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今、国内外で最も注目を浴びるアーティストのひとりだ。ベルリン在住の現代美術家、塩田千春。2019年、東京・六本木の森美術館で開催された個展は大きな反響を呼び、66万人強と同館歴代2位の来場者を迎えた。出身地・大阪府岸和田市のマドカホール(岸和田市立文化会館)で個展が開催されている。
会場の中心を占めるのは、個展のタイトルともなった「永遠の糸」。赤い毛糸を張り巡らしたインスタレーションは、塩田が世界各地で展開する代表作だ。42キロに及ぶ糸にからむのは、市内の小学生が「大切なもの」を記した300点もの紙片。血をほうふつさせる赤い糸は複雑に交差し、結び合い、人と人とのつながりを映す。
存在。記憶。生と死。塩田が向き合うのは人間の根源的なテーマだ。肉体を使った初期のパフォーマンスはもちろん、たとえ人の不在が際立つインスタレーションでも、身を切るように自らをさらす作家が背後に見えるようだ。その作品は誰もが抱える心の闇に呼応して、魂を揺さぶり、時に痛みさえ与える。
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