数年前までは多かったのに… 近ごろ、連続ドラマの「打ち切り」がなくなった“業界の事情”

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打ち切りの歴史

 やはり同5%前後だったため、全11回の予定が9回で打ち切られたのはTBS「家族A」(1994年、主演・野村宏伸)。当時の野村は日本テレビ「君だけに愛を」(1991年)やNHK「ドラマ新銀河 南部大吉交番日記」(1993年)などに立て続けに主演する売れっ子だった。

 プロデューサ―の遠藤環氏も故・坂口良子さんが主演した伝説の名作「グッドバイ・ママ」(1976年)などを演出した名匠。局内外の誰もが当たると思っていた。ところが作品の人気は高まらなかった。

 敗因はやはり脚本にほかならない。新趣向のホームドラマだったのだが、当時の遠藤氏は「(物語が)複雑になり過ぎた」などと自己分析した。

 最後の打ち切りドラマは2015年の関西テレビ(フジ系)「戦う!書店ガール」(主演・稲森いずみと渡辺麻友)。10回放送するはずが9回で終わった。同視聴率4.7%だった。

「戦う!――」は書店を舞台にしたお仕事ドラマ。原作『書店ガール』はベストセラーだったが、連ドラ版は準備不足の感があった。稲森による書店幹部と渡辺による若手書店員からしてリアリティーに欠けた。

 原作小説は2014年12月、「静岡書店大賞 映像化したい文庫部門」を受賞した。数日後には連ドラ化が決まり、僅か約4カ月後の2015年4月にはオンエアが始まった。一般的に連ドラの準備は放送開始の約1年前から始まるので、恐ろしいまでに速いペースだった。

 その後も放送回数が10回に満たなかった低視聴率の連ドラはあったのだが、なにしろ局側は「放送回数未定」を切り札にしている。打ち切りとは決め付けられない。

7月期ドラマで打ち切りが取りざたされた連ドラは?

 現在、プライムタイム(午後7時から同11時)に放送されている連ドラのコア視聴率を見ると、1%を割っている作品はない。打ち切りを取りざたされた作品はないと言っていい。

 テレビをよく観る高齢者を惹き付けないと上がらない世帯視聴率と違い、ターゲットが絞り込めるコア視聴率のほうが確実に数字を得られるとされている。

 このところ連ドラの世帯視聴率が全般的に低いが、その理由は各局がコア視聴率を優先しているから。大半の作品が高齢者を狙っていないからである。

 いずれにせよ、本当は打ち切りであろうが、「放送回数未定」なのだから、もう打ち切り認定される連ドラはないだろう。観る側としては最終回までの残り回数が分からず、ちょっと迷惑な話だが。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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