【解散ラストライヴ】限られた時間の中、MR.BIGというバンドの全てを!

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限られた時間の中、MR.BIGというバンドの全てを!

淡々としながらも不思議と濃密な空気に包まれて…


2002年1月14日@ ZEPP TOKYO

1.SE~Lost In America 2.Daddy,Brother,Lover,Little Boy(The Electric Drill Song)
3.Shine
4.The Price You Gatta Pay
5.Superfantastic
6.Alive And Kickin'
7.Suffocation~Richie's Guitar Solo
8.Static
9.Where Are They Now?
10.Take Cover
11.Green-Tinted Sixties Mind
12.Wild World
13.Pat's Drums Solo(Inc.Let It Be)~Dancin' With My Devils
14.To Be With You
15.Electrified
16.Billy's Bass Solo~Addicted To That Rush
<Encore1>
17.Colorado Bulldog
18.Just Take My Heart
19.30 Days In A Hole
<Encore 2>
20.Blame It On My Youth
21.Mr. Big


1st ALBUM

『Actual Size』

イーストウエスト・ジャパンAMCY-7300
2001年08月08日発売 2,625 (tax in)

1Lost In America
2Wake Up
3Shine
4Arrow
5Mary Goes Round
6Suffocation
7One World Away
8I Don't Want To Be Happy
9Crawl Over Me
10Cheap Little Thrill
11How Did I Give Myself Away
12Nothing Like It In The World
13Deep Dark Secret



▲エリック・マーティン(Vo)
昨年、バンド創設者が解雇される…という異常事態により、約12年間の歴史に幕を下ろしたMR.BIGが、ケジメの“解散ツアー”を行なうために日本の地を踏んだ。

メンバー間の気持ちの行き違いがいつの間にか深い溝を生み、結果として、ファンには信じたくないような分裂劇に発展したことについては、もう改めて問うまい。ただ、泥仕合に発展する寸前で双方が思いとどまり、最後に、思い出の日本で一緒にツアーを行なうことを決心してくれたのは、多くのファンにとって実に喜ばしいことだったろう。

開演の予定時刻を少し過ぎた頃、幕が落ちると、代表曲のフレーズを逆回転でつなぎ合わせたようなSEが響き渡り、リッチー・コッツェンのギター・リフからショウは突然始まった。


▲リッチー・コッツェン(G)
1曲目は、ニュー・アルバム『アクチュアル・サイズ』(同時にラスト・アルバムにもなってしまった…)のオープニング曲「Lost In America」だ。ステージ上には、中央にシンガーのエリック・マーティンが立ち、向かってその右側にリッチー、そして、後方にはドラマーのパット・トーピーが…って、ベーシストがいない? 本来いるべきステージ下手のコーラス・マイクの前は空席になっている…かと思うと、ベースのビリー・シーンは、ひとりだけドラム・セットの左右に設けられた“お立ち台”の上にいた。何とも思わせぶりなスタートだが、深読みし過ぎるのはやめておこう。

演奏は意外にパワフル。2曲目に「Daddy,Brother,Lover,Little Boy」を持ってきたのも正解だろう。エリックが力強くシャウトすると、観客のノリも一段と大きくなる。残念ながら、ソロ・パートの“ドリル奏法”はなかったが、初期のテクニカルなレパートリーも難なくコナすリッチーのプレイは、相変わらず全く危な気などない。


▲パット・トーピー(Dr)
3曲目は、『アクチュアル~』からのナンバーでTVアニメのエンディング・テーマにもなっている「Shine」。…しかし、この時、妙にベースの音が大きいことにふと気がついた。これは、…明らかにヴォーカルや他楽器とのバランスを気にしていない音量だ。しかも、ヴォーカル・パートのバックであろうと、当のビリーはおかまいなしにあの独特の太いトーンで自由にブンブン弾きまくっている。


▲ビリー・シーン(B)
エリックは、特に気にならないのか、終始マイ・ペースを保ちながら気持ちよさげに歌っているものの、次第にパットのドラミングには力が入っていく。そして、いつしか彼等の演奏は、リッチーの安定感抜群のギター・ワークも含め、“バトル”という言葉を使いたくなるような気迫に満ちたものへと…。

勿論、「Wild World」や「To Be With You」、「Just Take My Heart」といったバラードでは音量も抑え気味で、観客にコーラスを歌わせるホノボノした場面もしばしば見られた。だが、ハード&ヘヴィなロック・チューンでは、インプロヴィゼーションも含む激しいインタープレイがガッツンガッツン繰り広げられたのだ。

特に、まだ序盤の「Suffocation」や、本編最後にプレイされた「Addicted To That Rush」での、アドリブ満載の凄まじい楽器隊のアンサンブルには、思わず目が釘付けになってしまったという人も多かったに違いない。そう──この“バトル”には、MR. BIGが12年前にスタートした当初の“テクニカルなプレイヤーの集合体”としてのスーパー・バンド的側面が、改めて明確に示されていたのである。つまり、それぞれの卓越したテクニックの開放を、バンドの創設者であるビリー自らが、今だからこそ、率先して引き出してくれたのではなかったか。

実際、プレイする4人の側からは“これが最後のツアー”というしんみりした空気は感じられなかった。エリックもMCを殆どやらなかったし、この1月14日のZEPP TOKYO公演に関しては、解散に向けての「さよなら発言」もハッキリとはされることなく、とにかく、限られた時間の中で少しでも多くの曲を演奏し、MR.BIGというバンドの全てを見せようという意思が伝わってきたように思う(テクニックをバリバリ見せるなら、「Shy Boy」なんかも是非プレイして欲しかったが、キリがないのでやめておこう)。

不仲説が実しやかに囁かれていたエリックとビリーも、頻繁に絡みはしなかったものの、「The Price You Gatta Pay」の中間部で、ビリーがハーモニカのソロを聴かす間、その後ろに回ったエリックがベースを弾くというコンビネーションもちゃんとあったし、決して、終始お互いに背を向けていた…なんてことはなかったのでご安心を。

アンコールの最後を締めくくったのは、バンド名の由来にもなったフリーのブルージーなナンバー「Mr. Big」だった。

フロントの3人がステージ前やモニター・スピーカーに座ったまま始まったこの曲を聴いて、ファンもようやく「これが最後」という実感に包まれたのではないだろうか。ツアー開始前には、オリジナル・ギタリストのポール・ギルバートが飛び入りするのでは…といった憶測も流れた(レーサー・エックスの来日公演で実際にポールは日本にいた!)が、結果的には、それもなくて良かったかもしれない。

解散が決まった中でのMR. BIGの“フェアウェル・ツアー”は、そうして、淡々としながらも不思議と濃密な空気に包まれ、2時間余は矢のように過ぎ去っていった─。

取材・文●奥村裕司/YuziOkumura

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