本文へ移動

中卒入門が既定路線も…「本当に意思固く」琴ノ若は自分と、そして祖父と向き合い高校進学を決断【新大関誕生連載(中)】

2024年1月31日 05時00分

このエントリーをはてなブックマークに追加
◇新大関琴ノ若~祖父・琴桜に導かれた相撲人生(中)
 関脇琴ノ若(26)=佐渡ケ嶽=が大相撲初場所で新大関昇進を決めた。母方の祖父が元横綱琴桜、父が師匠の佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)。横綱の遺伝子を受け継ぐ相撲一家の一粒種に訪れた人生の転機。そのときどきに範となった祖父との物語を全3回で紹介していく。

埼玉栄高3年時、世界ジュニア選手権重量級で優勝した鎌谷将且(現琴ノ若)(右)と父の佐渡ケ嶽親方


 埼玉栄中に進んだ琴ノ若は、ここでも祖父と向き合うことになる。
 指導する埼玉栄高の山田道紀監督は「普通にポワッとした感じ」と最初の印象を振り返る。入学当時は腕立て伏せもできなかった。まだまだ子どもの体。現在も幕内で活躍する先輩力士は「『一反もめん(アニメ・ゲゲゲの鬼太郎に出てくる妖怪)』と呼ばれていました」と話す。
 山田監督のもとには、中学卒業後にプロ入りすることを前提に入学していた。「中学は土台づくり。高校2、3年生ぐらいで芽が出るように育てています。中学では自重を使ったトレーニングしかさせません」という先を見て育てる指導で基礎を磨いた。全国大会にも出場した。
 中学卒業が近づいてきた。既定路線は入門。琴ノ若はここで自身を見つめ直し、高校進学へとかじを切ることとなる。父で師匠でもある佐渡ケ嶽親方は当時のことをよく覚えている。
 「中学3年の終わりごろに電話がかかってきました。そんなことめったにないのに。『まだプロに行く力はありませんので、高校へ行かせてください』と」
 周囲には中学卒業後の入門を強く勧める声があった。師匠が中学卒業後に入門していたこともあるが、最大の理由は祖父だった。倉吉農高の卒業間際に中退して入門した祖父は、高校に進学したことを悔いていたからだった。琴ノ若もそのことは知っていた。
 「先代は高校を中退して入門しているんですけど、『中学卒業後に入っておけばよかった』と話していたと聞かされていました。『早く入門していれば、もっと早く横綱になっていたかもしれない』と。先代が自分でそう言っていたぐらいなんだと」
 自分の思いは祖父とは違う。どうすべきか真剣に自分と、そして祖父に向き合った。それでも自分の思いは変わらなかった。
 「まだシンプルに通用しないし、このままプロに行っても気持ちがついていかない。流れに流されないように、本当に意思固くいかせてもらいました」
 正解だった。高校進学後は2年生のインターハイからレギュラーとして出場。山田監督はこう振り返る。「高2のインターハイは使わなきゃよかったというレベルだった。予選だけで交代させました。高3からちょっと強くなっていって、高3のインターハイでは強かったね」。琴ノ若は最終学年ではキャプテンに指名され、同校をインターハイ団体優勝などに導きプロの門をたたいた。
レスポンシブなバナー

関連キーワード

おすすめ情報

購読試読のご案内

プロ野球はもとより、メジャーリーグ、サッカー、格闘技のほかF1をはじめとするモータースポーツ情報がとくに充実。
芸能情報や社会面ニュースにも定評あり。

中スポ
東京中日スポーツ