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ファミマTOB「安過ぎた」と認定、適正価格より300円-地裁

更新日時
  • 申し立てたRMBキャピタルなど「物言う株主」の主張認められる
  • 公正価格は2600円と23日に判断、当事者は2週間以内に即時抗告可能

伊藤忠商事が2020年に実施した子会社ファミリーマートに対する株式公開買い付け(TOB)に関連して、米アクティビストのRMBキャピタルなどがTOB価格は「安過ぎる」として公正価格の決定を求めた裁判で、東京地方裁判所が、適正水準より300円安かったとの判断を示していたことが31日までに分かった。

  伊藤忠は20年7月から8月にかけて、50.1%を保有していた子会社のファミマに対し1株当たり2300円でTOBを実施し、成立。その後、株式併合手続きを経てファミマは上場廃止となった。RMBなど複数の元ファミマ株主は応募せず、同額での強制買い取りに応じたが、その価格が安過ぎると主張していた。

  少数株主らが強い不満を持った主な理由は、ファミマが設置した特別委員会による主な価格算定結果(1株当たり2472-3040円)の下限をTOB価格が下回っていたため。会社はTOBには賛同しつつ、株主への応募推奨はしないという声明を発表していた。

  ブルームバーグが入手した決定文によると、東京地裁は23日、公正価格を実際のTOB価格より13%高い2600円と決定した。理由として特別委員会が2300円は妥当な価格より安いと考えていた様子なのに、妥当でないと表現すればファミマが賛同意見を表明できなかった可能性があるためだと指摘。TOB価格は多数株主と少数株主の利害が適切に調整された結果とはいい難いと結論付けた。

「ごり押しTOB抑制に効果」と元株主

  RMBの細水政和ポートフォリオマネジャーはブルームバーグの取材に対し、東京地裁の決定内容を認め、「特別委が少数株主の利益を守る存在として機能していなかったという主張が全面的に認められた意義は大きい。今後、親会社によるごり押しTOBを抑制する効果があると思う」と述べた。

  決定に不服があれば、当事者は2週間以内に即時抗告を行うことができる。決定が確定した場合、TOB自体は成立しているため、ファミマ側が裁判を申し立てた元株主に差額を支払う。申し立てなかった元株主は支払いを受けられない。

  ファミマの広報担当者は「係争中につき、回答は差し控える」とコメントした。伊藤忠にコメントを求めたが、今のところ回答は得られていない。

東芝など今後の案件に影響も

  今回の東京地裁の決定は、今後のTOBに影響を与える可能性もある。複数のアクティビストを株主に持つ東芝は、官民ファンドの日本産業パートナーズ(JIP)が株式の非公開化を目指して実施するTOBを受け入れることを決めた。1株4620円で7月後半に開始される見通し。

  東芝はTOBに賛同しているが、現時点で応募を推奨するか否かの意見表明はしておらず、TOB開始までに方針を決めるとしている。ファミマのケースと同様、JIPの提案しているTOB価格は東芝が設置した特別委員会の主な価格算定結果(1株当たり4661円ー7333円)の下限を下回っている。

  専門家の間では東芝株主が今後、TOB価格の引き上げを要求してくる可能性があるとの声も聞かれる。

  経済産業省が19年に改訂したM&A(企業の合併・買収)指針によると、経営陣による自社買収(MBO)や親会社による子会社の買収は、利益相反の問題があるため取引の是非や取引条件の妥当性、手続きの公正性について検討する特別委員会の設置が望ましいと指摘。特別委は中立ではなくむしろ少数株主や買収される企業の側に立って判断することを促している。

  コーポレートガバナンス(企業統治)専門家のニコラス・ベネシュ氏は、そもそも日本の現行制度が100%未満の「『部分的な』公開買い付けを認めているのが問題だ」と指摘。結果的に多くの親子上場が許され、また買収者が会社を支配する代償としての「コントロール・プレミアム」を支払うことなく実質的に支配権を取得する方法が多すぎるとし、制度改革の必要性を説いた。

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(第11、12段落に専門家のコメントなどを追加しました。更新前の記事は副標題の一部や第3段落の2文目の「特別委員会」を「会社」に訂正済みです)
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