エフエム東京は2019年10月8日、2019年3月期決算と今後の事業方針に関する記者会見を開いた。黒坂修社長は「今後i-dio事業(V-Lowマルチメディア放送事業)に対して追加の投融資をしない方針を取締役会で決定した」と延べ、同事業から撤退する方針を明らかにした。

黒坂修社長
黒坂修社長
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 同社は2019年8月21日に会見を開き、「第三者委員会から会計基準や会社法などの法令に違反する行為が、エフエム東京の当時の会長および社長の指示または了承の下、i-dio事業に関与する多数の役職員によって組織的に行われていたなどとする報告があった」と発表した。このときはi-dio事業の今後について、事業継続を目指してパートナー候補の企業と協議を進めているとしていた。

 10月8日の会見で黒坂社長は「パートナー候補企業との交渉が今に至るまで成立していない一方で、当社の財務的な限界を迎えた。投資能力を勘案した結果、これ以上追加の投融資をすることは困難であるとの結論に至った」とした。また「i-dio事業の主体であるジャパンマルチメディア放送(JMB)において、有力な事業パートナー候補との交渉を中心に引き続き事業継続を検討している」とも報告した。

 黒坂社長は記者から仮にJMBが事業継続を断念した場合の対応を問われて、「すぐに電波(放送)を止めるようなことはリスナーや利用者の著しい不利益になるので、我々にはそうならないように支援する責任はあると考える」といった趣旨で回答した。

 併せて遅れていた2019年3月期決算を発表した。グループ全体の連結売上高は前期1.6%減の181億9300万円で、営業利益は同21.2%減の8億1200万円で減収減益だった。JMBなどi-dio関連各社の業績悪化により、持ち分法による投資損失を24億円あまり計上し、経常損失は15億5100万円となった。前期は経常利益7億7800万円だった。また、特別損失について、i-dio事業に関する損失などで67億円あまりを計上した。結果、親会社株主に帰属する当期純損失は83億8200万円となった。前期の当期純利益は3億7100万円だった。

 エフエム東京単体では、売上高が同4.7%減の126億2200万円、営業利益が同33.6%減の5億9600万円で減収減益だった。経常利益は比26.3%減の8億7700万円、当期純損失は91億5500万円だった。

 損失の計上について、黒坂社長は「今回の損失は決して小さくはないが、資金繰りは全く問題ない」とした。一方で「もし前体制が続き、これまでの方針を維持してi-dio事業を突き進めていれば、本当に危なかった」と、最悪の事態に至った可能性もあるとの認識を示した。

 今後について黒坂社長は「財務的には金融機関の協力も得ながら回っていくと自信を持って言える状況にある。これからは面白く、楽しく、心地よく、美しいコンテンツをプロデュースして、生活者に楽しんでもらうという原点に立ち返って出直したい。放送波と同時にそれと連携する形でインターネットのビジネスにおいて面白いものを作っていくという原点に立ち返って会社を運営していきたい」とした。