが、ゲームを知らない方への説明が長くなってしまいますし、緊張感もなくなるのでカットしました。
花房それを想起できるシーンは入れ込んだので、観ていただければわかると思います。
キャストのアドリブも活かせる“プレスコ”という収録技法
――では、キャストに関してお聞きします。主演を佐藤健(さとう・たける)さんにしたいと、プロジェクトが始動するタイミングから考えていたんですよね。
八木そうです。キャラクターのCGを作ってパイロット版を作ることになったのですが、主人公に、別の映画のシーンから佐藤健さんの声を拝借して当てたんですね。それがとてもハマっていて、我々も「佐藤健さんにやってもらいたいな」と思いました。だから、実現できたときは感動しましたね。
――音声収録の手法も独特だったそうですね。
八木本作では“プレスコ”(プレ・スコアリング)という手法を使っていまして、まだ脚本と絵コンテしかできていなかった約2年前に、音声収録を実施しました。そこでいただいた声を使って、2年かけて3DCGアニメーションを作っていったんです。
――収録が先であれば、役者のアドリブも映像に活かすことができますよね?
八木できますし、実際に活かしました。アドリブで印象的だったのはゲマ役の吉田鋼太郎(よしだ・こうたろう)さんです。ゲマは、笑い声のバリエーションがたくさん必要なキャラクターなのですが、見事に演じてくださいました。そのうえで、台本よりさらに迫力のある笑いの演技をアドリブでいただいたんです。どのシーンかは言えないのですが、すごく良かったので、当初の予定から秒数が伸びました(笑)。
――プレスコで声を録ったら、キャストの皆さんの仕事はほぼ完了ということに?
八木確かに、声を録り終わったら、そこからはひたすら絵を作り込むのですが、細かい息づかいや、セリフのニュアンスが少し違ったところなどは、完成した映像を見ながらアフレコ(アフター・レコーディング)という形で追加収録させていただきました。
花房アフレコを行う前には、絵もだいたいできあがっていたので、キャストの皆さんにはそれを観ていただいて、追加でアフレコを行ったのですが……佐藤健さんや有村架純(ありむら・かすみ)さんから「このシーンはもう1回やらせてください」と言われたのは、うれしかったですね。
八木本来は、追加で録る必要がある声はわずかだったのですが、演じたご本人的に違うと思ったところがあったようで。実際に撮り直したら、よりよくなりましたね。
――この作品にかける熱意の表れですね。
八木すごくありがたかったです。
映画のメインキャラクターとなる3人のデザインコンセプト
――キャラクターデザインはどのタイミングで固まったのでしょうか?
花房キャラクターのデザインは、キャストが決まるより早い段階で固まったのですが、リュカは制作が進むに連れ、どんどん顔が佐藤健さんに似ていったかもしれません(笑)。
八木とくにリュカの目は、佐藤健さんにどんどん近づいていきました。
――パイロット版の段階で佐藤健さんのイメージを持っていたということですから、それは自然な流れのような気がします(笑)。リュカのデザインに関して、表情以外で気を配ったところはありますか?
花房リュカは『DQV』をベースにすると、どうしても旅人感が強くなるんですね。
――『DQV』で描かれたイラストでは、杖を持っているくらいですし。
花房本作では激しいバトルが展開するので、そのイメージは残しつつ、激戦にも耐えられるように見えるデザインにアレンジしました。剣を持たせているのも、それが理由です。
――アレンジと言えば、ビアンカもけっこうなアレンジが加わっている印象です。
八木ビアンカは、『DQV』よりも気風(きっぷ)のいい女の子というイメージを強くしています。
花房ふつうの美人ではなくて、ちょっと個性の強い美人という点を意識しました。おてんばな印象を前に出しつつ、フローラとの差別化という意味でも、『DQV』のピシッとした髪型より、ちょっと跳ねた感じの髪型に変更させていただいたりしました。
八木顔にそばかすがあるのも、単純な美人にしたくなかったのと、元気な女の子というイメージを強くしたかったからですね。
花房服装も『DQV』をベースにしていますが、CGでそのまま描くとモンスターと戦う人にあまり見えないということもあって、甲冑感を出しています。『DQV』のビアンカはマントの形状が特殊で、マントをベルトで止めていて、かつ前が開いているんです。そのスタイルをいかに違和感なく見せるデザインにするか、そこは工夫しました。
八木肩当てのストラップも、どこまで自然に見せられるか、けっこう悩みましたね。
――フローラはどういったコンセプトでデザインされたのでしょうか?
花房フローラに関しては、「あえて個性的に描かない、正統派の美人」というコンセプトだったのですが、それをデザインするのは難しかった。本来であれば、個性がないと女優の魅力は薄くなるものなんです。
八木当初は目がもっとキツめで、オードリー・ヘップバーンみたいな雰囲気でした。
花房それではあのやわらかさが出なくて、試行錯誤をくり返しましたね。
八木青い髪に関しても議論しました。
花房我々としては、できるだけリアルに描きたいという想いがあって。そういう意味では、フローラとヘンリーの髪の色は悩みました。もう少し黒っぽくする案もあったのですが、そこは『DQV』を踏襲しています。
八木ただ、眉とまつ毛は濃い色にしないと表情の魅力を伝えにくいということもあって、かなりギリギリまで色味を調整しましたね。
花房リアルという意味では、服のピンク色も悩みました。髪の色とマッチする服の色を、何度も調整を重ねました。
八木フローラと言えば、声を演じた波瑠さんにはサプライズがあります。
――あれは驚きました! 詳細は語れませんが、波瑠さんは最初から●●(※)を演じられる予定だったのですか?
※編註:ここは映画を実際に観て確認してください。エンドロールに要注目です!
花房いえ、当初は我々もほかの方に演じてもらおうと思っていたんです。ただ、収録の際にお試しくらいの感じでお願いしてみたら、とてもうまく演じていただいて。
八木その演技を見て、「これは波瑠さんでいきましょう」ということになりました。ある意味、我々としてもサプライズでした。
衣装の細部にいたるまで、遊び心は忘れない!
――ほかのキャラクターのデザインについてもうかがっていきたいと思います。パパスはわりとそのままの雰囲気ですね。
八木そうですね。ただ、パパスが腰当ての下にはいているズボンには、ちょっとした意味を持たせています。
――と言いますと……?
八木これは映画オリジナルのものですが、よく見るとズボンにグランバニアの紋章のような模様が入っているんです。そして、パパスとリュカ、サンチョの3人は、デザインの似たズボンをはいています。
――3人ともグランバニアの出身だから!
花房そうなんです。本当に細かいネタですけれど(笑)。
八木細かいネタだと、ルドマンが胸に着けている装飾品にも、“LS”という文字がデザインされています。映画館で映像を観ても気付かないかもしれませんが(笑)。
花房“ルドマン・ド・サラボナ”の略ですね。名前のルドマンは“ゴールドマン”をもじっているだろう、それなら名前のスペルはLだ! なんて話をしていて(笑)。
八木小ネタで言うと、ルドマンの先祖であるルドルフやルドストの肖像画をルドマンの家に置いてみたり、サラボナの町に“あらくれ”がいたり……いろいろやっていますね。
花房そういった遊びを入れつつ、世界の雰囲気はしっかり『DQV』を踏襲するようにしています。サラボナの町も、ディテールは細かくしていますが、町の中央に噴水があって、その周囲に家が建っていて……という作り自体はそのままにしています。
――個人的には、プサンの姿も驚きました。『DQV』を知らなければ、何の違和感も持たないんでしょうけれど。
八木プサンの姿は『DQV』と大きく変えています。登場シーンも、トロッコのあるところで待っているわけではありません。
花房じつは、プサンがやっている酒場の名前は“トロッコ”です(笑)。
――あはははは(笑)。いいですね!
花房プサンも、リーゼントでサングラスという姿で描いたこともあったのですが、世界観と違和感が出てしまって。威厳のあるカッコいい老人に変えさせてもらいました。
――そんな経緯が……! プサンとは逆に、イメージ通りだったのはサンチョでした。
花房そうですね。頭に被っているヘルメットは足させてもらいました。全体を通して、ドット絵のデザインをリアルな3DのCGに変換していく作業はおもしろかったですね。最近のゲームはリアルなCGがベースになっているので、このおもしろみは感じられなかったと思います。
――「キャラクターイラストはあるけれど、基本はドット絵」というのは、創作するにはちょうどいいバランスかもしれませんね。
花房そうですね。逆に、マーサはドット絵のグラフィックしかなくて苦労しました(笑)。
――あー!
花房プレイステーション2版のポリゴンのキャラクターがいちばん細かく描かれているものなのですが、額に金の飾りらしきものを着けていたので、それを表現したりして。
――装飾のブラッシュアップと言えば、ヘンリーとゲマはかなりゴージャスに……。
花房ヘンリーもバトルに絡むキャラクターなので、戦うのに相応しい王族の姿という形を考えました。
八木先ほども少し話が出ましたが、「彼の緑の髪は染めているのか、それとも地毛なのか」という議論があって。悩んだ末に「地毛でしょう!」という結論になったので、奴隷時代のヘンリーは、緑色の不精ひげを生やしています。
――確かに! ヘンリーと同じく、ゲマもゴージャス感たっぷりにデザインされています。
花房『DQV』の雰囲気を踏襲しながらも、よりボス感を強調しようということで、本当は被っていない冠を追加したりしています。
八木結果的には大正解で、これ以上なく威厳のある悪役となってくれました。
――では、最後におふたりから、これから本作を観る方にメッセージをいただけますか。
花房戦闘シーンなどはとくにそうなのですが、『DQV』は、ゲームで遊んでいるときは「きっとこうやって戦っているんだろう」と想像を膨らませるしかなかった時代の作品です。それをなるべく具体的に、かつイメージが崩れないようにがんばって映像化しました。世界も細かく作り込みましたので、『DQV』を遊んでいるときに思い描いた気持ちやイメージを映画で体験していただけたら。
八木『DQV』を遊んでいた方からすると、今回はだいぶ違った印象を受けるかもしれません。でも、ゲームに熱中していた方ほど見逃せない映画になっています。ネタバレがあるので、詳しくは言えませんが、とにかく観てほしい! ぜひ劇場で観ていただけたらと思います。
『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』
2019年8月2日(金)より全国東宝系で公開
原作・監修:堀井雄二 音楽:すぎやまこういち 総監督・脚本:山崎貴 監督:八木竜一・花房真
出演:佐藤健、有村架純、波瑠、坂口健太郎、山田孝之、ケンドーコバヤシ、安田顕、古田新太、松尾スズキ、山寺宏一、井浦新、賀来千香子、吉田鋼太郎