半導体市場調査会社が相次いで2021年の半導体企業売上高ランキングを発表している。しかし、ディスプレイ業界では、スマートフォン(スマホ)向けの小型ディスプレイとテレビ用大型ディスプレイ、液晶パネルと有機EL(OLED)・その他といった細分化したランキングは公表されているものの半導体業界のような総合ランキングはほとんど見かけない。そこで、米DSCC(Display Supply Chain Consultants)の協力を得て、DSCCの独自収集データと各社IRデータベースを使わせていただいて、半導体業界のランキングを模して2021年における世界のFPD(フラットパネルディスプレイ)企業売上高ランキングトップ10を作成してみた。

  • 2021年世界FPD(LCD+OLED)企業総合売上高ランキングトップ10

    2021年世界FPD(LCD+OLED)企業総合売上高ランキングトップ10 (注:中HKCはIRデータ非公開のため表には含めないが、2020年は10位、2021年は9位とDSCCは推測している。TianmaとCHOTは2021年第4四半期の売上高が未発表のため第1~3四半期の売上高を示す。7位との差が大きいため、TianmaとCHOTの第4四半期の売上高を加えても全体の順位に変動はない) (出所:DSCC提供の集計データをもとに著者作表)

2021年のトップとなったのは、2020年のトップであった韓Samsung Displayおよび2位の韓LG Displayを抜きさった中BOE(京東方科技集団)である。日本勢は、6位にシャープ(グループ会社を含む)、9位にジャパンディスプレイ(JDI)が入っている。10社中、JDIだけが前年比で大きく売り上げを落としている。

DSCCの共同設立者で同アジア代表の田村喜男氏は、2021年の各社の業績について「中国勢の売り上げの伸びは、補助金付きでひたすら投資に徹してシェアを増加させた上に、TVおよびIT用LCD価格の上昇の恩恵を受けた結果である。これとは対照的に、韓国では、(OLED生産に注力するため)LCDの生産能力低下とともにLCDの売り上げが減少した。Samsung Displayは、2022年6月を最後にLCD生産から撤退する。2021年にSamsungはOLEDの売り上げは増加するもLCDの売り上げが大幅減となった」と述べ、背景を説明する。

また、田村氏はJDIの売り上げが大きく減少したことについて「Apple iPhoneの2021年新モデルが4つがすべてOLEDとなり、JDIが得意なLCD需要が激減したためである。JDIから白山工場を買収したシャープはその恩恵を受けた結果、2021年のLCD向けシェアはシャープがJDIを抜いた」ともしている。

さらに、2022年の売上高見通しについては、「日台のLCD偏重型メーカーは、TV/IT用パネル価格の下落の影響を受ける見込みだが、BOE/China Starのような大手中国メーカーは生産能力が増加し、売り上げの増加を確保可能である。LCD生産能力が増加しない台湾のAUOやInnolux と韓国のLG Display、日本のシャープ、JDIなどは、価格下落でLCDの売上高が減少する。とりわけJDIはApple iPhone向けLCD供給がさらに減少し、車載ディスプレイなどの押し上げ要因があっても、FPD全体の売上増加は難しい。ビジネスがOLED偏重のSamsungは、LCDから撤退しても、2022年はOLEDの伸びのおかげで売上高の増加が見込めるだろう」との予測している。

2021年カテゴリ別市場規模トップはTV用LCD、2位はモバイル用OLED

DSCCが集計したデータによると、2021年のディスプレイ(LCD+OLED)市場規模は、前年比31.6%増の1646.9億ドルとなったという。

製品カテゴリ別では、以下のような順位となるとする。

  • 1位:TV用LCD(420億ドル)
  • 2位:モバイル用OLED(330億ドル)
  • 3位:ノートブックPC用LCD(182億ドル)
  • 4位:モニタ用LCD(173億ドル)
  • 5位:モバイル用LCD(169億ドル)

OLEDの用途として2番目に大きな分野は42億ドル規模の大型テレビであるが、スマホなどのモバイルデイスプレイ向けに比べると規模が1桁少ない。なお、2022年以降は、スマホ用OLEDの普及にともない、1位がモバイル用OLEDに入れ替わり、今後毎年のように差を広げることが予想されており、モバイル用LCDは2021年をピークに今後毎年市場規模が減少していく見込みである。