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NEJM誌から
ノロウイルスワクチン開発で成果、感染・胃腸炎発症が半減
ノーウォークウイルス遺伝子型GI.1を標的とする経鼻型ワクチンの臨床試験結果

 ノロウイルスのうちのノーウォークウイルス遺伝子型GI.1を標的とする経鼻型ワクチンの接種により、この遺伝子型のウイルスの感染と発症が偽薬群の半分近くに抑えられることが、健常成人を対象とした二重盲検の多施設無作為化試験によって示された。米Baylor医科大学のRobert L. Atmar氏らが、NEJM誌2011年12月8日号に報告した。

 ノロウイルスは急性胃腸炎を引き起こす一般的な病原体だが、培養細胞を用いて増殖させることができない上に、感染や発症の研究に利用できる動物モデルもないため、現在までに蓄積された知識はすべて、ヒトに実験的に感染させた研究またはアウトブレイクに関する分析から得られたものだ。こうした研究対象としての難しさも理由となって、ノロウイルスの感染と発症を予防するワクチンも、特異的な治療法もこれまでなかった。

 今回臨床試験に用いられたのは、LigoCyte Pharmaceuticals社が開発した、ノーウォークウイルスGI.1(以下、ノーウォークウイルスと略)のウイルス様粒子(VLP)を用いた1価の経鼻投与型ワクチンだ。アジュバントとしてモノホスホリルリピッド A(MPL A、グラクソ・スミスクライン社)とキトサンが使用された。

 研究者たちは、このワクチンの安全性と免疫原性、有効性を評価するために、09年9月から10年1月まで、健常な男女ボランティアの登録を行った。18~50歳の98人(平均年齢32.1歳)を登録し、50人をワクチンに、48人を偽薬に割り付け、3週間間隔で2回投与した。ワクチン群には1鼻孔当たり50μgのノーウォークウイルスVLPを投与した。接種前と2回目の接種から3週間後に血清標本を採取した。

 2回の接種を完了し血清標本が得られた84人を対象に、曝露実験を行った。曝露後に50%のヒトが感染するウイルス量の約10倍のノーウォークウイルスを経口投与し、1日2回、最短でも96時間後まで観察して、症状の有無や程度を評価した。便標本を採取し、リアルタイムPCRとELISAによりウイルスを検出して感染の有無を調べた。

 ノーウォークウイルスの曝露実験を受けた84人をintention-to-treat分析の対象とした。それらの人々のうち、経鼻投与デバイスの不調により十分な量のワクチンが投与できなかったと判定された5人と、曝露期間中に別のノロウイルス(最も一般的な遺伝子型GII.4)に感染した1人、曝露後に過食して嘔吐した1人を除いた77人を、per-protocol分析の対象にした。

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