中日1位・高橋宏斗の原点は兄の影響で始めたリビングでの野球遊び【新時代の旗手2021】
2020年12月22日 06時00分
高橋家のリビングはLEDのシーリングライトに照らされている。以前は電球がぶら下がっているタイプだった。その電球が、何度も割られてしまったのだ。
犯人は4歳だった高橋宏斗。5歳上の兄・伶介さんが、新聞紙をセロハンテープで丸めたボールを投じ、宏斗がプラスチックのバットで打つ。フルスイングでかっ飛ばすから、照明を変えた。
兄弟は家の中での野球遊びに夢中だった。負けた方がパンを買いに行くというルールもあった。ほとんど負けていたという宏斗は、お金こそ兄が出してくれたものの、歩いて5分のパン屋さんまでいつも買いに行っていたという。
「外へ行く時間すらもったいなかった。暇さえあればやっていた」。宏斗はリビングでの野球に夢中だった。状況やカウントまで設定する徹底ぶりで「カーブ」、「ナックル」、「ツーシーム」と変化球を宣言しながら投げ、はしゃいだ。
その姿に母・尚美さん(53)は「何がそんなに楽しいのか分からない程に熱中していた」と懐かしむ。小学校入学まで続いた野球遊びこそが高橋宏の原点。尚美さんによると「野球は食べる、寝るのと同じぐらい当たり前のものだったんじゃないかな」。習い事の英語と水泳は数年であっさりとやめてしまったが「野球をやめたいと言ったことはなかった」と振り返った。
本格的に野球を始めたのは、愛知県尾張旭市の三郷小2年の時に「三郷ファイターズ」に入団してから。そして小学4年の時、兄のまぶしい姿に強く影響を受けた。
「豊田シニア」に所属していた兄は、中学3年の時に全国大会で優勝。大会MVPにも輝き、神奈川県の慶応高への進学も決める。家族とともに神宮球場で観戦した高橋宏は「かっこいいな。自分もあそこにいきたい」と兄へのあこがれが一層強くなった。
中学3年になり、同じく豊田シニアで全国大会に出場するも、リリーフで登板した3回戦でサヨナラ打を打たれた。投手としては控えだった高橋宏は、全国の舞台で活躍して、高校のスカウトにアピールしたいと考えていたこともあり、悔しさがより募った。
「あまり声がかからなかった」という高橋宏に目をつけ続けていたのが中京大中京高の高橋源一郎監督(41)。だが、「入学当時は特別な存在ではなかったですよね」。ドラフト1位指名を勝ち取る存在にまでなれたのは、中学に続き、高校でも悔しい負けを喫したからだった。
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