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佐藤養殖場が直営「的矢かきテラス」開業 創業以来初の飲食店

2022年1月27日 05時00分 (1月27日 07時31分更新)
いかだの上に建つ「海上レストラン席」で「的矢かき」をアピールする浜地社長=志摩市磯部町で

いかだの上に建つ「海上レストラン席」で「的矢かき」をアピールする浜地社長=志摩市磯部町で

  • いかだの上に建つ「海上レストラン席」で「的矢かき」をアピールする浜地社長=志摩市磯部町で
  • 倉庫を大規模改装して仕上げた店内=志摩市磯部町で
  • 店の2階から望む的矢湾とカキ料理=志摩市磯部町で
 県の「三重ブランド」に認定されている「的矢かき」を育てる佐藤養殖場(志摩市磯部町)が二十六日、敷地内に飲食店舗「的矢かきテラス」を開いた。一九二五(大正十四)年の創業以降初の直営飲食店で、生がきや缶で蒸し焼きにする「カンカン焼き」などを提供。新型コロナウイルス感染拡大の影響から再生を図る新事業に位置付けられている。
 いかだの上に建てられた「海上レストラン席」。客室に入ると海を歩いているような感覚になり、養殖いかだが点在する的矢湾内の景色が広がる。「的矢かきを育んだ海、いかだ、人を眺めながら最高の鮮度で食べてもらいたい」と五代目社長の浜地大規さん(41)。夏は魚介類のバーベキューも楽しめる。
 陸にある二階建ての店舗は、倉庫として使っていた建物を大規模改装した。壁には昭和初期に撮影された養殖場周辺の写真を飾り、老舗の雰囲気を感じさせる。感染拡大防止のため開放的なテラス席も設置し、店全体の延べ床面積は約三百二十平方メートル、総席数は百十八。国の事業再構築補助金も活用しながら約八千万円を投じて完成させた。
 佐藤養殖場は二〇一九年に業界全体で見舞われたカキのへい死や新型コロナによる受注減で苦境に立っていた。昨年七月、湾内の別のカキ養殖会社役員として専門的な知見を持つ浜地さんらが株式譲渡を受けて経営陣が刷新された。生産効率アップと販売戦略強化がテーマとなり、主要な取り組みが今回の飲食事業。「五〜十年後を見すえ、産地でカキを食べてもらう業態に参入すべきだ」と浜地さんは考えた。
 養殖場のカキは全国のレストランやホテルなどに直売されるが、約四百軒の顧客のうち八割ほどがまん延防止等重点措置の適用地域にあるという。今後の感染状況の推移は不透明だか、新たに飲食事業が確立すれば経営の軸足が増え、社業の安定につながる。アルバイトも含め二十人の社員が飲食部門に新規採用され、開業に向けて準備を進めてきた。
 計画していたオープニングセレモニーは中止し、規模を縮小した船出となった。浜地さんは「伊勢志摩の名所の一翼となり、たくさんの人に的矢に来てもらいたい。会社としては生き残りをかけて闘うしかない」と決意している。
 「的矢かきテラス」の所在地は志摩市磯部町的矢八八九。三月末までは無休。営業時間は午前十時〜午後三時。同二時半ラストオーダー。主なメニューと価格は生がき(的矢かき)三個セット(九百九十円)、的矢かきのカンカン焼き六個入り(千九百八十円)、カキフライ定食(千七百八十円)、カキグラタン(三百九十円)など。(問)同店=090(7368)4887
 (阿部竹虎)

 佐藤養殖場 創業者は佐藤忠勇さん。従来技術は養殖に2〜3年かかっていたが、1年で十分な大きさに育てる垂下式養殖法を1928(昭和3)年に確立。紫外線殺菌した海水にカキを20時間浸して滅菌する画期的な浄化方法を53年に完成させるなど、業界で先進的な役割を果たした。三重ブランドの「的矢かき」は佐藤養殖場が育てるカキのみを指し、2001年度に認定を受けた。

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