異形の鉄道「スカイレール」なぜ2024年春に廃止? わずか1.3kmで160m勾配、一見ロープウェー

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確かに、しっかりとした橋脚や軌道、安全性や機動性が保てるシステムだ。全国展開すれば、費用対効果も期待できると考えたのだろう。しかし、思ったよりも反響は少なく、実用化されたのは、このスカイレールのみ。車両や設備の更新時期が近づいたが、部品などが特注で、軌道や橋脚などの修繕費用も、高価なものになってしまうらしい。

今後の維持や管理費用を考えると、廃止せざるをえないとのことで、実に残念だ。主要部品の多くが、オリジナルというのだから仕方がない。今となっては、部品の一部でも他の新交通システム(愛知県のリニモや懸垂式のモノレール)など共用できるものがあれば、ひょっとしたら存続の余地もあったのかもしれないと惜しまれる。

スカイレールを運営するスカイレールサービス株式会社に直接話を聞いたが、廃止の理由はやはり、「赤字であることや部品調達が困難」ということだった。

なお当初の運行終了時期は2023年12月末だったが2024年4月末に延期された。この理由は代替交通手段となるEVバスによる路線バスの運行開始が2023年11月初旬から2024年3月30日に延期されたためだ。「代替交通として予定していた電気自動車(EV)バスの路線運行について、許認可が必要なので、手続きなどの準備が間に合わないため」ということだ。

沿線外の利用者が増えた

EVバスは8台が導入され、現在製造中。16カ所のバス停設置を検討しているという。一方で前述のとおりスカイレールは、日中15分間隔、ラッシュ時7~8分間隔で、1日あたり平均約90便、土休日は約70便を運行中と比較的多い本数だが、バスの運行本数やダイヤについては、「運行本数やダイヤなどは、バス事業なので、認可前ということで正式な公表は現状できない」としつつも、「現状のスカイレールと、同等の輸送力を確保する便数などを予定している」とのことだった。

今後の運行体系については、地域のバス会社である芸陽バスに運行を委託する予定だ。バス転換後の運賃については、200円を想定しており、現状のスカイレール170円より30円の値上げを計画しているという。

今回の運行終了に関して、沿線住民の反応についてスカイレールサービスの担当者に聞くと、「住民から大きな反対の声は、ゼロではないが、ほとんど聞こえてこない」という。スカイレール終了のリリースがあった後は、沿線住民以外の利用者が訪れているそうだ。スカイレールの廃止を惜しむ鉄道ファンが多いのかもしれない。

渡部 史絵 鉄道ジャーナリスト

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わたなべ・しえ / Shie Watanabe

2006年から活動。月刊誌「鉄道ファン」や「東洋経済オンライン」の連載をはじめ、書籍や新聞・テレビやラジオ等で鉄道の有用性や魅力を発信中。著書は多数あり『鉄道写真 ここで撮ってもいいですか』(オーム社)『鉄道なんでも日本初!』(天夢人)『超! 探求読本 誰も書かなかった東武鉄道』(河出書房新社)『地下鉄の駅はものすごい』(平凡社)『電車の進歩細見』(交通新聞社)『譲渡された鉄道車両』(東京堂出版)ほか。国土交通省・行政や大学、鉄道事業者にて講演活動等も多く行う。

 

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