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石牟礼道子の世界/7 結婚

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墨絵のように曇天へ枝が伸びる=田鍋公也撮影
墨絵のように曇天へ枝が伸びる=田鍋公也撮影

癒やせぬ虚無抱えて

 1947年、20歳だった吉田道子さんは、22歳の石牟礼弘さんと熊本県水俣市で結婚して石牟礼道子となった。<うつむけば涙たちまちあふれきぬ夜中の橋の潮満つる音>。当時の短歌の前書きに「婚礼の行列の土橋の上で」とある。<涙>とはどういうことであろう。うれし涙とは違うようだ。

 縁談は弘さんの親類からあった。石屋で栄えたが没落した実家の事情、弘さんが繊細な弟一(はじめ)の庇護者となってくれそうな予感――などで結婚を決めたという。

 <吉田姓であるよりも石牟礼姓を名乗った方が、ペンネームのようで面白い。石という字はわたしには因縁がある。石の群れというイメージには哲学的にもたいへん深みがある>。自伝『葭(よし)の渚(なぎさ)』の一節だ。姓のため結婚したと言わんばかりなのが道子さんらしい。

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