日本商業学会の歴史

日本商業学会の設立期

昭和25年11月18日
日本商業学会が正式に設立される準備段階として,銀座交詢社において商業研究会を開催する。
昭和26年2月3日
交詢社において商業研究会を開催する。
昭和26年4月21日
明治大学において「日本商業学会」創立総会を開催し,会則を定め,役員を選出する。
昭和26年5月12日
中央大学において第一回関東部会研究報告会を開催する。
昭和26年9月15日
大阪商工会議所において関西部会創立総会を開き、翌月15日に関西部会研究報告会を開催する。
昭和26年11月23-24日
明治大学において第一回全国大会を開催する。
昭和27年5月16-17日
神戸大学において第二回全国大会を開催する。統一論題は「販路拡張の理論と実際」。
昭和28年7月6-8日
小樽商科大学において第三回全国大会を開催する。統一論題は「証券市場と企業金融」。

日本商業学会第一回全国大会の記録(日本商業学会編『現代商業論』春秋社、1952年より)

第一回全国大会

商業学はあらためて清新の気を浴びようとしている。あたかも昭和二十六年四月に創設された日本商業学会は、その第一回全国大会を、過ぐる年十一月二十三日・二十四日の両日、約八十人の会員出席のもとに明治大学研究所において開催したのである。

第一日。午前の役員会に続いて、午後、向井理事長の挨拶があったのち、直ちに研究報告会にうつった。二日にわたる研究報告、及び公開討論会は次のごとくである。

統一論題「商業學の基本問題」(敬称略)

一、商業学研究方法としてのケース・メソッド 福田敬太郎(神戸大)
一、商業及び商業利潤の本質 松井辰之助(大阪外大)
一、商業概念と商業学 平野 常治(法大)
一、商業教育について S.J.Debrum (Prof. of Sun Francisco State College)[深見 義一(一橋大)紹介]
一、商業学の基本問題 上林 正矩(中大)

第二日

自由論題(敬称略)

一、商品とP・R・ 宇野 政雄(早大)
一、配給論に於ける制度的思考 荒川 祐吉(神戸大)
一、米穀配給能率に関する一考察 久保村隆祐(横浜国大)
一、中小商業対策の問題点 岡本 理一(小樽商大)
一、商業資本の生産支配 田中 豊喜(明大)
一、販売員の訓練について 白木 他石(都立大)
一、販売経営と標準化 山東茂一郎(和歌山大)

以上の研究報告を通じて感知しうるものは、商業学の領域に属する新しい問題が、国民経済の枠内において不動に発生しつつあるということ、そこで商業学はあらためて再検討されなければならないということ、である。言葉を換えていえば、商業学とは如何なる学問であるかが、新しく、かつ純心にとりあげられているということである。それは、国民経済において果す商業の役割の重要性の再認識であり、商業学の重要性の再認識に他ならない。

公開討論会「日本経済に於ける商業のあり方」

公開討論会は、司会者、春日井薫博士(明大)〔代理林久吉(明大)教授〕。講師、向井鹿松博士(東洋大)、村本福松教授(神戸商大)、平井泰太郎博士(神戸大)、上坂酉三博士(早大)のもと、会員及び多数の学生が参加して行われた。

まず、向井博士は、デモクラティックな商業、すなわち、売手と買手とが対等な地位にある商業を主張される。つづいて、村本教授は百貨店経営の立場から、また平井博士は、国家的指導によって発展してきた日本経済の特殊性から、それぞれ商業のあり方を指摘される。最後に上坂博士は、我国商業の国際性の見地から、「売手が買手のために」という理念こそ商業の基盤であると説かれる。

この講師の説明に対して、会員及び聴講学生より質疑がなされ、活発な討論が行われたのち、夕刻、深見義一教授(一橋大)の閉会の挨拶があって、二日にわたった大会を終了したのである。