コラム:米企業トップ、ビジネスジェット私的利用の甘い実態

コラム:米企業トップ、ビジネスジェット私的利用の甘い実態
4月11日、米企業の経営者が「資本主義が脅かされている」と訴えるのは、慣行上の習わしになっているようにみえる。だがその多くは、文字通り「雲の中に頭を突っ込んで」空想にふけっているようなものだ。写真は201年2月、香港の空港に駐機中のビジネスジェット(2019年 ロイター/Bobby Yip)
John Foley and Varada Bhat
[ニューヨーク 11日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米企業の経営者が「資本主義が脅かされている」と訴えるのは、慣行上の習わしになっているようにみえる。だがその多くは、文字通り「雲の中に頭を突っ込んで」空想にふけっているようなものだ。
米上場企業の上位100社の6割が、自社トップのプライベートな移動に会社所有の航空機の利用を認めていることが、BREAKINGVIEWSの分析で明らかになった。これらの企業にとって、もっとましな模範を示すことは難しいことではないだろう。
最新の各社株主招集通知によると、自社トップの私的な移動に無料で会社所有のビジネスジェット機を使わせている大企業59社は、平均で年間30万6000ドル(約3400万円)をそのために支出している。
支出額が最大なのはフェイスブックで、マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)のためだけで150万ドルを負担していた。
同社のほか、石油メジャーのエクソンモービルやアップルなどは、警備上の観点から、一部職員については業務外でもプライベート機での移動が必要だとしている。化学大手ダウ・デュポンや食品メーカーのモンデリーズ・インターナショナルなどは、トップにはいつでも連絡が取れるようにしておく必要があるためだとしている。
だが、このような「福利厚生」なしでやっている企業も多い。
投資会社バークシャー・ハザウェイのウォーレン・バフェット会長やチャーリー・マンガー副会長は、私的な移動には会社のジェット機は使わない。ソフトウエアのオラクルは私的な移動での利用は禁止しているが、業務で移動する際に自分のゲストを同乗させることは認めている。製薬大手ブリストル・マイヤーズ・スクイブは、さらに一歩厳格な対応を取る称賛すべき企業の1つで、一般の正社員に提供されていない福利厚生は幹部にも与えていない。
同業企業の間でも、こうした福利厚生の手厚さには幅がある。
金融大手JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOは16万ドル以上のジェット機利用特典を受けているが、シティグループのマイク・コルバットCEOやモルガン・スタンレーのジェームズ・ゴーマンCEOは、利用した分を支払わなければならない。とはいえ、これは実際には、会社側が支払い済みではない、燃料や着陸料などを負担すればよいことになっている。
ゴールドマン・サックスはもっと厳格だ。デービッド・ソロモンCEOや他の幹部は、私用のジェット機利用は全額負担しなければならない。ゲストを同乗させる場合は、商業航空会社のファーストクラスの運賃の実勢価格と同等の支払いを求められる。
その一方で、最も手厚い福利厚生を提供しているのがトップクラスの大企業とは限らない。
昨年に破産法適用を申請し、近く再び市場に復帰する見通しのデジタル・ラジオ局運営会社アイハートメディアは、音楽専門チャンネルMTVの創始者でもあるボブ・ピットマンCEOとその家族に、70万ドル以上相当の会社所有ジェット機の私的利用を昨年認めている。
こうした負担額は、数千万ドル単位のCEOの報酬額と比べればわずかなものだ。だからこそ、たとえ会社側が警備上の問題だと考えていたとしても、CEOらは業務外の移動費は自分で負担すべきだ。
経営者が自己負担していない場合、取締役会に対するその経営者の影響力が大きすぎる、ということだろう。また、ビジネス界のエリートを地面に引きずりおろしたいと考える人の標的にもなりやすい。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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