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Official髭男dism、「大丈夫」という小手先の救いに頼らず…人生と向き合った楽曲の秘話

Official髭男dism、「大丈夫」という小手先の救いに頼らず…人生と向き合った楽曲の秘話

Official髭男dismの藤原 聡(Vo/Pf)と松浦匡希(Drs)が、最新アルバム『Editorial』の制作秘話を語った。

藤原と松浦が登場したのは、J-WAVEで放送中の番組『~JK RADIO~TOKYO UNITED』(ナビゲーター:ジョン・カビラ)のワンコーナー「THE HIDDEN STORY」。オンエアは8月27日(金)。

一筋縄でいかないところに、面白みや愛着がある

8月18日にリリースしたOfficial髭男dismのニューアルバム『Editorial』について、まずはタイトルに込めた思いを語った。

Editorial

藤原:「Editorial」は、新聞の論説欄と言いますか、事実を報じながらも、編集をされている方や、新聞会社として何を問題に思い何を語るのかが各社の裁量に任せられている部分があって、そこにシンパシーを感じた楽曲が多かったということが、アルバムタイトルにつながったのかなと思います。2019年あたりからOfficial髭男dismのことを知ってくださった方がたくさんいて、「自分たちのやりたい音楽と求められている音楽ってどういう関係にあるんだろう」とか、そういうことを頭で余計に考えてしまった部分が多少あったかなと思って。そことの向き合い方は楽曲にリアルに現れているのかなと思います。曲を作るって一筋縄では全然いかなかったし。そうだったでしょ?
松浦:そうですね。
藤原:一筋縄でいかないところに面白みや愛着、自分が何を思っているのかを曲に教えてもらったりする。生きていてもなかなか出会えない稀有な現象がそこにはいっぱい詰まっていて。難航するってすごく素敵なことだよっていう。

29歳の誕生日が転機となって生まれた楽曲

アルバム2曲目は、「プログラムされた細胞の死」を意味する『アポトーシス』が収録されている。

Official髭男dism - アポトーシス[Official Video]

藤原:『アポトーシス』のメロディは前から断片的にあったんだけど、今の形に並んだのは僕が29歳になった誕生日でした。「20代もあと1年しかないんだ、終わってしまうんだ」という感じがありまして。いろんなものが、こういうふうにどんどん終わっていくんだろうなと思ったんです。自分の大切な存在を失うお別れの瞬間が来てしまうのは人生でしょうがないことだと思うんだけど、「しょうがないものを乗り越えられる救いの言葉はないだろうか」と考えて、この楽曲はスタートしました。

『アポトーシス』は約1年かけて歌詞を書いたものの、最終的には救いの言葉が見つからなかったという内容に着地したと藤原。

藤原:小手先で「大丈夫」とか「時間がある」とか、そんなことを言っていられる問題ではないと思ったんです。この29歳のあいだの1年間このようなことをすごく思いながら、ある種、怯えながら生きていたし、それを形にできたんじゃないかなと思います。

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藤原と松浦が共作

『Editorial』ではメンバー全員が作詞・作曲を担当。『フィラメント』では藤原と松浦が共作した。

松浦:僕のなかにある感情をもっと出せるよっていうことで、ふたりでディスカッションする場がけっこうありましたね。
藤原:時間をかけて人生観の話をしたね。ちゃんまつ(松浦)の楽曲も前を向ける楽曲ではあるのかもしれないけど、そのなかにもやっぱり葛藤だったり、昔できていたことができなくなっているようなものがあったりして。
松浦:各々が本当に赤裸々。ちょっとどろっとしたところが……。
藤原:フィルターなく出ているかもしれませんね。

「変わっていくもの、変わらないもの」にフォーカス

アルバム中盤に収められた『Shower』は、『アポトーシス』と同じく、時間の移り変わりが歌のなかで描かれている。作詞テーマに何か変化があったのだろうか。

藤原:基本的に変化があったとしたら、自分であんまりわかんないんだと思うんですけど、『アポトーシス』を作ったときは、「こういうことも歌っていいのかしら?」ということだったと思います。『Shower』で描かれているのも、歳を重ねていく、夫婦関係が変わっていってしまうんじゃないかという恐れ、変わらざるを得ないものや変わっていくべきもの、変わらないでいいものってなんだろうとか、「変わっていくもの、変わらないもの」にフォーカスを当てています。歳を重ねていっていることもあるし、そういった心配事とか、非常にリアルな感情を描いてもいいですか?っていうような感覚だったかな。

藤原は「自分の作りたいものが変化っていうよりは、その作りたいものは前からあった」と語りつつ、「2019年頃からありがたいことにタイアップで作らせていただいて、それが結果的にみんなの歌になったし、タイアップってなったときに、どうしても描きにくいものでもある」という。

藤原:タイアップは、すごく自分がリスペクトしているから一緒にやらせていただくわけだし、そこからインスパイアされて自分の感情から湧き上がるものを作るからすごく楽しいし前向きだし、自分たちが胸を張ってやるべきことだと思います。でもそれだけじゃないっていうのが、より音楽の魅力を自分自身に再確認させてくれる楽曲なんじゃないかなと思っていて。『Shower』も『アポトーシス』も「みんな前を見てください! 元気出して! 背中押すよ!」っていうテンションの曲ではないけど、僕は自分で聴き返して「この人すごく泥臭く人生を生きてらっしゃるな」と思っちゃったりして(笑)。でも、それが自分だから作れた楽曲でもあるなら、救われるなと思う。

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葛藤を繰り返しながら楽曲は生まれ続ける

『Editorial』の最後に収録された『Lost In My Room』では、曲作りに苦悩する主人公が描かれている。

藤原:『Editorial』で始まって『Lost In My Room』で終わるアルバム。自分の中で、『Editorial』と『Lost In My Room』は行ったり来たりしているんですよね、概念として。つまずくからこそ楽しくてやりがいがあって愛おしいものだから、今日も前向きにクリエイティブを楽しもうじゃないかってことを、あなたにも伝えたいし。でもその先で、自分がいま生み出してるこれは、あなたに伝えたところでそれを楽しんでもらえるだろうか、楽しんでもらえないかもしれない、自分はこれにすごく惹かれていて、これをやるべきか否かずっと迷ってる、あーもうわからんって、ずっと迷って気づいての繰り返し。迷って答えを出せないまま「曲の締め切りですよ、出してください」って言われて出す、出したあとに気付いて書き換える、楽しい、でも書き換えたらまたわからんくなる。ずっとそれをやってる感じなので、最後に『Lost In My Room』がくるのは必然だったなと思います。

Official髭男dismの最新情報は、公式サイトまたは、Twitterまで。

『~JK RADIO~TOKYO UNITED』のワンコーナー「THE HIDDEN STORY」では、トップセラーからモノづくりにかける夢を聞く。放送は毎週金曜の10時40分から。

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2021年9月3日28時59分まで

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