絶対的な“孤独”を内包しているヴォーカリスト
京都の嵯峨美術短期大学中にジャニス・ジョップリンやアレサ・フランクリンといった個性爆発型シンガーに影響を受け、シンガーになることを決意したUAは1994年にジャズクラブで歌っているところをスカウトされ、デビューを果たすことになる。
現在は4人の子供の母親でもある彼女だが、『11』をリリースした時はまだ24歳。どんな人生を歩んできたのだろうと思わせる深みと説得力のある歌はもちろんだが、その肉体を惜しげもなく晒し、こちらを真っ直ぐに見つめるジャケット写真ひとつとっても、この歌い手はタダモノではないと感じる。と同時に、いつまでもミステリアスな生き物のままでいてほしいと思う稀有な存在。現在は沖縄のカナダに暮らし、自然と共に生活しているとのことだが、そんな生き方も含めて本能に忠実なUAらしい。
アルバム『11』
1stアルバムにして、90万枚を超えるセールスを記録した大ヒット作にして、名盤。プロデューサーとして参加しているのは朝本浩文(ex.ミュートビート)、大沢伸一(モンド・グロッソ)、現在もタッグを組んでいる青柳拓次(リトル・クリーチャーズ)、竹村延和、COBAなどそうそうたるメンバーが手掛けた、クラブミュージックをベースに民族音楽のテイストも盛り込まれたサウンドはオーガニックというよりは、コンクリートを感じさせる洗練されたテイスト。
人気がブレイクするきっかけとなった「リズム」やUAの存在を世の中に知らしめた「情熱」のダブヴァージョンも収録。パーカッシヴでゆったりとしたグルーヴとサビの抜けるメロディーが秀逸な「落ちた星」や、のちの「悲しみジョニー」にも通じる憂いと色気を含んだヴォーカルにドキッとさせられる「ゼリー」、本作の中では素朴でシンプルなアプローチで名曲と評価が高い「雲がちぎれる時」、民謡的アプローチの「水色」などリピートして聴きたくなる楽曲が多く、全体的には当時のトレンドを取り入れたサウンドなのに、今聴いても不思議とまったく色褪せていない。UAの存在感のある歌声が真ん中にあるゆえかーー?
著者:山本弘子