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生涯のベストワンは「スターウォーズ」-ムービーテレビ諸橋社長

「空前絶後だ」--。13日にジャスダ ック(店頭)市場に上場したムービーテレビジョンの諸橋健一社長はこのほど、 ブルームバーグ・ニュースのインタビューで、自分の生涯のベストワン映画作 品である「スターウォーズ」(ジョージ・ルーカス監督)をこう表現した。

メジャー4社と独占契約

ムービーテレビジョンはハリウッド映画の放映権をテレビ局に販売するの が主力。洋画の日本語版制作なども手掛ける。現在、7大メジャーのうち、20 世紀フォックス、MGM、パラマウント、ユニバーサルの4社と長期的独占契 約を結んでいる。

「ハリウッドは世界の映像制作の総本山であり、世界中の資金や才能、技 術などが集積している」との考えから同社ではメジャーの作品を取り扱うこと を方針としている。販売先は民放キー局のほか、NHKや地方局、BS(放送 衛星)デジタル放送各社、CS(通信衛星)放送各社と幅広い。

放送の規制緩和が行われ、テレビの多チャンネル化が進みつつある。その ため放送コンテンツ(情報の内容)が大幅に不足するとの見方が業界では支配 的だ。ムービーテレビジョンではハリウッドから高品質の番組を大量に供給す ることで、放送各局の需要に応えることができるという。

小学生時代からの映画ファン

諸橋氏は1942年生まれ。小中学生のころから映画館に通い詰めた映画ファ ンだ。日曜日には朝から映画館に行き、3本立てを2ラウンド見たことも多く、 「2回見るとさすがに酸欠のような状態になり、頭が痛くなった」という。

65年に日本大学芸術学部放送学科を卒業後、字幕翻訳会社の東京放映に入 社。東京放映は「キングコング」や「市民ケーン」などの代表作があるRKO 映画を扱っており、諸橋氏は数々の名作に触れた。その後、67年にニュージャ パンフィルムに移り、当初ヨーロッパ映画を手掛けていたが、途中で米20世紀 フォックスの作品を扱い始めた。73年、ビデオフィルムからのスカウトを受け 同社に入社、20世紀フォックス作品を本格的に手掛けるようになる。

ここで諸橋氏に転機が訪れる。ムービーテレビジョンを設立するきっかけ となった飛鳥井雅昭氏(現非常勤取締役)に米国で出会ったのだった。ある日、 トラブル処理のため、諸橋氏は渡米、トラブル処理の交渉相手が飛鳥井氏だっ た。「交渉相手と結びついたわけだから、とんでもないこととも言えるが、それ 以来、彼とはずっと一緒にいる」と諸橋氏。ハリウッドに広く人脈を持った飛 鳥井氏と日本のマーケットに精通している諸橋氏は、お互いに不足するものを 持っているところに惹かれ、1分で意気投合したという。

諸橋氏は飛鳥井氏と84年、ムービーテレビジョンを設立。諸橋氏がテレビ 放映権販売、飛鳥井氏が放映権の取得を担当してきた。最初は20世紀フォック ス作品だけを扱ったが、次第に人脈を広げていった。

当時、テレビ放送業界は地上波キー局主導の緩やかな成長が続いていた。 だが、BS放送、CS放送の開始や地上波のデジタル化など、放送業界にも激 変の波が訪れる。放送業界で番組が不足するのを見越した諸橋氏は20世紀フォ ックス以外のメジャーとの独占契約を締結するために動き出した。交渉はスム ーズに進み、契約資金を確保するために、諸橋氏は96年に株式公開を決意する。

ところが、契約交渉は順調に進む一方、株式公開の方は並大抵のことでは なかった。次々と契約が決まり、契約のための資金が必要だが、肝心の株式上 場が遅れていく。そこで諸橋氏は銀行からの借り入れやベンチャーキャピタル からの投資の受け入れで資金を集めなければならなかった。

ついに上場

2001年3月期は会計上約2億円の為替差損を計上、経常利益は前期比69% 減の1億6000万円となった。「為替差損は会計上の要因であり、実態を表して いないが、形式的には減益となったため公開がさらに遅れた」と諸橋氏。

だが、ついに12日、同社はジャスダック(店頭)上場にこぎ着けることが できた。上場に伴う公募増資で得られる資金は、7大メジャーのうち現在長期 独占契約を結んでいないソニー・ピクチャーズ、ディズニー、タイム・ワーナ ーのいずれかに対しての契約資金に充てたいという。

2002年3月期は売上高が前期比36.2%増の74億円、経常利益が同4.2倍 の6億円の見通し。ユニバーサルからのテレビ放映権獲得が収益に貢献する。

メジャー各社は映画だけでなく、テレビシリーズも大量に制作している。 同社では今後テレビシリーズを中心に配給する計画で、映画「タイタニック」 の監督ジェームズ・キャメロンがプロデュースするテレビシリーズ「ダークエ ンジェル」のテレビ放映も現在交渉中という。

今後は、一部の大作については、テレビ放映権だけでなく、劇場権やビデ オ権を含む全権利の獲得も実施していく。

諸橋氏は株主還元策について、「世界最高の作品を扱っているので、会社は 間違いなく発展する。それが時価総額の上昇につながり、利益も出せると思う。 安定的に配当していきたい」との自信をみせた。

●諸橋健一(もろはし・けんいち):1942年生まれ。65年日大芸卒、東京放映 入社。67年ニュージャパンフィルム入社。73年ビデオフィルム入社。84年ム ービーテレビジョン設立、社長就任(現任)。

ムービーテレビの株価は前日比1万2000円(1.97%)高の62万円(午前 9時39分現在)。

東京 矢沢 利弘 Toshihiro Yazawa TM --* (03)3201-8982 tyazawa@bloomberg.net

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