椎名桔平の全裸CMも話題に ラ王が切り開いたカップめん新時代
画像は日清ラ王公式サイト「ラ王の歴史」のスクリーンショット

久しぶりに手に取ったカップラーメン「日清 ラ王」。
発売当初を知る者としては、現在のノンフライめんがやはり納得がいかない。

ラ王といえば、真空パウチされた生めんが最大の特徴だった。
一人暮らしを始めたばかりの筆者にとって、カップめんは生活に欠かせない楽しみのひとつ。生めんであることの個性は、数多くのラインアップの中から選ぶに十分な理由だった。
しかし、ラ王は2010年の段階で乾めんタイプのノンフライめんに移行し、容器も丸から八角形へ。とっくの昔に「2代目ラ王」に進化している。
そういえば、このお披露目CMがいきなり放送自粛になったのは記憶に新しいところ。

照英をメインに槍ヶ岳でCM撮影中、一般登山者の登頂を妨害したとして騒動になったのである。

当時に比べれば味も格段によくなっているのだろうが、パウチされた生めんの独特な香り、どうしてもぬるくなってしまうもどかしさもラ王ならではの味わいだった。
「ラ!ラ!ラ王~~~~!!」と叫ぶ初代を始め、90年代CMはどれも“濃厚”だった印象。
インパクト抜群のCMたちを思い出さずにはいられないのである。


深夜を中心にCMを連発し市民権を得たラ王


カップ入り生タイプ即席めんの元祖のイメージが強いラ王だが、実は1989年に島田屋本店が発売した「真打ちうどん」こそが元祖。ラーメンのジャンルでも1991年に明星食品が発売した「夜食亭」の方が早いようだ。
しかし、生タイプ即席めんは有機酸溶液で処理して滅菌するため、アルカリ性のかんすいを利用するラーメンでは問題が多く、なかなか定着まで至らなかったという。

各社が試行錯誤するなか、いち早く技術的にこの問題を克服したのが日清食品だった。
1992年についに「日清 ラ王」が登場。生タイプであることを強調したCMを大量投下し、一気に認知を拡大したのである。

「ラ!ラ!ラ王~~~~!!」のフレーズが鳴り響いたのは、深夜が特に多かった印象だ。
赤井英和と金山一彦がうまそうにラ王をすすりまくるのが、空きっ腹をくすぐりまくる。
実際味わってみると、シコシコ食感にツルッとしたのどごしは、当時の乾めんにはなかった特徴。
お湯を入れてわずか1分で楽しめることも画期的だった。
93年には約1億5,000万食を、95年には約4億8,000万食を販売したというから、凄まじい人気だ。
ラ王の技術を応用した、同じく生タイプの「日清のごんぶと」「日清Spa王」など、うどんやスパゲティタイプの派生バリエーションも登場。カップめん業界に生めんという新たな流れを生み出したのである。


若き日のイケてる前園が主役のラ王CMとは?


96年には、当時Jリーガーの前園真聖と中田英寿が競演したバージョンもあった。
「ヒデ、ラーメン食いたくね?」「行くか、ゾノ!」の掛け合い、漫画のような走り方でダッシュするコミカルさは子供受け抜群だったが、中田の棒演技がとにかく印象的。その後の大活躍やキャラクターを思うと、かなりのお宝映像である
現在の前園は『ワイドナショー』を始め、バラエティでのイジられキャラが定着しているが、この頃は公共広告機構(現ACジャパン)の「いじめ、カッコ悪い」で話題になるなど、イケてるJリーガーの代表格だった。
このCMでも中田に兄貴風を吹かす主役扱いだ。
しかし中田がこの後、日本代表入り→フランスW杯出場→セリエAのペルージャ移籍とスター街道を爆進することで、サッカー界での立場は完全に逆転するのであった。


椎名桔平が全裸で熱演! パンチありすぎた「ラ族」CMシリーズ


ラ王の「ラ」を「裸」にかけた「ラ族」シリーズをご記憶の方は多いのではないか。
「うまい! そのとき人はまる裸。」をテーマに掲げ、椎名桔平が全裸で奮闘する98年のCMである。
第1弾は、忙しそうなオフィスでひとり全裸の桔平がひたすらラ王を食べる「こいつ、ラ族。」編だ。
一瞬、誰もいない空間になり、全裸で空気イス状態の桔平のバックショットが映るのもシュール。
汗だくになってラ王をむさぼり食う桔平が、真面目な表情で「ラ王~~~!!」と雄叫びを上げるインパクトは絶大だった。
続く、「こいつ、やっぱりラ族」編は長野オリンピックに合わせて、全裸でスキージャンプをする内容。
ラ王を食べながら大ジャンプ!と同時にコスチュームが脱げ、全裸で「ラ王~~~!!」と叫ぶのだから、もはやダチョウ倶楽部の域。大事なところはスキー板で隠すというアキラ100%的芸風もミックスしているから、身体張りすぎであった。
さすがにやりすぎた感が強かったか、視聴者からのクレームも殺到したのだが、それに対する次のCMがふるっていた。
今度は温泉でラ王をすする桔平。
しかし全裸ではなく、なぜかタキシード姿で温泉に浸かっている。
キャッチコピーは「服は着てても、ココロは『ラ族』。」
まさに、全裸へのクレームを逆手に取った内容だったのである。
しかもラストに「しお~~~~!!」の絶叫。しお味新登場を効果的にアピールするナイスなアレンジであった。

その後、250円から200円に値下げしたラ王は、小林薫をメインに早すぎた『深夜食堂』チックなCMになったが、今に語り継ぐような突き抜けた内容ではない。
その後も多くのタレントがラ王のCMを務めたが、椎名桔平の全裸のインパクトを超えるものはなかった。
前述のケチが付いた「2代目ラ王」お披露目CMが、話題の面では超えたかもしれないが……。
(バーグマン田形)