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新十両・獅司が「ママ」と呼ぶ雷部屋のおかみさんは女子相撲で3度の日本一「ママは獅司より相撲が強い」

2023年8月11日 18時55分

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 獅司がさびしそうにつぶやいたのは、名古屋場所6日目だった。「ママがいない…」。栄美さんは長女の学校行事などで帰京していた。ただ、そこから連敗する獅司を見て、栄美さんは「本当は1週間、東京に戻るはずだったんですけど、さすがにこれは帰んなきゃって」と獅司の支えとなるため予定を切り上げて名古屋へ戻った。

狼雅(左)を攻める獅司=7月22日、ドルフィンズアリーナで


 獅司は栄美さんを相撲の先輩としても尊敬している。「ママは獅司より相撲が強いです。獅司は世界(ジュニア)3位です。ママは世界チャンピオン(団体)」と話してもいた。
 稽古場で指導をするのは師匠だが、栄美さんは今春から埼玉栄高で相撲を始めた長男・玄空(はるく)君と相撲を取ったりもする。
 学生時代は左四つからの出し投げを得意とした栄美さん。玄空君から出し投げを覚えたいと相談されると、畳の上などで実際に相撲を取りながら教えてあげてきた。
 「腕時計を見るようにこう手首をひねるんだよとか、まわしを取るときは小指と2本が大事だから、ここをちゃんと引っかけなさいとか」。夕食を作る合間に「教えて教えてって。バーッと机をどかせて。ほんと疲れます」。30番ぐらい取ることもある。
 玄空君との相撲は半年前まで「10番取ったら7番勝ってた。中に入ればつりでもなんでもいけるから」と栄美さんに分があったが、最近では「10番取ったら10番負けますね。こてんぱんです。倒せないですね。20番取ったら1番勝つぐらい。まわしつけたら分からないよって言ってます。そんなの負け惜しみだって言われましたけど」と玄空君の成長も温かく見守っている。
 部屋を継承する話がきたとき、「おかみさんは絶対にやりたくないって言っていたんです。子どもが2人いるのに、ほかの子どもたちの責任を持てるかどうか」と不安もあったが、今は明るい栄美さんらしく部屋をもり立てている。
 「人生の一番楽しい時期にここに来て、楽しくなかったなって思われるのは嫌ですから。楽しくやらないと続けられないと思っています。この子たちにどうにかいい思いをさせてあげたい。親元を離れて頑張ってますので。どうにか支えてあげられれば」
 獅司は玄空君を「ブラザー」と英語で呼び、長女とも兄妹のようにとても仲よし。栄美さんは7人の弟子とともに、今は9人のママとしてこれからも奮闘していく。
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