【北の富士コラム】若隆景と霧馬山。まるで昔の栃錦と若乃花を見ているようだ。これこそ大相撲である
2022年7月16日 05時00分
◇15日 大相撲名古屋場所6日目(ドルフィンズアリーナ)
本日はお休み。外は今日も雨。明けたと思った梅雨が今ごろやって来た感じだ。天気もジメジメしているが、土俵は大荒れで流れそうである。今場所はいったいどこに行ってしまうのだろうか。こうなったら「ケセラセラ」であります。
今、幕下上位の相撲を見ています。若い力士の懸命な相撲の方が幕内上位の相撲よりよほど面白い。これから十両の取組に入ります。
ちょうど北の若が土俵に上がりました。今日まで3勝2敗。対戦相手は千代栄。年は32歳の苦労人である。立ち合い、千代栄が思いきり頭で当たって突っ張ります。対する北の若は定位置で立ち、右から上手を取りに出る。立ち腰で千代栄にもろ差しになられて、攻められ棒立ち状態。そこを右からすくい投げを打たれてゴロリと転がってしまった。
いいところなしの完敗である。こんな相撲を取っているようでは将来はない。入門して3年。何の進歩も見られない。むしろ高校生のころの方が強かったと思う。先場所のけがが治りきっていないということだが、そんな言い訳は通用しない。けがはつき物だ。稽古不足に尽きる。
八角部屋には隠岐の海と北勝富士の関取がいるが、2人ともけがが多くて十分な稽古をつけてもらえないと聞いている。それでも本人にやる気があれば、いくらでもチャンスはあるものだ。要するにやる気がないと言われても仕方がない。
どんどん高校(埼玉栄)の後輩も入門してくる。琴ノ若や琴勝峰はすでに幕内上位で立派に頑張っているではないか。今のままだと今場所の勝ち越しも難しくなってくる。入門時に関係した一人としては残念至極である。十両風情に多くのページを使わせていただき申し訳ありません。今日の相撲の余りの悪さを見るに見かねてお許しください。どうせ幕内にも別段書きたいこともないのでちょうどよかった。
それと気になっていたのは昨日の高杉晋作の辞世の句。「おもしろきこともなき世をおもしろく」で終わっています。どうも気になるので調べると下の句は「住みなすものは心なりけり」。野村望東尼さんですね。知ったかぶりですいません。昔は覚えていたのにどんどん記憶をなくします。 「三千世界の鴉(からす)を殺し 主(ぬし)と朝寝がしてみたい」。この都々逸も晋作作品と聞いているが、どうもこれは諸説あるようです。相撲よりこんな話の方が私は楽しい。また能書きを言わせてください。それでは一番だけ、どうしても書きたい相撲がありました。
若隆景と霧馬山の相撲は実に素晴らしい攻防でした。体格はほとんど互角。決して今の力士の中にあって大きい方ではないが、稽古で鍛えた体はいかにも力強い。右と左のけんか四つ。激しい前さばきの応酬。霧馬山は左前みつ狙い。若隆景は左四つからおっつけ、頭をつけたい。霧馬山が左で前みつを取ると若隆景はおっつけから右で前まわしを引いて出し投げの連発。足を送ってなおも攻める霧馬山。目まぐるしいほど両者の動きは速い。
まるで昔の栃錦と若乃花の一戦を見ているようだ。これこそ大相撲である。何度でも見たいと思うほどである。最後は地力に一日の長がある若隆景が勝利を収めたが、今後も好敵手として名勝負を展開してほしいものだ。久しぶりにいい相撲を見た覚えである。
ところで御嶽海は明日も土俵に上がるのだろうか。私の見るところ出ても勝てません。情けない相撲を取るなら休場もやむを得ません。大関の地位とはそんなものです。それでは今、ルームサービスがきました。ハンバーグステーキを食べます。失礼。(元横綱)
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