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村田監督インタビュー その1 |
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さる2月9日、第1話と第2話の先行上映イベントが開催された、2013年4月よりTV放送が開始される新番組『翠星のガルガンティア』。本作の監督を務める村田和也氏にインタビューを敢行。『翠星のガルガンティア』の見どころや、知られざる初期企画、作品に込められたテーマなど、多岐にわたるお話をうかがった。
③レドの戸惑いは、誰しもが直面する“壁”
――初期企画のコンセプトだった、「お仕事モノ」としての要素は残っているんですか?
物語が進むにつれて、レドはある決断を迫られます。自分がいた元の世界に簡単には戻れそうにない、ということがわかりはじめてくるんです。未開の惑星で生きていくことを余儀なくされてしまうんですね。そこで、船団の人たちとある種の契約関係を結び、自分の居場所を確保するわけです。その時に、現地で生きるために働く必要が生まれてくる。これまで宇宙でロボットに乗って戦うことしか知らなかった少年が、見知らぬ惑星でまったく体験したことのない“労働”の必要性に迫られるんです。今までは、上から命令された作戦行動をこなすだけでよかった兵士としてのレドが、兵士ではなくなり、仕事を自発的に選んでもいいという状態に置かれた時に、自分は何をやりたい人間なのか、という新たな模索をしていくことになる……そこから、彼の第二の人生が始まるんです。
――まるで、これから社会に出る学生のようですね。
そう、学生が進路を決めなければいけない時に、誰もが直面する壁なんです。これまでは大人たちに言われたとおり学校に通っているだけで日々が過ごせていたけれど、これからはそうではなく、自分でやることを決めていかなければいけない。それがハッキリしている人もいるでしょうが、大部分の人は漠然としていると思うんですよね。レドは、そうした大多数の学生さんに通じる気分を持っているんです。レドは兵士としては優秀なので、学校ならば「お前すごいな」って言われるような人ですが、それがポンと社会に出されてしまった時には、何においてもシロウトでしかない。すべてをイチから覚えていくしかないという中で、自分にできることを考え、あるいは他人とのつながりの中からそれを見つけていく。そうして、人としての幅の広さを獲得していく……。それが、この企画が本来持っていた一番大きな流れですね。
――ということは戦うだけの作品ではない?
ええ、そうです。とはいえ、レドにとって一番得意なのは、ロボットに乗って戦うことなので、根底にあるそのスキルを拠りどころとして、この世界において彼が提供しうる力とは何なのか、ということを常に試行錯誤していくことになります。自分がすでに持っているものと、船団での生活で新たに得たものを融合させながら、自分の生きる道を見出していくんですね。
一方、船団の人たちもレドという異分子が自分たちの社会に入り込んでくることで、自分たちの社会のあり方と、レドが暮らしていた社会との違いを認識させられることにもなります。相互に新しい発見が生まれるわけです。お互いに、新たな人類のあり方を見出していく。
④よきパートナーとしてのロボット・チェインバー
――かつて1980年代後半から1990年代頃にかけて、しゃべるロボットが多く登場していた時代がありました。本作に登場するチェインバーも、しゃべるロボットとして、レドの相棒のように描かれており、なんだか懐かしさを覚えるのですが、なぜ今しゃべるロボットを再び作品に登場させようと考えられたのでしょうか?
なぜ今か、という時代的背景については分析できないんですが(笑)、レドという未熟な少年が、新たな何かを得ていく時に、よきパートナーであってほしい、という思いがあったんです。であれば、それは人間の言葉をしゃべってほしかったし、人間的思考を持っているかのように思わせる存在であってほしかった。それが、ロボットが言葉をしゃべり、自律行動ができることの意味です。
チェインバーは二面性を持っているんです。ひとつはレドという少年を育てあげる――戦いの際にどういう行動をとるべきなのか、状況を突破するためにどんな選択肢があるのかを指導していくという、先生やコーチとしての役割です。そして、状況と選択肢が提示された時に、レドが下した判断に対して、それを確実に遂行するという、忠実な部下としての役割がもうひとつ。パイロットの意思決定の前段階と後処理とを同時に担う存在なんです。
ただ、物語のなかでレドも成長していきますので、レドとチェインバーの関係性自体も変化していきます。チェインバーがいなければ何もできない状態から、レド自身にも新たな世界に対し、積極的に関わっていきたいという欲求が生まれてくるんです。
――本作は「昨今多く見られるスタイルのロボットアニメではない」ともうかがっていますが、その真意とは?
チェインバーはもともと戦闘ロボとして開発されているので、兵器としての高い性能を持っているんですが、そのことを全面に押し出したいわけではありません。本作はあくまでレドの成長物語として、レドとチェインバーの、生徒と教師であったり、上司と部下であったり、友人であったり……という関係性の変化を描くことになります。毎回敵が現れて、それを倒してバンザイと喜ぶようなことや、何らかの作戦行動をこなしていくことによる快感を表現していくのが主眼の作品ではないんですね。
カッコよさにもいくつかベクトルがあると思いますが、戦うことによるカッコよさだけではない、もっと幅の広いところで攻めたいなと。ただし、ひとつの見せ場としてバトルがあり、そこはもちろんカッコよく描いていますので、期待していただいて大丈夫です(笑)。
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©オケアノス/「翠星のガルガンティア」製作委員会
『翠星のガルガンティア』村田和也監督インタビューその2 ~レドの戸惑いとパートナーとしてのロボット・チェインバー~ http://t.co/iUVJsvnYoB 全く新しい世界に飛び込んだ少年のお仕事獲得ストーリー、そして相棒&友人のチェインバー。うおお! #gargantia
『翠星のガルガンティア』村田和也監督 特別インタビュー(その2)http://t.co/iUVJsvnYoB これは何回読んでもドキドキするる。戦闘以外のお仕事を経験し成長していくレド。彼の先生役であり部下であり友人でもあるチェインバー。どどどうなるん?! #gargantia