飛球を真っすぐ追えなかった中日ビシエド…彼を守備率9割9分9厘まで導いた“隣にいた超人”の美技と金言
2020年10月15日 11時04分
渋谷真コラム・龍の背に乗って
◇14日 中日3-0阪神(ナゴヤドーム)
外国人の守備力が勝敗を分けた。阪神は左翼・サンズの記録には残らない動きの悪さが、ことごとく失点に結び付き、中日は一塁・ビシエドの美技がエース・大野雄をもり立てた。
5回2死。小幡の一塁線へのゴロに飛び付き、捕った。抜けていれば長打は確実。ピンチを未然に防ぎ、ベンチは総出で出迎えた。ビシエドの好守はその前にもあった。4回1死。サンズの飛球が一塁側ファウルエリアの奥深くに上がった。30メートル以上追っただろうか。背走したまま追いつき、ミットに収めた。距離は長いが、プロなら捕るでしょ。そう思うだろうが、僕はビシエドが捕れなかった時代を知っている。来日したのが2016年。彼は飛球を真っすぐ追えなかった。なぜか蛇行し、落下地点とはズレていた。
3年目まではそれでもよかった。超人が隣にいたからだ。「オレが全部捕るから」。そう言ってくれた頼もしい二塁手は2年前に引退した。そこからは広大な本拠地のファウルエリアを、シェアしなければいけなくなった。どうすれば真っすぐ打球を追えるのか。コツを教えてくれたのも、その超人だった。
「タンケ、帽子のつばを目印にするんだ。そこからボールが消えるようなら、曲がっている。つばとボールで方角を確かめながら追うんだよ」
荒木内野守備コーチである。サンズの飛球も、その教えを守って追ったはずだ。
「勝てばチームが2位に浮上する大事な試合。大野雄もすばらしい投球をしていたので、守備で貢献できてよかったよ。打つだけでなく、守備もチームが勝つには大事なこと。打つときは打つことを、守備のときには守備のことを考えて、しっかり切り替えているよ」
守備もうまい外国人は他にもいたが、彼ほど上達した選手を僕は知らない。内野手が思いきった送球で勝負できるのも、ビシエドが捕ってくれるからだ。今季の守備率は9割9分9厘。ゴールデングラブ賞にふさわしい守備力だ。
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