奇跡の追い上げで2年ぶりにV5を果たしナインから胴上げをされる広島・阿南監督(1986年10月12日)

 長島の満塁ホームランで始まった燃える赤ヘルの猛攻。神宮の森にこだまする歓声―。プロ野球セ・リーグは12日、広島東洋カープが神宮球場でヤクルトを8―3で下し、2年ぶり5度目の優勝を飾った。ウイニングボールを達川のミットが吸い込んだのが午後9時26分。スタンドを揺るがせ続けた歓声が一段と大きくなる中で、就任1年目の阿南監督が胴上げされ、背番号75がカクテル光線に映えた。

 地元での快勝を甲子園へつないで7連勝。マジック1で乗り込んだ広島はこの夜、午後6時30分からヤクルトと対戦した。エース北別府を立てて気力の勝負に出た広島は、初回から尾花に襲いかかった。高橋、山崎が連打、1死満塁で登場した長島は右へ満塁ホームランのミラクルアーチ。三回には小早川、山本浩の連打に続き、またも長島の快打、さらに正田の適時打で3点を加え、序盤で勝負を決め、北別府がリーグ最多の18勝。最後はリリーフエース津田が締めくくった。

 これで広島は73勝45敗11分けとなり、残り1試合に敗れても勝率6割1分3厘で2位巨人の6割1分を上回る。8月末、残り33試合で巨人に5・5差と大きく引き離されながら、じりじりと追い上げて逆転。75勝の巨人に競り勝った奇跡の優勝といえよう。

 監督、主力選手の胴上げを終え宿舎へ引き揚げたナインは、ここで祝勝会。ベテランも若手も溶け込んでV感激に酔った。

 広島は13日、同球場でのヤクルト戦で公式戦全日程を終える。18日から広島市民球場を第1戦に始まる日本シリーズで、パ・リーグ優勝の西武ライオンズと日本一をかけて戦う。(1986年10月13日付中国新聞朝刊)