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米有料テレビ事業の行方左右-ディズニーがチャーターと対立

  • ケーブル・衛星テレビ、過去5年で加入者2500万人失う-チャーター
  • チャーターは「岐路」に立たされている-ウィンフリーCEO

世界最大のエンターテインメント企業、米ウォルト・ディズニーとケーブルテレビ(CATV)運営で米2位のチャーター・コミュニケーションズが対立している。

  「スペクトラム」ブランドでテレビやブロードバンド、ワイヤレスサービスを展開しているチャーターは、スポーツ専門局ESPNなどディズニー系チャンネルの料金引き上げをもはや受け入れることができないと表明。

  これを受け、ディズニーはESPNを含む傘下のチャンネルをスペクトラムから引き揚げた。チャーターと視聴契約している1470万人は恐らく、米プロフットボールNFLのこれから始まるシーズンなど人気のスポーツプログラムを楽しむことができなくなる。

  ニューヨークやロサンゼルスのような大都市のスペクトラム契約者の多くが、ESPNやABCのようなディズニー系チャンネルを見ることができなくなったことに先週末気付いた。

ストリーミングサービス

  ディズニーとチャーターの対立は、有料テレビ事業の将来を左右すると言っても過言ではない。チャーターによれば、ケーブル・衛星テレビ事業者は過去5年間で2500万人の加入者を失った。

  CATVでコムキャストに次ぐ規模のチャーターは、スポーツなど幾つかのチャンネルを視聴しない場合でも、そうしたプログラムを含めた料金を支払うことを顧客に義務付けている業界の標準的な契約体系を変えたいと望んでいる。 

     ディズニーは今、月額70ドル(約1万円)で「Hulu+ Live TV」に加入するよう促す広告をソーシャルメディアやウェブサイト、テレビチャンネルで展開している。CATV契約なしでESPNやABCなどの人気チャンネルが視聴できるというのがうたい文句だ。

   一方、チャーターは「fuboTV」への加入を顧客に勧めている。ディズニーが切り離したチャンネルを含め180チャンネルを月額75ドルから視聴できるストリーミングサービスだ。

Tough Times for Pay TV

Nearly all major pay-TV providers lost customers last quarter

Source: Leichtman Research Group

 

  チャーターはディズニーを非難。ディズニーは「顧客が望まないチャンネルに課金するような番組パッケージをプログラム」し、顧客の選択肢を広げようとするチャーターの「能力を制限しようとしている」と主張している。

  ディズニーはチャーターから受け取る契約料年約22億ドル(世帯当たり月額約12.50ドル)の増額を求めているが、同社と争うことはディズニーにとっても契約料や広告収入を含め最大で年40億ドルの売上高をリスクにさらすことになる。

  HuluやFuboのようなサービスにとっては契約者増につながる可能性がある。HuluやFuboはCATVに代わり得るとされ、かつてメディア業界の成長ビジネスと見なされていた一握りのプレーヤーだった。

  衛星放送サービスの米ディッシュ・ネットワークは2015年、ストリーミングサービス「Sling TV」を投入。衛星放送やCATVの代替として提供されたSling TVは、インターネット経由でライブチャンネルのパッケージを提供。ケーブルボックスや衛星放送アンテナが不要なため、契約や解約が容易なことが売りだった。

  だが、こうしたストリーミング配信サービスも急成長後、そのほとんどが従来の有料テレビ事業者と同じように加入者減に苦しんでいる。前四半期に顧客を増やしたのは「ユーチューブTV」だけだ。

「経済的無関心」

  テレビの月額料金上昇に加え、消費者が低価格のストリーミング配信という選択肢を得たことで、CATV業界は15-22年に約2500万人の顧客を失った。ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)によると、今年末までにさらに670万人減少し、7200万人強に落ち込むと予想されている。

  こうした加入者ベースの縮小を受け、ディズニーのボブ・アイガー最高経営責任者(CEO)はCATVや放送局を必要としない未来を探っている。

  同CEOはアイダホ州サンバレーでの会議で、従来型のテレビ放送を経由せずESPNをオンラインで消費者に直接売り込む可能性について大まかに説明。ESPN以外のディズニーの放送局やケーブルネットワークはもはや中核事業ではないかもしれないとの認識を示した。

  ABCやESPNのような人気チャンネルがなくなれば、チャーターはテレビ加入者の急激な減少に直面するだろう。BIのアナリスト、ジータ・ランガナサン氏によれば、チャーターは収入約27億ドルに相当する約200万人の加入者を失う可能性がある。

  チャーターを含むCATV会社とディズニーのような番組制作会社との間の緊張は、10年余り前から高まっていた。

  チャーターのクリス・ウィンフリーCEOは今月1日の投資家向け電話会議で、同社は「岐路」に立たされていると強調。テレビ事業は「経済的無関心」の域に達しており、同社はケーブルの比重を下げ、ブロードバンドとモバイルサービスにもっと力を注ぐ用意があるとこれまでで最も強く示唆した。

原題:Disney Lures Sports Fans to Hulu+ With ESPN Pulled From CharterCharter Takes on Disney in Fight Over Cable TV’s Future (3)(抜粋)

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