フジテレビ、旧ジャニーズ事務所を「特別視するような空気が性加害を見逃したことにつながった」編成制作局長が語る

フジテレビ
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 故ジャニー喜多川氏の性加害問題をめぐり、フジテレビは社内調査を実施。旧ジャニーズ事務所への対応と報道について検証した結果を、21日放送の特別番組「週刊フジテレビ批評 特別版~旧ジャニーズ事務所創業者による性加害問題と“メディアの沈黙”~」で報告した。

 同番組ではフジテレビの現役・元社員77人を調査し、番組制作の現場において性加害を見逃した背景を探った。司会の新美有加アナウンサーが「旧ジャニーズ事務所へのいわゆる忖度が存在したのか検証します」と話し、社員への聞き取り調査結果を報告した。

 編成幹部は「キャスティングにおけるタレント事務所との交渉ではいろいろな押し引きがある。力をもった事務所であれば、なおさら、条件面など含めた厳しい交渉に対応することになり、その点はむしろプロデューサーの腕の見せ所といった感じがあった」とコメント。また編成番組担当者は「ジャニーズ事務所所属のタレントに関する発表について、かなり細かく使用範囲や使用可能映像の指定があった。また、それを(誤ってだとしても)万が一逸脱してしまったりすると、ペナルティとして一定期間その番組だけジャニーズ事務所関連のエンタメニュースなどで映像が使えなくなったりしていた」と明かした。

 元制作幹部は「ジャニーズ主役のドラマでは、他社のイケメングループのキャスティングを避けたり、また事務所を辞めた人はキャスティングしない方がいいのではないかという考えがあった」と振り返った。続けて、芸能ニュースを取材し放送する情報制作局の社員の話も取り上げ、その社員は「情報番組において、ジャニーズのタレントが事件を起こしたり結婚したりしても、それを取り扱っていいかどうかは、会社全体としての判断が必要だと割り切っていた」と事務所との関係性を話した。元情報制作局幹部は「直接圧力を受けたケースはまれだが」と前置きし「ジャニーズ所属タレントの結婚報道の際に、取材した映像を放送しないでほしいという、執拗(しつよう)な要請があったが断った。それ以降一定期間、ジャニーズの取材現場から、当該番組が出入り禁止にされたが、気にしなかった」という出来事もあったという。

 スタジオでは、現場の葛藤について情報制作局長の大野貢氏が説明。「今回の調査で私たちの現場でも、旧ジャニーズ事務所に対して必要以上に気を遣う意識が根付いていて、多くの社員が違和感を覚えながら仕事していたと気づかされました。私たちがモットーとする『人の気持ちに寄り添う』という番組作りができていなかったのではないかと、重く受け止めております」と頭を下げた。

 調査の結果、圧力と受け止めていなかった社員がいる一方で、圧力を受けたり忖度(そんたく)した社員もいたことが判明した。これについて編成制作局長の立松嗣章(ひであき)氏は「タレント事務所と放送局との衝突は、基本的に一般企業のビジネスと同様に色々な押し引きがあり、時にタフな交渉を強いられることは普通にあります」と実情を語った。続けて「制作現場は、ヒット番組を作りたいと日々取り組んでいて、人気タレントをキャスティングしたいと常に思っています。そのなかで魅力あるタレントが多く所属し、多くの番組に影響力を持つ旧ジャニーズ事務所に対して、徐々に特別視するような空気が出来上がっていたことは否めません。そうしたことが性加害を見逃したことに繋がったのだと思います。改めて、行き過ぎた部分を見直し、適切な関係を築いていく必要があると考えています」と述べた。

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