2021年4月にはナスダックに上場した仮想通貨大手取引所・コインベースが日本に上陸した。
画像:REUTERS/Shannon Stapleton
アメリカ・サンフランシスコ発の大手仮想通貨取引所「コインベース(Coinbase)」は8月19日、日本で仮想通貨(暗号資産)取引サービスを開始した。
同社は2012年に創業。すでに100カ国以上で展開しており、6800万のユーザーアカウントを抱えるという。
2021年4月にはナスダック市場に上場、初日の時価総額が1120億ドル(約12兆3000億円)をつけたことで大きな話題を集めた。
一方で、日本市場でどんなサービスを展開していくかについては「具体的な施策としてはなかなかお伝えしづらい」(コインベース日本法人社長、北澤直氏)と、先行きの見えない部分も多い。
「仮想通貨界の黒船」コインベースは、日本市場にどんなインパクトをもたらすのか?アメリカでの動きを概観してみよう。
1. アメリカでの取り扱い通貨数は83
アプリから取り扱い通貨の「全銘柄」を選ぶと、仮想通貨がずらりと並ぶ。
撮影:西山里緒
日本では5つの取り扱い通貨(ビットコイン、イーサリアム、ライトコイン、ビットコインキャッシュ、ステラー)からスタートするコインベースだが、すでにアメリカでは取り扱い通貨数は83にのぼっている(8月10日付のIR資料より)。預かり総資産額は1800億ドル(約19兆7500億円)にのぼる。
2. Apple PayやGoogle Payとも連携
日本進出時は、三菱東京UFJ銀行とパートナーシップを組み、クイック入金機能を備える。
画像:記者会見資料より
アメリカではすでに、購入時にApple PayやGoogle Payを決済手段として選べるサービスも始まっている(Google Payは2021年秋に実装とのこと)。
日本進出においては、サービス開始当初から三菱UFJ銀行と連携し、同行のオンラインバンキングから数クリックで日本円で入金できる「クイック入金」機能を備える。
現状、三菱UFJ銀行の口座を持っていないとコインベースのサービスは使えない状況だが、「グローバルで享受するサービスを日本でも限りなく提供したい」(北澤氏)とした。
3. NFT最大手プラットフォームなどに投資
NFT(非代替性トークン)マーケットプレイス最大手として知られる「オープンシー(OpenSea)」。
画像:OpenSea公式サイト
コインベースは2018年から子会社「Coinbase Ventures」を立ち上げ、有力な仮想通貨関連企業に投資している。
投資ポートフォリオには、大手NFTマーケットプレイス「オープンシー(OpenSea)」や、NBAのNFTトレカ売買サービスで大きな注目を集めた「ダッパーラボ(Dapper Labs)」、仮想通貨レンディング(貸し借り)サービスを提供してDeFi(分散型金融)の大手となった「コンパウンド(Compound)」なども名を連ねている。
また、後述の「コインベース・アーン」という機能を通じて、投資している仮想通貨プロジェクトに対しての学びの機会も提供している。
4. 教育サービス「コインベース・アーン」
仮想通貨を「学ぶ」ことで少額を得られる機能も。
撮影:西山里緒
仮想通貨の仕組みをチュートリアル動画で学ぶことで、少額の報酬を得ることができる「コインベース・アーン(earn)」。これにより、ユーザーはさまざまな仮想通貨プロジェクトの概要について触れることができるだけでなく、少額を保有できる。
日本版にもすでにこのサービスは実装されている。取り扱い通貨のひとつである「ステラー(XLM)」という仮想通貨の動画を見た後にクイズに答えることで、合計で10ドル分のステラーを獲得できる。
5. Shopifyとも連携した「コインベース・コマース」
本国アメリカでは、EC大手・ショッピファイ(Shopify)などとも連携し、ショッピファイ加盟店が仮想通貨で代金を受け取れる「コインベース・コマース」というサービスを展開している。日本では未実装。
日本進出にあたり、北澤氏は「小規模コマースの分野でもサービスを計画している」と話した。
(文・写真、西山里緒)