木星、彗星を捕獲して衛星にしていた

2009.09.14
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2006年にハッブル宇宙望遠鏡で撮影された木星。2009年9月に天文学者が発表したところによると、木星は1949年に引力で彗星を捕獲し、一時的に衛星にしていたことがあるという。その“臨時衛星”は12年間にわたって木星を公転した後、離脱した。

Image courtesy NASA via AP
 60年前、木星は通りすがりの彗星を引力で引き寄せ、12年間にわたって“臨時衛星”として抱え込んだ後、こともなげに放出していたことが9月14日の科学者チームの発表で明らかになった。同様の現象が数百年以内に再び発生する可能性があるという。 東京流星ネットワークの大塚勝仁氏率いる国際的な研究チームによると、木星は1949年に串田・村松彗星(147P/Kushida-Muramatsu)を引力によって捕獲し、1961年までその周囲を公転させていたという。直径400メートルのこの彗星は1993年に初めて発見された。それ以降積み重ねられてきた計算を基に過去の軌道を調べた結果、一時的に木星の衛星であったことが今回明らかになったのである。

 イギリスのアーマー天文台に在籍している研究チームのメンバー、デイビッド・アッシャー氏は、「串田・村松彗星は木星の影響圏から離脱するまで、1、2度周回した。それはほぼ間違いない」と話している。

 惑星の引力の犠牲になった臨時衛星が観測されたのは、1994年にシューメーカー・レビー第9彗星が粉々になって木星に衝突したときだけだ。

 今年の7月には木星の表面に謎の衝突跡が発見されたが、それも同様の臨時衛星が大規模な衝突を起こした結果なのではないかとアッシャー氏は考えている。

 串田・村松彗星はそれらの天体と違い、最終的には木星の引力から離脱した。現在は、火星と木星の間にある小惑星帯で太陽の周りを公転しているという。

 しかし、また別の彗星が木星の衛星になる運命にある。2068年から2986年までの間にヘリン・ローマン・クロケット彗星(111P/Helin-Roman-Crockett)が木星に捕獲され、その周りを6周するとみられている。 木星と同様に地球にも引力があるが、彗星が捕獲され衛星化する可能性はあるのだろうか。アッシャー氏によれば、可能性は低いという。

「小さな天体が地球に捕獲され、その後離脱した例はいくつか確認されている。可能性がないわけではない。しかし衝突した場合に深刻な被害が出そうな大型の天体は、木星に捕獲される可能性が高い。その意味では、地球は木星に守られていると言える」と同氏は解説する。 この研究成果は9月14日、ドイツのポツダムで開催された欧州惑星科学会議で発表された。

Image courtesy NASA via AP

文=James Owen

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