君は『刑事 大打撃』を知っているか?過激すぎて裏街道を爆走する30年の歴史を持つ伝説のアドベンチャーシリーズ:デジゲー博2018

商業から同人へ

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国内のビデオゲームで過去30年以上に渡り、硬派なADVの主人公として活躍しているのは『探偵 神宮寺三郎』シリーズを置いてほかにいないだろう。活動場所も1987年のファミコンからプレイステーションといった華やかな表街道を歩く。現在も最新作として『探偵 神宮寺三郎 プリズム・オブ・アイズ 』がリリースされている。

一方、同じくらいの長い期間を生きた刑事がいる。その名も『刑事 大打撃』。あだ名ではなく、マジで「大打」が姓、「撃」という名前である。奇しくも神宮寺と同じく1987年にMSXの時代から活躍。現在も活動を続けているのだ。

だが彼の活動は裏街道を突き進むものだった。ハードボイルドな神宮寺とは真逆の、下ネタやら時事ネタに絡んだ不謹慎なギャグで突き進む刑事で、やってはいけないネタをやり続ける男だったからだ。

そんな姿勢ゆえに商業を追われ、それでもやりたいことをやるために、同人を主なフィールドに選んだ経歴を持っている。今回のデジゲー博2018では、そんな異色の活動を続ける刑事の現在の姿が出展されていた。

不謹慎なネタを言いたくてたまらないあまり、同人へ行った『刑事 大打撃』

『刑事大打撃~社長令嬢誘拐事件~』このスクリーンショットでは、まだ猫を被っている

『刑事 大打撃』はMSXの初登場時からめちゃくちゃだった。調査中に話しかける全人物に抱き着いたり、服を脱がせたりすることができたほか、そもそものソフトを破壊したり、一日ゲームを遊ばなかったりするコマンドが実装されるなど自由すぎるものだった。

ソフト壊すって何なんだよ!作者が壊れてるわ!

作品を配信しているプロジェクトEGGによれば「業界初のコミック・アドベンチャー」とのことで、でたらめなギャグ、下ネタなんでもありの姿勢で初期から活動してきたという。しかしシリーズを重ねるなかで、『刑事 大打撃』はネタに走ることをやりすぎてしまう。

行き過ぎて商業から同人に移行

現在の『刑事 大打撃』の活動は薄い本による小説がメイン。ベタなパロディと不謹慎ネタで構成されるあたりにオタク第一世代を感じさせる。

「だんだんと商業のラインにネタが通らなくなってきたんですよね」ブースに座っていた奈須蛍路氏はそう語った。彼はシリーズのメインライターであり、今も『刑事 大打撃』の小説を書き続けている。

『刑事 大打撃』が時事ネタやらオタクネタの流行りを絡めたスタイルでやっていくうちに、取り扱うものが過激化していく。北朝鮮やオウム真理教をネタに大打撃が奮闘するという内容になっていったのだ。それゆえに商業から遠ざかり、同人で続編は制作されていく。活動のなかでビデオゲームでもなくなっていき、現在では小説にて不謹慎や下ネタを貫いている。

奈須氏は2003年の『刑事 大打撃 ~北の挑戦~』をリリースした時のことを「当時は北朝鮮という表記もアウトだったんですね。なので「北の挑戦」って書いて通しました」と振り返っていた。

それどころか大打撃の過激な活動は、時には同人ですらもストップがかかってしまう。「行き過ぎたネタは印刷所からもNGがでて、もうその時はコピー本ですよ」そのネタとはオウム真理教と闘う大打撃という代物だった。

いまだ恐ろしいスピードで活動を続ける『刑事 大打撃』

いまだに裏街道でふざけ続ける刑事・大打撃。

現在、奈須氏は本業をもったうえで『刑事 大打撃』の続編を同人で執筆し続けているという。しかしその生産数は多い。2018年も4、5冊ほど出版している。相変わらず大打撃は伝説のAV監督と出会ったり、コミケでひと悶着を起こしたりしているのである。

奈須氏からお話をうかがっていて、どことない反骨精神みたいなものを感じなくもなかった。それは年々、おしゃれでクールなゲームの出店も増えているデジゲー博のなかで、昭和らしい同人のスタンスでやりたいことをやる、作りたいものを作るというのがそのまま出ていたからかもしれない。

奈須氏の隣には彼の娘が座っており、ブースを手伝っていた。話の流れで「今の子はそんなに学校に反抗とかしないんですよね!」と熱弁した。つい筆者は「大打撃みたいな生き方は憧れますか?」と聞いたところ、奈須氏の娘は何も答えず苦笑していた。

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