花、鳥の羽、麻糸、貝殻、ビーズ、時には箔やワックスまで用いて、ウクライナの芸術家ドミニカ・ダイカ氏が作るのは、「ヴィノク」と呼ばれるウクライナの伝統的な花の冠だ。
純潔と多産の象徴として、ウクライナでは昔から少女や若い女性が祭りや結婚式で頭に花の冠を載せた。その起源は、10世紀に東欧のスラブ世界にキリスト教が伝わる以前の異教の伝統にあるとされている。ウクライナでは今、この花の冠を含め、伝統的な文化を見直す動きが高まっている。誇りある民族の歴史を反映し、明るい未来への希望を込めて現代風にアレンジされた民族衣装は、今では日常生活の中にも溶け込んでいる。 (参考記事:「ウクライナ正教会、ロシア正教会から独立へ」)
ヴィノクは、7月上旬に祝われる「イワン・クパーラ」という祭りで見られる。これも元々は異教徒の祭りだったが、それが後にキリスト教の洗礼者聖ヨハネの祭りに結び付けられた(ヨハネはスラブ語でイワン、英語でジョンのこと)。ウクライナだけでなく、ロシア、ポーランド、ベラルーシでも祝われている。人々は焚火の上を飛び越え、女性は花やその他の植物で冠を編み、それを川に流して恋愛運を占う。最近では、芸術祭や音楽祭でも花の冠が見られるようになり、さらにそれはミュージックビデオやソーシャルメディアの投稿にまで広がっている。
古い伝統から現代アートへ
ダイカ氏は、ウクライナの町リヴィウにあるトレッティピビニ・ワークショップで、スタイリストやメイクアップアーティスト、フラワーアーティストらとともに、ひときわ豪華で美しいヴィノクを制作する(トレッティピビニとは、ウクライナ語で「第3の雄鶏」という意味だ。ダイカ氏によれば、朝3番目に鳴いた雄鶏、つまり新しい一日の始まりを象徴するのだという)。デザインは、美術館に所蔵されていた古い写真をデジタル化したものや、アーティストたちが集めた古い家族写真が基になっている。
「昔から使われてきた材料を使っています」。ダイカ氏は、掘り起こされた歴史に新たないのちを吹き込み、「現代の写真を通してウクライナの民族衣装を広く知ってもらい、古い写真が与えるビンテージとか色褪せたイメージを払拭したいです」と話す。
彼女の作品を頭に戴いたモデルの誰ひとりとして「冷たく、世離れした」雰囲気でカメラに向かう者はいない。「身長や体型、年齢に関わらず、女性はすべて美しい。私たちの写真は、それを見せています」。ダイカ氏は、過去の伝統を色彩あふれる現代アートとしてよみがえらせ、人々にウクライナ人としての誇りを取り戻してほしいと願う。「この美しさを、たくさんの人に見てもらいたいと思っています」
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