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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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竜巻の強さを示すフジタスケールで有名な気象学者…

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 竜巻の強さを示すフジタスケールで有名な気象学者、藤田哲也(ふじた・てつや)は竜巻や爆発的突風ダウンバーストの研究により「ミスター・トルネード」と呼ばれた。彼には「気象界のウォルト・ディズニー」の異名もある▲気象現象を図解するのに巧みだったからで、命名者は地球温暖化研究で今年のノーベル賞を受けた真鍋淑郎(まなべ・しゅくろう)さんという。2人は1950年代に研究の場を求めて渡米した研究者で、その後米国で気象学への歴史的な貢献をなしとげた▲藤田は23年前に亡くなったが、その「ミスター・トルネード」にして冬の12月の竜巻でこのような大規模な被害が出たと聞けば驚いたのではないか。米南部から中西部の6州で、10日夜から11日にかけて相次いだ竜巻の大発生である▲とくに被害がひどいケンタッキー州メイフィールドで街の一角が壊滅した惨状には、震災のがれきの記憶が頭をよぎった方もおられよう。同地の工場やイリノイ州の倉庫では何人もの従業員に犠牲者が出て、全米で数十人が死亡した▲メキシコ湾から吹き込む暖かく湿った空気と、北西の寒気が出合って起こる北米の竜巻である。オフシーズンの12月の大発生は、メキシコ湾の海水温が平年より2度も高く、その影響で内陸部も季節外れの暖かさになったためらしい▲竜巻発生と気候変動との関係ははっきりしていないというが、やはり温暖化の影響が気になる「冬の竜巻」である。竜巻と地球温暖化、それぞれの領域で気象学を革新した2大学者の語らいを聞きたかった。

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