東日本と西日本の間でやり取りできる電気の量を増やすため、経済産業省は、東西で違う電気の周波数を変換する設備の建設を支援する方向で検討に入った。これまで設備の建設は電力会社任せだったが、建設費を国が補助するといった支援策を考え、増設を促す。
日本では、周波数が東日本で50ヘルツ、西日本で60ヘルツと違うため、周波数を変換しないと東西での電気のやり取りができない。周波数を変える設備の「変換所」は現在、東西の境にある東京電力と中部電力の2社の管内に計3カ所ある。
だが、変換できるのは計100万キロワットで、全国の発電能力の1%に満たない。昨夏は三つの変換所をフル稼働させて西日本から東日本へ電気を送り込んだが、東日本の電力不足を解消するには力不足だった。
このため、経産省は16日に大学教授ら専門家による研究会を新設し、変換所の増設や設備の増強を促す方策を話し合う。設備の建設費を国が補助したり、政府系金融機関を通して融資したりすることを検討する方針だ。具体策を5月ごろまでに基本計画としてまとめる。
東西の周波数の「壁」が低くなれば、大規模災害が起きたときの電力不足を補いやすくなる。
さらに経産省は、風力など再生可能エネルギーの普及にもつながる、と期待する。再生可能エネルギーは発電量が不安定なことが弱点だ。全国規模で大量の電気をやり取りできるようになれば、発電量が変動しても対応しやすくなる。
日常的に東西の電気のやり取りが増えれば、電力会社の「地域独占」にも風穴が開く。電力供給を受けている企業にとっては、今までよりも、料金が安い会社を選んで電気を買いやすくなり、電力会社間の競争が激しくなる。
このため、変換所をもつ東電など大手電力会社はこれまで、変換所の増設などには後ろ向きだった。政府は今後、電力会社を発電部門と送電部門に分ける「発送電分離」などの電力改革にも取り組む。送電部門は今までより幅広い地域に電気を流す役目を担うので、変換所に投資する意欲も生まれるとみられる。(中川透)
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〈電気の周波数〉 電気が1秒間に波打つ回数のこと。東日本にある北海道、東北、東京の3電力会社は50ヘルツで、それ以外の西日本各社は60ヘルツ。周波数が分かれている国は珍しい。明治時代に東京地区がドイツ製、大阪地区が米国製の発電機をそれぞれ選び、発電の方式が違うことから周波数が分かれた。違う周波数の電気を送り込むと送電網内の電気の流れが乱れ、停電などを起こすおそれがあるため、同じ周波数に変換する必要がある。