E7M1: 祝DOOM20周年ということで! 初代『Quake』を振り返る

公開日時:2014-01-16 00:00:00

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 ドモー、年末年始も特に変わらず洋ゲーばっかり遊んでいましたBRZRKです。

 さて、昨年はFPSというジャンルを開拓したid softwareの看板タイトルの1つ『DOOM』が20周年とのことで、記念しまして『QUAKE』について書いていこうと思います(DOOMについては別途企画してるのでいずれ)。


●id softwareの誇る伝説的なFPSタイトルQUAKEが、 開発チーム分裂の要因にもなってしまった

 早速QUAKEについて書こうかと思ったんだけど、ちょっとあまりにも思い入れが深すぎる作品なので、どこから書こうか物凄く悩む。というのも、僕がまっとうな人生から踏み外すきっかけになったタイトルの1つであり、書こうと思えばいくらでも書けてしまうほど愛してやまないタイトルだからだ。
 で、本当はQUAKEとの出会いについて書こうと思ったのだけど、これはクソ長いのでそのうち書くことにして、今回はどんなゲームかという点を書いていこうと思う。

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 QUAKEは『Wolfenstein 3D』、『DOOM』に次ぐid softwareの第三弾目のFPSとして1996年に発売された伝説的なタイトル。開発に参加した人々はレジェンド勢が揃っており、名前を並べるだけで立ちくらみがしそうなレベル。とりあえず、代表的な人物を参考までに並べておきますね。

・ジョン・カーマック
言わずと知れた神。昨年id softwareを退社してバーチャルリアリティヘッドセットのOculus Riftの開発会社に入社したことが発表されており、驚いた人も少なくないはず。洋ゲー界の技術を引っ張る小さな巨人。

・アメリカン・マギー
アリス・イン・ナイトメア』や『Akaneiro: Demon Hunters』の製作者。id softwareではレベルデザインや世界観の構築をやっていた模様。現在は独立してスタジオを運営中。

・ジョン・ロメロ
「大刀」。QUAKEの開発完了後にid software社内の内輪揉めで独立し、伝説の『大刀』をリリース。『大刀』についてはいずれ言及しようと思う。

・トレント・レズナー
インダストリアルバンドとして有名なNine Inch Nails(通称NIN)のメンバー(サントラを担当)。2014年には日本で2daysのライブの開催が決定しとります。

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▲QUAKEに出てくるネイルガンの弾薬箱にはNINのロゴが書かれていたりも。

 この他、id softwareのタイトルを長年手がけ、その後離脱したコアメンバーが揃っているタイトル。各々の我が強い強烈な面子が揃っているなぁといった感じ。


 肝心のゲームデザインなんですが、これがまた微妙にブレまくっているのだけど、色々聞いたり読んだりした話しをまとめるとこんな感じ。

 ジョン・ロメロはQUAKEをゴシック・ホラーを前面に押し出し、敵は1ステージに数体しか出ないものの、強力なAIを実装して強烈な印象を与えるゲームデザインにしたかった。
 が、ティム・ウィリッツとジョン・カーマックはDOOMを踏襲したSF要素を取り入れた世界観でいいんじゃないかと意見が割れてしまう。

 で、あまりにもジョン・ロメロがゴシックゴシックとうるさいので、とりあえずその方向で作ってみたものの、開発途中のビルドでは「クソゲー臭」がプンプン。コレはさすがにヤバイということで、急遽DOOMと同じ世界観に路線変更をしたものの、リリースまでの残り時間との都合などもあり、それまでに制作してきたマップデータは流用することに。
 で、突然SFとゴシック・ホラーを合体させると整合性が取れないので、ゲームの導入部分に難易度選択とエピソードセレクトを追加。さらに、各エピソードの最初のマップにSFチックなステージを付け足し、微妙ではあるが形を整えることに成功。なんとか発売にこぎつけることになった。

 で、この流れに物凄く不満を持ったジョン・ロメロと他のメンバーとで亀裂が入り、ジョン・ロメロはid softwareを離脱して『大刀』を開発し、悪い言い方をしてしまうと落ちぶれてしまった。

※ちなみに、ジョン・ロメロが導入したかった武器とか色々な要素は、後に発売される追加のミッションパックに含まれていたりする。

 参考までに、エピソード1のSFで作られたマップ1とゴシック・ホラーで作られたマップ2の画像を張っておく。


■『Quake』E1M1

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▲とまぁ、鉄板だらけのインダストリアルなSF基地な感じ。


■『Quake』E1M2

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▲色のトーンが似てるから一緒に見えるかもしれないけど、さっきのSF基地感と比べると、かなり城な感。

 なんか雰囲気全然違うでしょ。でも、当時はデザインが云々とか気にするほどでもなく、とにかく撃ち合いが楽しかったので自然と馴染んじゃったんだよね。


 ちなみに、QUAKEシリーズはQUAKE4まで発売されているんだけど、ジョン・ロメロが頑張ったQUAKE1は正史とはされておらず、全く世界観が異なるQUAKE2(とその続編であるQUAKE4)が正史となっていたり。肝心の物語はこんな感じ

「コードネーム“QUAKE”と呼ばれる敵が、異次元からテレポーターで地球侵略のためにやってきた。プレイヤーは名も無き兵士。基地に到着して彼が見たのは、Quakeの襲来により全滅状態となった無残な姿だった。しかし基地のどこかにQuakeの本拠地へと繋がるテレポーターがあるはず。ミッションは明白だ。テレポーターで敵の本拠地に乗り込み、数えきれぬモンスターの群れをかいくぐって、諸悪の根源を断て」

 物凄くB級な物語の設定なんですが、これはもうid softwareの伝統的なセンスとでも言えばいいでしょうかね。ださい。


●スプライトを使用せず完全3D化! ペラペラな印象とはおさらばだ!!

 当時のFPSはマップデータにスプライトを組み合わせた擬似3Dで世界を表現していた。正直、ここについては分かりやすく説明するのが難しいので言及は避けるけど、それまでは複数枚の絵を組み合わせて無理矢理3Dっぽく見せるのが主流だったって感じ(DOOMで敵を倒すと、どの角度から見ても同じ絵が表示されるのは死亡時の絵が基本的に1枚だから)。

 で、天才プログラマーとして名高いジョン・カーマックが新技術を色々と取り入れ、擬似ではない完全な3DのFPSタイトルとして作り上げたのがQUAKEなのだ。キャラクターはもちろん、表示される全てのオブジェクトは3Dで構成されており、ペラペラとした1枚絵のオブジェクトはほぼ完全に排除。DOOM時代からFPSをプレイしていた友人いわく「圧倒的な表現力にビビって下痢した」とのこと。ホントかよ。

 僕は発売から1年遅れて1997年にQUAKEと出会うのだけど、当時はPCのことなんて何も知らない高校生。家にあるPCで遊んでいた時はソフトウェア処理といって、PCのCPUとメモリでのみ処理されたQUAKEを遊んでいたのだけど、これが重いんだ。家にあったPCだと320×240という低解像度で遊ぶのが最適で、それ以上の解像度は重すぎてどうにもならず、物凄く画質の荒い画面で遊んでいたのを今でも覚えている。

参考までにどんな感じの画面かを動画にしたのでご覧あれ。
※320×240で録画できなかったので640×480の解像度

 こんな荒々しい画面でモリモリと遊んでいたのだけど、しばらくしてから3D処理を高速化する3Dアクセラレーションカードとやらがあると聞いて色々と調べ、買ったのが3DfxのMonster 3D(voodoo1)。右も左も分からない状態でPCにグラボを組み込み、必要なファイルをインストールして起動したときの感動ったらもう、今までの人生の中でもトップ3に入るモーメントだったかな。なんか敵が物凄くクッキリハッキリと見えるようになって、あまりの変わり具合に全然別のゲームじゃねぇかと思ったほど。

こちらも参考に動画を撮影したので見てもらいたい。
※3DFXのボードが手持ちにないのでGeForceを用いてGLquakeを使用

 ぜんぜん違うでしょこれ! ちなみに、現在はユーザーが作成した高解像度テクスチャーを採用したMODが存在し、もっと表現が強化されたMODもあるんだけど、こちらも凄いんですわ。

これも参考までに動画を撮影したんでご覧あれ。
※darkpalaces modを使用

 とまぁこんな感じ。3つ目のDarkplacesのファイルは、最後の更新が1996年の発売から17年が経過した2013年に行われており、いかにこのタイトルが愛されているかが窺える。

 そうそう、QUAKE1をどれだけ早くクリアできるか? というQUAKE DONE QUICKという遊びがある。いわゆるSPEEDRUNなんだけど、TAS動画などと異なり、実際にプレイヤーが操作して実際の速度でタイムを競い合っている。これがまた凄いので、是非見て欲しい。

 さて、マルチプレイについても書いていこうと思ったのだけど、ちょっと今回の更新に入れるのは少々難しいので、次回の更新時に紹介しようと思う。ではまた!


※筆者近況 DayZ Standalone版が面白すぎて仕事してられないっすわ。

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BRZRK
週刊ファミ通やファミ通Xboxに“スオミ松崎”名義で執筆していたFPS歴15年のフリーライター。現在は他媒体でも使用しているBRZRK(バーサーク)名義に変更し、執筆活動のほかにゲーム大会の実況・解説やインターネット番組に出演したりしなかったり。まぁ、そんな感じでイロイロやってます!

BRZRKの「うるせー洋ゲーこれをやれ」(仮)